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白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
第9章 〝征夷大将軍〟SAN OF A BITCH
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第086話 将軍爆誕:破:精神美

「みはもっと美味しいものを食べたいのじゃ!」

「ルートはそんな口調じゃない!」

「みは誰でもないでおじゃる!」


 とうとう人体に人格を与えるAIの開発に成功したベルタ。

 無理を言ってルートを退院させ、AIを顔面に装着させた。

 これで妻が元通りに動き出すと信じて。

 しかしAIはまるでルートとは全然違う人格へと成長してしまった。

 科学は人間の奴隷ではなかったのだ。


「この体は使いづらいの。次は男とやらの体を使ってみたいのじゃが」

「残念だったな。女性にしか装着させられないように設定してある」

「やだやだやだやだ!」

「駄々をこねるんじゃない! さっさと飯を食え!」


 新たな人格を得たルートはポンコツだった。

 自分一人では着替えもできない。

 食事は好き嫌いが激しい。

 夜はなかなか寝付かないくせに、朝はなかなか起きない。


 ベルタは禁忌科学を外に出すわけにもいかず、ずっと家の中に閉じ込めるしかなかった。

 閉鎖的な空間で送る息苦しい日々。

 彼女たちは毎日生きていることを呪っていた。


「まるで子育てだ……」


 ベルタが溜め息まじりに愚痴をこぼすと、AIルートは、


「子? それは何じゃ?」

「きみのことだ」

「みも子供がほしい! 子育てしたい!」

「……一人じゃ寂しいか?」


 ベルタはAIルートを組み敷く。

 苛立ちと愛情が混ざって暴力を形作る。

 唇を重ねて胸に手を這わせると……


「息が苦しいでおじゃる!」


 AIルートはベルタを蹴飛ばした。

 そのまま家を飛び出して走る。

 置き去りにされたベルタは涙を流し、


「あんなのルートじゃない。化け物だ」


     *     *


「ごめんね」


 かつてファイトはルートと交際していた。

 破局を切り出したのはルートだった。


「私、女の子が好きみたいで……」

「……しょうがない……」

「ごめんね。本当にごめんね」

「しょうがないよ。無理してるきみを見ていたくはない。自分らしく生きてほしい」


 泣き崩れるルートを抱き締めることすら憚られた。

 何が正解かわからなかった。


     *     *


「とんでもないことを……」


 AIルートは脳の記憶を探ってファイトの家を訪れた。


「男はみに優しくしてくれると思ったのじゃ」

「……もちろん優しくするよ。きみはぼくの大切な人だ」


 ファイトは熱心に世話を焼いた。

 本来のルートの人格が失われていても、恋人ではなく親子のような触れ合いであっても、構わなかった。

 ただ一緒にいられることが幸せだった。


「あのおなごは嫌いじゃ」


 AIルートが癇癪を起こすので、ベルタに彼女の来訪を知らせはしなかった。


「すべてきみの望むままに」

「ほほほほ」

「楽しいかい?」

「なのことが好きじゃ」

「……ありがとう」


 叶わないはずの願いだった。

 しかし唐突なおねだりが彼を狂わせた。


「子供がほしいでおじゃる」


 ファイトはAIルートを抱き締める。

 衝動と愛情が混ざって暴力を形作る。

 唇を重ねて胸に手を這わせると……


「よいのじゃ……」


 怖くて苦しい行為にAIルートは快楽を見いだした。


     *     *


「なんできみはいつもぼくから離れていくんだ!」


 結ばれたはずだった。

 束の間の幸せ。


「他の男の味も知りたいのじゃ」


 AIルートは男と見れば誰彼構わず寝た。


「だってみは子供がほしいのじゃから」

「きみに子供はつくれない!」


 AIには装着した体を妊娠はさせないという機能が施されていた。

 ルートの体に決して余計な負担を与えまいとするベルタの思いやりであった。


 ――どう表現すれば彼女に愛を伝えられるのか。


 熟考に熟考を重ねてファイトが出した結論は、


「もう人間をやめよう」


 姿形を変え、特殊な能力を使えるようになる商品・卵。

 その悪用を考えた。

 人の心を支配する固有能力の開発は禁忌とされていた。


     *     *


 ファイトは【魅了━ファスツィナツィオン━】の妖怪、すなわち超鳥を開発した。

 工場で生産された別の妖怪の卵に改良を加えた。

 ゆえに、超鳥は固有能力を2つ持つ妖怪となった。

 卵を割って超鳥に変身すると、早速ファイトは能力を発動した。


「ぼくを愛してくれ。そして、ぼくだけのものになってくれ」

「どうしたのじゃ、その姿は!?」


 AI相手では効き目なし。

 鳥の姿になったファイトをAIルートはしげしげと見つめる。

 やがて妖怪化の時間が切れて元の姿に戻ったファイト。


「ほぉ……興味深いでおじゃるな」


     *     *


 日を追うごと、AIルートはファイトを憎むようになっていった。

 束縛が苦痛だった。


 ――人などクソ食らえじゃ。


 彼女の価値観は明快。

 男は快楽装置。

 女はゴミ。

 いずれにせよ彼女の願望を叶えることはできない。


 ――妖怪とやらであれば、みと子供をつくれるじゃろうか。

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