肆.そうして私は歪んだ思いを手に入れた
私のその質問は、彼らを動揺させてしまったようだった。
「それは……」
「戻らないならば、それはそれで、構わないのです」
言いよどんだ彼らの言葉をさえぎるようにそう告げた。
小さな、小さな村社だった。
初詣や祭りの時を除けば、参拝者などほとんど訪れない。
その場所を代々手入れしてきた家系の末裔として、今、私がそれを引き継いでいた。
祖父、父、兄が代々行ってきた社の手入れ。
今、それをする者は、私しかいなかった。
父と兄は、事故で亡くなった…。
私は急いで神職の階位を取得せねばならなかった…。
その間、母が倒れた。
元々、体が弱い人ではあったが、伴侶と長男を同時に亡くした悲しさからだろう。
床に伏せ、起き上がれなくなり、やがて儚くなった。
祖父は、私が階位を取得したのを見届けると同時に、静かに息を引き取った。
私は思っていた。
これはすべて、禍気のせいなのではないかと。
彼らから話を聞いているうちに。
何故、と自問しているうちに。
これら降ってわいたような、一連の出来事の全てを。
その禍気の所為だと思ったのだ。
あんな事が立て続けに起きたのは、禍気の所為だ。
だから、私がその禍気を宿した、うちの剣を破壊してしまおう……。
そのために、サニワになれと言われているのだ……。
禍気の所為にしてしまう事が手っ取り早い。
そうする事によって、はっきりと忌むべき対象とその理由が手に入る。
歪んでいることは自覚している。
だから性質が悪いだろう……。
……このように歪んだ思いであっても、サニワとやらになれるのだろうか。