表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
第8章 〝不朽戦艦〟天照の鱗
70/111

第070話 かつて卵と人を運んだ船

「もううんざりぞ」


 雲の形をした皇居こと王水門。

 その上でマギは妖怪皇帝から直々に授業を受けていた。

 来る日も来る日も。


「これでは今までと何ら変わりないではないか」


 幼少の頃より家庭で厳しく英才教育を受けてきたマギ。

 頭を使うのが嫌いなため勉強は苦手であった。


「知識も知恵もない者が妖怪皇帝になれるはずがない。吾輩が家督を譲るまで、貴様にはありとあらゆる素養を叩き込んでくれよう」

「じゃあ余は皇帝にならなくていいぞ」

「ならば何になる?」

「何にもならずに毎日食っちゃ寝して暮らすぞ」

「穀潰しを受け入れる人間はいるのか?」

「……」


 ただでさえ無能のマギである。

 加えて完全に妖怪の姿になってしまった。

 歓迎してくれる人の顔など浮かぶわけもない。


「……余なんて……余なんて無価値なのか……」

「貴様は素晴らしい」

「本当か!?」

「極めて効力の強い【魅了━ファスツィナツィオン━】。そして類い稀なる固有能力【無効化━アヌリルン━】。貴様ほど優れた超鳥は他におらぬ」

「人間ではなく妖怪としてすごい、ということか……」


 がっかりするマギ。

 皇帝はお構いなしに授業を続ける。


「歴史のおさらいである。卵とはそもそも人間が開発した科学技術に他ならぬ。かつて人間には変身願望があったらしい。現実の自分の能力に不満足であるがゆえに、超人的な能力を持つことを欲し、創作においてその欲求を満たした」

「……ふむ……」

「やがて人間は人間を超える術を現実世界において発見した」

「……ふむ……」

「それが卵であり、卵によって人間が変身した姿が妖怪である」

「……ふむ……」

「本当に理解できているか?」

「……うむ……」


 卵は売れに売れた。

 人々は変身することや特殊な能力を使うことに夢中になった。

 しかし、


「卵を使用した人間は元の姿に戻れなくなった。同じ種族同士でしか子を成すことはできず、そして生まれた子もまた妖怪の姿である。差異は差別をもたらし、差別は憎悪をもたらし、憎悪は戦争をもたらす。妖怪はやがて人間を相手に戦いを起こした」

「どっちが勝ったのだ?」

「妖怪が勝利した。人間は大陸を追われ、この列島に辿り着いた」

「ふーん……へぶしっ」


 冷たい風が吹いた。

 季節は冬。

 上空は気圧が低いため尚のこと寒さが厳しい。

 震える皇太子を見かねて皇帝は、


「体を動かそうか」


 授業科目を体育に変更した。


「それでは、いつものように……」


 皇帝が固有能力【屍術━ネクロマンティー━】を発動。

 王水門に転がる無数の死体が蘇り、マギに立ち向かう。


「むぅ!」


 対してマギは無効化を発動。

 超鳥たちを死体に戻す。

 だが、


「取りこぼしがある!」

「わわわっ」


 すべての超鳥を屍に戻すことはできなかった。


「現時点で【無効化━アヌリルン━】の有効範囲は半径10メートル程度である」

「先月よりだいぶ広くなったぞ」


 固有能力は訓練によって強化することができる。


「満足するな。貴様の能力は発動している間だけ、範囲内の固有能力を無効化できるに過ぎぬ。決して永続的ではない。つまるところ有効範囲を広げぬ限り貴様など下等妖怪である」

「言わせておけば好き勝手なことを!」

「……っ!?」


 マギが怒り任せに【無効化━アヌリルン━】を発動。

 同時に王水門が軋み出す。

 皇帝の体が震えるのは皇居が振動するからか。

 もしくは……


 ――こやつの能力はあらゆる科学技術に対して効果を発揮するのか?


 皇帝の口角が上がる。


「よし、それまで!」

「ふぅ~、疲れた疲れた。体育はこれで終わらせようぞ」

「さて、歴史の授業の続きだが……」

「もう少し体育をしよう」

「人間が大陸から列島まで辿り着いたところまで説明したであろう。では移動手段は何か?」

「泳いだのでは?」

「船である」


 皇帝は遥か下方の地上を見つめながら、


「我々はその船を奪いに行かねばならぬ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ