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白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
第8章 〝不朽戦艦〟天照の鱗
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第071話 〝伊方臨時町長〟大工部マゴ

「あ゛~。低気圧で最悪な朝ですこと」


 前伊方町長・満丸モチミチの邸宅にて、大工部マゴが目を覚ます。

 宇和島藩ではここしばらく雨が降り続いていた。


「それじゃあ早速、朝食を……の前に身だしなみを整えなくてはいけませんわ。持てる者は持てる物をふんだんに使うのが持つべきマナーですものね。こりゃ、召し使いや」


 マゴの合図で召し使いの女性たちが寝室に入る。

 運び込まれるのはメイク道具。


「おーひょひょひょ。江戸の老舗メーカーはいい物を売ってますわ。安物とは乗りが違いますものね」

「マゴ様、申し上げにくいのですが……」


 侍従の一人がおずおずと、


「出費がかさんでおりまして……その……もう少しなんと言うか、こう……節約を……」

「じゃかあしい!」

「ひぃ」


 マゴが机をドンと叩く。


「実家に無心すればいいじゃない! マガお兄様もマギバカお兄様も城から出てったんだから、その分わたくしたち兄弟の養育費の取り分が増えてんじゃねーの!?」


 前町長辞職の後マゴが伊方町の臨時町長に採用された。

 マグが城主筆頭候補となりマゲが嫁入り先を探す中、末子のマゴだけは暇を持て余していたためである。

 正式に次期町長が決まるまでのお飾り。

 だからマゴはのほほんと暮らしていた。


「政治とかわかんないしさ、女装くらいしかやることないんだっつーの。わたくしの唯一の生き甲斐を奪おうっての!?」

「だって女装とかバカみたいじゃないですか」

「はい、こいつ処刑で」

「ひ~~~っ。お助けを!」


 連行される召し使いを横目に、マゴは、


「おーひょひょひょひょ。気分爽快。よい朝ですわ」


 そんなこんなでメイクを終えると、マゴは居間へと向かった。


「騒がしいですわね。ちょっと、あなたたち! 町長の使用人としての自覚を持って! お上品なわたくしを見習ってくださいまし!」

「おはよう」


 マゴを出迎えたのはドデカイ白鳥だった。

 食卓に並ぶ食事をついばみながら、親しげに挨拶をする。

 いや、そもそも本当に白鳥であれば人語を喋ることなどできないはず。

 つまり、これは、


「よよよよ、妖怪ーーーーーー!!!!!」


 マゴの悲鳴を受けて白鳥は溜め息。


「やはり兄弟の目にも余は妖怪として映るのか」

「はぁ!? わたくしとあんたが兄弟~!!? ふっざけんじゃねー! それじゃあ、わたくしも妖怪ってことになんだろうがよ!!!!!」

「余はマギぞ」

「!?」

「家を出た後も体の変化が続いて、こんな姿になってしまったぞ」


 マゴは股間が白鳥になってしまった兄の姿を思い浮かべる。

 そして目の前のクソデカ白鳥と比較する。


「……本当にマギお兄様なのですか……?」

「どうすれば信じられる? そちの隠し事を言おうか? ブラシを集めるのが趣味だと言いつつ、ブラシの棒の部分を使って夜な夜な――」

「やめろー! 殺せー! こいつを処刑しろー!」

「待て。余はそちを助けに参ったのだぞ」

「はぁ!?」


 マギはこれまでのことを簡単に説明した。

 にわかには信じがたいような大冒険。

 引きこもりのマゴにとって刺激的な内容だった。


「……というわけで妖怪皇帝は船を手に入れたいと申しておったぞ」

「へぇ、お船を。妖怪のくせに結構な趣味ですこと」


 マゴは食後のルイボスティーをすする。


「大陸にいる妖怪を船に乗せて、列島までやって来るらしいぞ。そうしてこの地を自分達の住みかにするらしい」

「マギバカお兄様、そんなことに荷担するおつもり!? 処刑しますわよ!」

「逆ぞ。余は皇帝よりも先に船のところまで行って、船を破壊する」

「ふーん。で、その船はどこにありますの?」

「将軍陵墓の中にあるらしい。だが、どうすれば中に入れるかわからないゆえ、そちを訪ねて参った」


 あまりのことにマゴは絶句。

 やがて大声で、


「不敬者!!!!!」

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