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白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
第7章 〝カラクリ政権〟大江戸幕府
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第065話 〝侍従長〟神葉ギウデ

「今更っすけど、どうしてなんすか?」


 松山城の地下。

 幕府によって禁じられたカラクリが豊富に揃う空間。

 タマキがカラクリで何らかの施術を受けている。


「どうしてわしを助けたんすか? 普通、口封じのために殺すっすよね」

「はい、そうなんです。でも鬼を相手に善戦する人を葬るのはもったいないですよ」

「わしがあんたに仕える保証なんて無いっすよね? 回復したらあんたのこと殺すかもしれないっすよ」

「違います」


 タマキと話しているのは、くたびれた壮年の男性。

 表情を動かさず淡々とした口調で、


「あなたが強いのは愛に殉じようとしたからです。あなたは愛を裏切れません」

「でも、もう……」

「起きてください」


 壮年男性は鏡を持ってきて、


「ほら、髪の色が変わりました」


 タマキの金髪はすっかり黒髪になっていた。

 呆気に取られたタマキ。


「治療してくれてたんじゃないんすか!?」

「それはまあまあ前に終わりました」

「何を勝手に……」

「姿を変えた方がいいと思います。あなたは同僚殺しの罪で指名手配されてますから」

「あー……確かに。ってか、これってカラクリっすよね? いいんすか? お偉い人がカラクリの違法所持なんて」

「はい、大丈夫です」


 お偉い人が手を叩く。

 すると鬼が部屋に入って、一礼。

 焦るタマキに構わず、謎の壮年は、


「鬼は妖怪じゃなくてカラクリなんです。カラクリを製造・管理するのが大工部家の仕事です」

「あんたは……」

「大工部ヒトフリ。あなたが夢を叶えるお手伝いできます」


     *     *


「侍従長の神葉ギウデっす。よろしくっす」


 金月タマキは名前と身なりと身分を変えた。

 大工部家にて新生活の始まりである。


「あんたはマガ様っすよね」

「挨拶は実験中にやることですかぁ~~~~???」


 大工部家の長子・大工部マガはベッドの上に横たわっていた。

 全身にチューブがつなげられた状態。

 父親に体をいじくりまわされている。


「他にすること無いんすもん。あんたが暴れたら殴れって言われてるんすけど、あんた全然暴れないし」

「くぅ~~~。こんな間抜けに殴られたくないぃぃ。痛いけど我慢我慢……」

「ってか、これって何の実験なんすか?」

「人間妖怪化の実験ですぅぅ」


 痛みのせいでマガは言葉が出ない。

 ヒトフリが説明を引き継ぐ。


「妖怪の固有能力を応用する技術の開発です。あなたの髪の色を変えたのは縞根(しまね)の固有能力の応用です」

「お子さん、めっちゃ苦しんでるっすけど。これ大丈夫なんすか? お世継ぎっすよね」

「人が妖怪の固有能力を使えるようになるには、卵を浴びて妖怪化するしかないですね。でも卵を手に入れるのは大変なので、卵無しで固有能力を使えるようになったらすごいです」

「すごいっすね」

「じゃあ、そういうことです」

「わかんないっすね」


     *     *


 長子マガの人体実験が終了。

 次に被験者になるのは次男のマギである。


「マギ様~、どこっすか~? そろそろ実験の時間っすよ!」


 広い庭を捜索すると、木から降りてくるマギがいた。


「あ、どーも。侍従長の神葉っす」

「ご苦労。いざ参ろうか」

「何すか、その卵」


 マギは服の中に卵を入れていた。

 お腹の辺りがぽっこり膨らんでいる。


「……気にするでない」

「この家いろいろとヤバイっすから、細かいこと気にしてたらキリないっすもんね。妖怪の卵にしか見えないけど気にしないことにするっす」

「……脅しか? 何がほしい?」

「おとなしくついてきてくれるだけでいいっすよ」

「別に逃げるつもりなどないぞ」

「怖くないんすか?」

「人生、諦めが肝心ぞ」


 2人は歩く。

 憂いを帯びた表情のマギ。

 神葉は赤の他人の事情に首を突っ込む気などなかった。

 マギとしては救済を求めるつもりなど無く、


「余は他の兄弟とは違う。特に兄上とはな。あの人は下らない欲に囚われておいでだ。親に愛されたいなどと」

「愛されなくていいなら人体実験を甘んじて受け入れる必要もなくないっすか? 逃げちゃわないんすか?」

「人生、諦めが肝心と言っているだろう。ただ生まれて、ただ生きて、ただ死ぬだけ。それ以上に何を望む? 余は公爵ぞ。だが、ただの人間ぞ。いつか蚊虻教とかいう宗教団体の救祖をやらされるであろうが、余は拒否などしない。すべてを受け入れようぞ。強いて言うなら、死ぬことこそが余の夢だ」


 神葉は立ち止まる。


「あんた、賢すぎるっすよ」


 立ち入らなくていい領域に足を踏み込み、


「愛のない人生なんて意味ないっす。あんたはもっとバカになった方がいいっすね」


     *     *


「シャクにさわる弟ですね!」


 蚊虻教の救祖に選ばれた長子マガ。

 出立の日、神葉を相手に口をこぼす。


「あいつが実験で頭をやられたせいで、私がどさ回りですよ! 藩主なら頭がいかれてても務まりますからね!」

「わしとしてはどっちがどっちでもいいっすよ」

「いざとなれば私についてくださいね。……あなたの野望を叶えられるのは私です。あのバカマギには無理でしょう」

「それはそうっす」


 神葉は爽快な気分であった。

 藩主後継となったマギと2人きりの場で、笑う。


「バカになれてよかったっすね」

「何という口の聞き方! 余は公爵ぞ!」

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