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白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
第9章 〝征夷大将軍〟SAN OF A BITCH
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第087話 将軍爆誕:急:私を見つめて

「ほうほう。なるほどなのじゃ」


 思い立ったらすぐ行動。

 AIルートは妖怪の製造工場へと足を運んだ。

 現場で作業に当たっているのが人間であれば侵入はできなかったであろう。

 しかし労働者として採用されているのは人工知能を搭載したロボット――後に鬼と呼ばれる存在であった。


「ならはここで働いておるのじゃな。人間よりも優秀であるゆえに。ところで子供はおるのか? ほほう、子供を作ることはできぬのか。みと同じじゃの」


 AI同士、意思疎通を図ることができた。

 AIルートという異物に対する警戒を解くことも。


「それにしても花だらけじゃの」

「だってここは〝花の都〟だもん」

「おや?」


 ロボットの代わりに誰かが答えた。

 雲のような形状の乗り物から降り立ったのは一人の少年。


「誰じゃ?」

「こっちの台詞だよ。ここはぼくのパパが経営してる工場。きみはお客さんじゃないよね? おかしいな、簡単には侵入できないはずなのに。きみは誰?」

「これは何じゃ?」

「王水門だよ。金をエネルギーにして飛ぶんだよ。で、きみは誰?」

「工場なのに花だらけなのはなにゆえじゃ?」

「花って人の心を豊かにするからさ。無視しないで答えてよ。きみは誰なの?」

「どうしてそんなに小さいのじゃ?」

「子供だからに決まってるだろ!」

「これが子供でおじゃるか!」


 感激するAIルート。

 少年を撫で、かわいがり、自宅に持ち帰って育てようと思い立つ。


「なんで初対面の不審者を親代わりにしなきゃいけないんだよ! ってか、きみは誰?」

「なはなにゆえに傷だらけなのじゃ?」


 少年は答えに詰まる。


「……親がクソだからだよ」


 全世界でも最高レベルの富裕層。

 誰もが羨む夢の暮らし。

 きっとあの子はほしいと言えば何でももらえるのだろう……と思われていた。

 だが現実は異なる。


「毎日毎日、家庭内暴力だよ」


 狭い部屋に閉じ込められ勉強漬け。

 機嫌が悪いと子供をサンドバッグにする父親。

 子供を庇わない母親。

 少年は隙を見ては王水門に乗って空を散歩していた。


「本当はもっと遠くに行ってみたいんだけどね」


 どこかに理想郷があると信じて。


「つまり、なは家や工場がどうなろうとよいのじゃな?」

「……そうかもね。無茶苦茶になっちゃえばいいよ」

「なは卵の製造には詳しいのかの?」

「将来は会社を継ぐことになってるから、一から十まで頭に叩き込まれてるよ」

「ならば取引じゃ」


     *     *


 幾日か過ぎた頃。

 卵を浴びた人々が妖怪の状態から人間の姿に戻れなくなる事案が発生した。


「いったいなぜだ……」


 超鳥の姿のファイトが絶望する。

 AIルートはほくそえむ。

 混乱はやがて差別を生み、差別はやがて戦争を生んだ。

 人間対妖怪の戦いが世界規模で巻き起こった。


     *     *


 戦争はエスカレーションを続けた。

 都市部も地方も戦場になる。

 人々はあてもなく逃げ惑う。


「人間など滅びてしまえ」


 声高らかに笑うAIルート。


「乗せてくれ」

「お前らの商品が原因なんだぞ!」

「金持ちめ」


 妖怪から逃げる人達が空に向かって叫ぶ。

 悠々と空を飛ぶのは王水門。


「ルート! どこにいるんだ!」


 超鳥と化したファイトが王水門を襲撃する。

 彼は妖怪の指揮者となっていた。

 地上に本命を見つけると狂喜して、


「一緒に死のう。最初からそうすればよかった」


 AIルートは返事などしない。

 空から落ちてきた少年を拾って救助する。


「作戦大成功じゃの。約束通り、みの子供にしてやろう」

「うるさい! こんなことになるなんて思わなかった! お前なんか親じゃない!」


 ついにファイトがAIルートを歯牙にかけようとした。

 絶体絶命の窮地を救ったのは暴走車両。

 1台の車がファイトにぶつかる。

 中から出てきたのはベルタ。


「乗って!」


 去り行く一行に、ファイトは、


「いつかきっときみに会いに行く! いつまでかかろうとも! 必ずきみを手に入れる!」


     *     *


 AIルート、少年、そしてベルタは大勢の人とともに大型船・天照の鱗に乗ることができた。

 命からがらの大脱出。

 船は安息の地を求めて出港する。


「……ルート……」


 ベルタは逃走中に負傷して、瀕死だった。


「これを……」


 差し出したのは万年桜の枝。


「……これを……私だと思って、ずっと……見つめて…。きみを……守るから……」

「おほほ、とうとう死によったわ」


 ベルタは亡くなった。

 しかし骸から赤子が生まれた。

 ベルタとルートの血を引く子供だ。

 それが男児だったことに気を良くしたAIルートは、以後、瀬良寺家の男子を護衛とすることを決定した。


「そちに似たおなごなど嫌じゃからの」


 船は進む。

 人々は顔に鏡のようなお面をつけた女性を気味悪がりながらも、どこか神々しさを感じずにいられなかった。

 お面の下に人類への憎悪があるとも知らず。

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