表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
交差点の先で  作者: tjrtr
2/14

第1章 模型部と私

 鉄道が好きだった。それはもう、幼稚園の頃から筋金入りだった。でも、「鉄オタ」って言葉が市民権を得るには、まだ少し早い時代だった。だから私は、ずっと周囲に隠すように、時刻表を読んだり、線路沿いの土手に登って電車を眺めていた。「鉄道好きな女の子」は珍しがられた。

 でも、中学生になって、ようやく“居場所”を見つけた。──模型部。入学したのは、難関と言われる大学の付属校。その初日、私は最初の部活紹介で真っ先に模型部のブースへ向かった。女子生徒の姿は私だけだったけど、全然気にならなかった。

「おおっ、女子が来たぞ!」

先輩たちはうれしそうに目を丸くして、部室に迎え入れてくれた。ダンボールいっぱいの写真、手書きのダイヤグラム、誰かが作ったペーパークラフトの鉄橋模型……。部室のすべてが、宝物に思えた。

「私、ここに入ります」

その日のうちに、私は入部届を書いた。迷いはなかった。

 先輩たちは親切で、知識も豊富だった。私のことも丁寧に扱ってくれた。誰も「女だから」と言わなかった。むしろ、真剣に鉄道を語れば語るほど、喜んでくれた。

 やがて、高校2年生になり、私は部長になった。それは私の「初めての肩書き」だった。部員は少なかったけれど、合宿、部誌制作、撮影旅行──全部に全力だった。班長たちをまとめ、教室にこもって編集作業をし、先生への提出書類にも頭を悩ませた。

 そして私は決意した。

「大学に進学しても、このまま交通研究会に入りたい。いや、入るだけじゃない。いつか、幹事長になりたい」

 それはただの夢じゃなかった。部長を務めたことで得た自信が、私にそう思わせた。伝統のある大学交研に入り、歴代の部長──いや、幹事長たちと肩を並べたい。そう願うことは、自然だった。付属高校の模型部で部長だった者が、大学で交研の幹事長を務めるというのは、ひとつの王道だったからだ。模型部と交研は、昔から深く繋がっていて、むしろ幹事長に"なろうとしない"人の方が少数派だった。だからこそ、私もまた、その伝統の延長線上に自分の未来を重ねていたのだ。

 ──だが、大学に進んだ私を待っていたのは、選挙での敗北と、それに続く長い長い挫折だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ