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發:そうして私は審神者になった

「ここが、あなたの”本丸”になります。最初に顕現させる刀を、この五振の中から一つ選んでください」


そういわれ、私はモニタに映っている五振…いや、五人の青年の絵姿を見ていた。


「刀なのに人の形なのですね」

「ええ、その方が普段は便利でしょうから、そうしました」


なるほど……


「では、審神者となる私の姿も変えることは可能ですか?」

「…どのような姿になりたいと?」

「眼鏡です」


私の提案は、黒服の男たち…時の政府を驚かせるに値するものらしかった。


刀を人の形にすることができるのであれば、この”本丸”において、私が人の形をせずに存在することも可能なのではないか、と思ったまでだ。


「可能…ではありますが…」


その回答をもらい、私はニンマリと笑った。


「では、眼鏡の形で私は審神者となります」


その場にいた面子がざわめく。

何だというのだろうか、その反応は。

別にいいではないか、人の形をしていなくとも。


「名前や、年齢、住所などの記録もすべてこちらに保存されますし、その後の…」

「構いませんよ」


即答した。

記録上の私の情報などべつにどうでもいい。


「はじまりの一振は…この刀にしましょう」


初期刀と呼ばれるものを選んだのち。

魂と人格を固定し、“形”を人ではなく眼鏡として構築する処理をしてもらい、”本丸”へ送り出された。



ーーーーーーー


一つの刀が人の形を成して、とある本丸に顕現した。


「山姥切国広だ。……何だ、その目は。写しだというのが気になると?」


と、そのセリフを言ったものの、すぐに困惑した顔になる。

それもそのはずだ。

主となる審神者の姿は見えない。


ただ一つの銀縁の眼鏡が、レンズに淡い藤色を帯びさせ、ぴたりと文机の上に収まっているだけだ。

突如、その眼鏡から女性の声が聞こえた。


「なんじゃぁ? その顔は。私のような眼鏡が審神者で気に食わぬか?」


からかうような女性の声。

山姥切国広は、大いに困惑した。


これが、仕えるべき審神者だというのか?


「うん、山姥切国広だったね。私がこの本丸の”審神者”だ。よろしくお願いする」


朗らかに告げてくる楽し気な声。


「あ…ああ…よろし、く…」


気圧されて、普通に挨拶をしてしまってから、なぜ眼鏡が審神者なのだ!?という疑問ばかりが膨らむ。


それを察したらしい眼鏡は、面白そうにコロコロと笑いながら告げた。


「刀が人になるのだから、人が眼鏡になって審神者となっても別によろしかろう?

それに、人の目では見えぬものがあったりするものでな」


声は若い女性声だが、口調がどうにも古臭いというか、芝居ががっているというか…。

おそらくわざとなのだろうが、ちぐはぐだ。

しん、と風が止んだように思えた。眼鏡が、微かに揺れたように見えた。


「“ちゃんと見る”には、余計なものが邪魔だったものでな。

私の体も、声も、心も。

だったら、最初から“見る”ことだけに特化したものの方が便利であろう?

逆に隠すこともできるしな」


便利ではないと思うのだが、山姥切には言い返す言葉がわからない。


「とりあえず、合戦場に一度出るとする…行ってくる」


「うん、行ってらっしゃい。……どうか、視界の外にいかないでくれな……」


わずかに寂しさの混じった声で送り出された。

視界の外…、あの審神者の見える範囲とは、何を指すのだろうか…。


そんなことを気にしつつ、山姥切国広は最初の合戦場に出陣していった。



----------


彼女は自分の暗い考えを押し殺し、眼鏡として、すべてを見守っていく。

そのレンズの奥で、今後も刀剣たちを見つめていくこととなる……。


己の仄暗い歪んだ思いと、己の表情を隠しながら。




刀剣乱舞がゲーム配信開始となった直後に書き始め、ピクシブにアップし。

そして肆の途中で止まったまま、10年近く経っていました。


途中、メンタル面で入院したり、引っ越しが数度あったり、データを失くしてしまっていたりで、止まったままだったものを、このたび、供養のために書き上げ、ピクシブだけではなく、こちらにもアップすることにしました。


お読みいただいただけで、感謝です。

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