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白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
第7章 〝カラクリ政権〟大江戸幕府
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第067話 征夷大将軍登場

「師匠……いや、神葉!?」


 カラクリとおぼしき装置の中で眠る神葉。


 ――どうして大江戸城の中に?


 一瞬だけ瀬良寺は驚いた。

 しかしすぐに疑問を打ち消す。

 神葉の隣には体を改造されている救祖の姿があったためだ。


 ――驚くことはない。こいつらは繋がっている。それが証明されただけのこと!


「神葉は幻覚にひどく苛まれてます」


 ヒトフリはカラクリに触れながら、


「治療には手こずりました。妖怪の固有能力を一瞬で無効化する術はないですから」

「……神葉は……」

「もうじき目を覚ますでしょう」


 悔しいが、ほっとしてしまう瀬良寺であった。

 自分の気持ちを誤魔化すように、質問を繰り出す。


「幕府がカラクリを製造したり蚊虻教を組織したりする理由は何です? 加えて、これだけの技術力があるなら私に将軍閣下の警護を任せる必要もないでしょう」

「まあ、いいじゃないですか」

「よくない!」

「鬼、この人を掴んで運んでください」

「わぁ!?」


 突如として出現した鬼に、瀬良寺は為す術なく持ち上げられる。


「こいつは御所藩に現れた……」

「鬼もカラクリです」

「妖怪ではないのか」


 ――だから棍棒の毒が効かなかったのか。


 ぞっとする事実。

 瀬良寺は抵抗する意思をなくす。

 黙って連れて行かれた先は、


「それでは征夷大将軍閣下とご対面……」


 放り込まれると、すぐに背後で襖が閉められた。


「んな……っ!?」


 暗くて何も見えない部屋の中。

 柔らかな何かが瀬良寺に触れた。

 女の体。


 ――征夷大将軍は女性のみが務めるという。しかし御簾の向こうの閣下に触れることは何人にも許されないことだ。


「将軍閣下……なのですか?」

「むほほ。キメ細やかな肌なのじゃ」

「おやめください!」

「髪がトゥルントゥルンじゃ」

「話を聞いてください!」


 べたべたと体を触られて良い気分ではない瀬良寺。

 しかし相手が将軍かもしれないとなると突き飛ばすこともできない。


「とりあえず明かりをつけていただけませんか」

「むほほ。明るい方がよいのじゃな? よかろう」


 部屋全体がぼんやりと明るくなる。

 瀬良寺の視界に現れたのは瀬良寺自身の顔であった。


 ――違う。鏡だ。


 人がマスクのように鏡を顔に装着している。

 艶やかな長髪。

 乱れた着物。

 露になった胸の谷間。

 まるで遊女のよう。

 征夷大将軍としてあるまじき格好である。

 それを差し置いて、瀬良寺が将軍に抱いた第一印象は、


 ――マギに似ている。


 理由はわからなかった。


「これ、どうしたのじゃ。みの体に集中せよ」

「私は瀬良寺サン。新たに着任しました公儀扈従人でございます」

「名前と顔くらい知っておるぞ。まだ知らないのは味じゃ。むほほ」


 将軍の手が瀬良寺をなぞる。

 顔。

 首筋。

 胸。

 服の中に手が差し込まれる。


「わ、私は!」

「どうして元気にならんのじゃ?」

「世のため人のために!」

「みに発情せぬ男など、かつて一人もおらんかったのじゃが」

「以前は公儀祓除人として! 今は公儀扈従人として!」

「ふぅ……ん」

「命を懸けて参りました!」

「なるほどのぉ」

「それなのに……」


 瀬良寺の頬を涙が伝う。

 将軍は呆れたように瀬良寺から離れる。


「幕府はカラクリを弄し、あまつさえカルト教団と手を組む始末。おまけに閣下は淫乱でいらっしゃる」

「カラクリは嫌いか?」

「好き嫌い以前に法で禁じられているではありませんか」

「なの棍棒も妖怪の固有能力を応用したカラクリ武器じゃろうが」

「!」

「剣技を極めた武士があえてカラクリ武器を選ぶ。それこそ人の無力さの証明。人は滅びるべきなのじゃ」

「……は?」


 耳を疑う発言に、瀬良寺は言葉が出ない。


「人より妖怪の方が優れておるのじゃからの」

「……何を……」

「幕府があらゆる政治課題に無為無策なのも、カラクリを禁じておるのもこれがためじゃ。人を不利にして、妖怪を有利にする。ああ、早う妖怪の時代が来てほしいものじゃて」

「……もはや迷いは不要か」


 瀬良寺は将軍めがけて棍棒を振るった。

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