第074話 4人体制パーティー
マギは背中にマゴとクロワを乗せて、将軍陵墓の中をゆっくりと下降する。
「お母様は先代の将軍閣下ですわ」
記憶からすっかり抜け落ちていた情報。
マギは母親の顔を思い出せない。
かつては同じ屋根の下で暮らしていたのに。
「わたくし達はお母様のお墓を荒らしているのですよ。それもつい最近亡くなったばかりの……」
「母上が……」
「とても美しい方でしたわ。わたくしの顔を見ればわかりますでしょ」
「覚えてない」
兄のポンコツっぷりに対してマゴは怒りもしない。
逆にクロワは信じられないとばかりに、
「母の顔を思い出せないなんて、そんなことあります? いくらマギ様が出来の悪い方だとはいえ」
「これでも元々は出来のよい兄だったのですよ、クロワ殿。ですけど、お父様によって人体実験を受け続けた結果、頭がおかしくなってしまったのですわ」
「……人体実験……?」
クロワはマギの顔を覗きこみ、
「親が子を実験台にするなんて……嘘でしょ?」
「むぅ……余は何も覚えてないぞ」
「……」
ドン引きするクロワ。
マゴはそれみたことかと、
「この痴呆っぷりが何よりの証拠ですわ」
「でも、何の実験だったんですか?」
「お母様を取り戻すための実験です。クロワ殿はご存知ないでしょうけど、歴代の将軍に血の繋がりはありませんの。先代の将軍に気に入られた女性が後継者に選ばれるのだとか。将軍の地位を継いだ途端、人は人格を失ってしまうらしく、きっとお父様はお母様の人格を取り戻すために研究をなさっていたのでしょう」
しかし先日、彼らの母は死んでしまった。
バカなマギでも気になった。
いつ、どうして、母は亡くなったのか。
「公にはされていませんが、実は……」
マゴが説明をしている途中だった。
突如として四方八方から光が放たれた。
光はマギの体に直撃。
「マゴ、鞭で叩くでない!」
「叩いてませんわよ! 何かが飛んできてますのよ!」
「何かって何ぞ?」
「わかりませんわ。見たこともない光が……」
レーザー攻撃である。
そのような武器の存在をマギたちが知る由もない。
「マギ様、どうにかならないんですか!?」
クロワが叫ぶ。
「どうにかしようとしているが、範囲が広すぎるようだぞ。今の余の力ではこれが限界らしい」
「おっしゃってる意味がわかりません!!!」
万事休す。
「安心せよ、我が息子」
「……えっ?」
上方から声が轟く。
オレンジ色の光に包まれた何者かが飛来。
暗闇の中を飛び回り、レーサー砲を次から次へと物理的に破壊していく。
マゴはその姿に見とれながら、
「妖怪……? だけど味方……なのかしら?」
やがて攻撃を完了した妖怪はマギ達のもとへ近寄る。
「息子よ、危ないところであったな。貴様はまだ未熟者。修業を疎かにせぬことだ。父である吾輩のように強くなりたくば、な」
「なんで父親気取りなの、こいつ……。マギお兄様、知り合いでしたらこのイカれた輩をご紹介くださいまし」
恐れることなく尋ねるマゴに、マギから衝撃の回答が。
「妖怪皇帝ぞ」
マゴとクロワが目を大きく見開く。
伝説めいた存在。
人間に仇なす憎き妖怪の親玉。
それが今、眼前に。
「お兄様、逃げてー! こいつ、お兄様を裏切り者として処刑しに来たのですわ!」
マゴが叫ぶ。
「お、俺がこの身に代えてもお二人を守ります……!!!}
クロワが声と体を震わせる。
「何かあっても余が守るゆえ、落ち着くがいい」
そう言うマギはとても落ち着いている。
「ああ、人間の愛よ。なんと美しいことか……」
皇帝は涙を流した。
その様子を見てマゴはぽつりと、
「悪いやつじゃない……のかも? 頭はたいそう悪いようですけれど」
「それより光が気になるぞ」
マギは皇帝が放つ光を見つめる。
皇帝は提灯など持っていない。
「いでよ」
皇帝の命令に従い、1体の妖怪が皇帝の翼の中から這い出て来た。
全身からオレンジ色の光を出している。
種族名は粧か无。
「光る能力なのか?」
「体質である。こやつの固有能力は……推察できるであろう?」
皇帝の囁きに、マギは答えを返さない。
「う~ん、採用ですわ!」
マゴは扇子を広げ、
「照明をお持ちですし、わたくし達を助けてくださいましたし、マギお兄様より役に立ちそうです。皇帝、あなたをわたくし達の仲間に入れてあげてもよろしくてよ!」
「えぇーっ!? でも、こいつは人間を滅ぼそうとしてるんでしょ!?」
クロワが慌てふためくが、意に介するマゴではない。
「緊急事態ですもの。しばらくの間ですが……共闘しましょう」




