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白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
最終章 〝妖怪皇帝〟SON OF A BITCH
91/111

第091話 念願叶えど

 想定していない妖怪の襲来。

 まさか今日来るなんて。

 まさか首都が狙われるなんて。

 不幸は重なる。


「どうやって戦えってんだよ!」


 サクラが武装解除作戦を決行したため、武士は刀を持たず、大砲も使えない状況に陥っていた。


「俺たちは妖怪退治の専門家だけど……」


 江戸にいた公儀祓除人たちが対応に苦慮する。


「これだけの数の妖怪を一度に相手にしたことはないぜ」


 つまるところ、首都攻撃に対して人類は脆弱であった。

 逃げ惑う人々が将棋倒しになる。

 混乱に乗じた窃盗や辻斬り。

 人々は一心に願った。


「将軍様、お助けください」


     *     *


「実に愉快なのじゃ!」


 当の将軍は大江戸城の操縦室にいた。

 壁一面を埋め尽くすモニターには江戸中の映像が映し出されている。


「あなたには人の心がないのですか!」


 抗議するのは瀬良寺ビタリア。

 体を縄で縛られている。

 彼女に使えるのは言葉のみ。

 しかし将軍は事も無げに、


「みはAIじゃ。心などない」

「民を救うのが上に立つ者の務めでしょう!」

「ほほほ。苦しんでおるようじゃな」


 将軍がビタリアを操縦室に招いた理由はモニター越しに地獄のような光景を見せるためである。

 大江戸城は将軍のみ操縦することが可能。

 もちろん将軍に人助けをするつもりはない。

 最高のタイミングで大江戸城を動かし、人々を蹂躙する考えであった。


 ――あの女の血を引くなには最悪の苦しみを味わわせてやりたいものよ。


 操縦室へ入ることを許された者はもう一人いた。

 リケイカインである。


 ――いた!


 必死にモニターの中で探していたのはマギと皇帝。

 空中で何事かを話している様子だった。

 やがて2人は戦いを始める。

 それが皇位継承の儀だと直感するリケイカイン。


「ぼく、行く!」


 すぐさま部屋を飛び出した。


「どこ行くんすか?」


 廊下には神葉ギウデと大工部ヒトフリが控えていた。


「マギと皇帝のとこ!」

「ふーん。いってらっしゃいっす」


 リケイカインの後ろ姿を見送った後、ヒトフリは神葉に耳打ちをして、


「じゃあ行ってください。皇帝と接触をお願いします」

「了解っす」


     *     *


 ――皇帝もマギも赦さない!


 リケイカインは全速力で飛びながら、ひたすら憎悪を募らせた。

 自分を愛さなかった皇帝。

 自分の代わりに皇帝に認められたマギ。


 ――絶対に殺してやるんだから!


 ドキドキわくわくで空を飛ぶリケイカイン。

 ところが視界に入ってきた光景によって混乱させられる。


「吾輩の見込んだ通り出来た息子よ……!」


 皇帝がマギに敗北した。


「妖怪たちよ、聞け! これよりマギが妖怪皇帝となり、貴様たちを統治する!」

「あ……」


 空中を落ちていく皇帝。

 言葉をかけようとするも何を言えばいいかわからないリケイカイン。

 目があった。


 ――どうして?


 皇帝はゴミを見るような目でリケイカインを一瞥。

 すぐに目を離して、一言も話しかけなかった。


 ――どうして最期までぼくを見つめてくれないの?


「聞いたであろう!」


 マギが大声で叫ぶ。


「余は皇帝ぞ!」


 周囲にいた妖怪たちがマギに敬礼する。

 自分達に君臨する指導者として認めた証だ。


「リケ、久しぶりぞ」


 マギは【魅了━ファスツィナツィオン━】を発動しながら、


「一緒に戦わないか? そちが味方してくれるなら心強い。余の臣下になってくれるならこの上ない喜びぞ」

「どうして……?」


 必ずしも【魅了━ファスツィナツィオン━】はいい結果を生まない。

 他者に自分を愛させることはできる。

 しかし愛は時として憎しみを伴う。


「どうしてあの皇帝と同じことを言うの?」

「……リケ?」

「あいつが死んで嬉しいはずなのに、どうしてぼくは笑えないの?」


 リケイカインの心は満たされない。

 結局、先代の皇帝も新皇帝も彼を駒として使おうとするだけだった。


「マギ、嫌い!」

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