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白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
第6章 〝ネクロポリス〟死の都
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第061話 夜の光 ―LUX NOCTIS―

 マギと妖怪皇帝の対決が始まろうとしている。

 しかし新しい体に慣れていないマギはもたつく。


「おっとととと」


 足がもつれてこけそうになる。

 見かねたリケイカインが、


「ぼくが前衛する♡ マギは後ろから援護して♡」

「貴様は邪魔をするなっ!!!!!」


 皇帝がリケイカインを一喝。

 固有能力【魅了━ファスツィナツィオン━】でリケイカインを御そうとする。

 しかし、


「ぼくは我慢できるもんね……!」

「貴様は【魅了━ファスツィナツィオン━】だけが取り柄である。吾輩に逆らえる者はそうそう生まれぬ。それだけにもうひとつの能力が【硬質化━ザイフリート━】とは、なんとももったいないことよ」

「うるさい! バカ!」


 他人の家で親子喧嘩を見せつけられて、ちょっと気まずいマギ。

 勇気を出して声をかけてみる。


「親子は仲良くした方がよいぞ」

「「黙れ!」」


 皇帝とリケイカインが同時に同じことを叫んだ。

 気まずい沈黙が流れる。

 空気を変えるために何か発言してみようと3人が同時に口を開いて、また気まずくなる。

 こほん、と皇帝が咳払い。

 マギもリケイカインも空気を読んで口をつぐむ。


「超鳥一族に親子の情など要らぬ。我々には妖怪を統率する者としての責任がある。指導機関として成立することを第一の目的として、合理的に生きているのである」

「むぅ……」

「吾輩に賛同するか?」

「いや……」

「吾輩に従わないでいられるとは、【魅了━ファスツィナツィオン━】の能力は強いようだ。……それともあまりに愚鈍で理解ができなかっただけか?」


 図星を突かれてマギはキレた。


「余は公爵ぞ!」


 ようやく戦いが始まる。

 マギは駆け出す。

 くちばしで皇帝をつつくしか戦術が思い浮かばない。


「マギ、もう1個の固有能力を使って!」


 黒鳥を振り回しながらリケイカインが注文を出す。


「そう言われても何もできそうにないぞ?」

「頑張って♡」


 マギの固有能力を確かめたいのは皇帝も同じであった。


「先程、糸を粉砕し聴覚を取り戻したのは何かしらの固有能力によるのではないか? 集中せよ。己を信じよ」


 対戦相手に励まされながらマギはりきんでみる。

 何も出なかった。


「ならば死刑である」


 ちょっとがっかりした様子の皇帝。


「ただし貴様らには吾輩の命令は通じないであろう。よって実力行使せざるを得ぬ」

「マギ、気を付けて! 皇帝が固有能力を発動するよ!」


 リケイカインに緊張が走る。

 マギも身構える。


「目覚めよ」


 皇帝の一声で、雲の上に転がる死体がいくつも起き上がった。

 その中には、つい数分前に自害した2体の超鳥も含まれている。


「死んだはずでは……?」


 困惑するマギ。

 一方、リケイカインは冷静に、


「ここは〝皇居〟王水門。皇帝になれなくて死刑になった超鳥がたくさんいるんだよ。そして皇帝の固有能力は死者を甦らせること」

「じゃあ、こやつらは全員……」

「超鳥。それぞれ違う固有能力を持ってる」

「……勝てそうにないぞ……」


 正直、帰りたいマギであった。

 皇帝は命令を下す。


「二手にわかれよ。半分はこの2匹の死刑囚を殺害せよ。もう半分は地上に降臨し、人間を殲滅せよ」


 人々の不幸を看過するなど、公爵としてありえない選択であった。


「話せばわかるぞ!」


 戦って勝てないなら話し合いである。


「余は御所藩で人と妖怪が協力できることを知った。人が妖怪になってもなんとか上手くいっているぞ。ほら、余とリケも仲良しだし」

「蚊虻教か。やつらを通じて人類の殲滅を図ったが、どうも遅い。吾輩はもう我慢ならぬ」

「……っ」


 超鳥の大群が雲から飛び立とうとしている。

 このままだと大勢の人が殺されるであろう。


「そんなの……赦せないぞ……余は公爵ぞ!!!!!」


 無意識だった。

 マギは固有能力を発動した。

 蘇生された超鳥すべてが死体へと戻り、雲の上へ落ちる。

 唖然とする皇帝。


「わかった! マギの能力は【無効化━アヌリルン━】だ♡」


 リケイカインが頬を赤く染める。


「すごい……♡ すごいよ、マギ♡ これなら皇帝に勝てる♡」

「素晴らしい」


 感嘆するのはリケイカインだけではなかった。

 皇帝さえも惚れ惚れとマギを見つめる。

 その口からはリケイカインにとって意外な言葉が出てきた。


「合格である」


 マギもリケイカインもその意味がわからなくて固まる。


「マギ……と申したな」

「余は〝公爵〟大工部マギぞ」

「今日から貴様は〝皇太子〟マギである」

「むぅ? ……むむぅ!!?」


 おつむの悪いマギと違い、リケイカインは瞬時に理解した。

 そして焦り始める。


「いやいやいやいやいやいやいや、ちょっと待ってよ」


 リケイカインは皇帝を倒すことだけを考えていた。

 勝てば生き、負ければ死ぬ。

 まさか相棒に選んだマギが皇帝の試験をパスするなどまったくの想定外であった。


「ぼくたちは皇帝をやっつけなきゃ……ね?」

「弱い息子は要らぬ。やれ」


 再び皇帝が固有能力を発動。

 甦った超鳥の大群がリケイカインを一斉に攻撃する。


「……お父さん……」


 それだけを言い残してリケイカインは雲から落ちた。

 助けに行こうとするマギだったが、超鳥たちに阻まれる。


「リケイカインは……多分そちのことを嫌いなんじゃなくて……」


 マギはすがるように皇帝を見上げる。

 皇帝はマギだけを見る。


「不出来な息子のことなど、どうでもよい」

「ただ……そちに褒められたくて……」

「マギよ、妖怪の未来を担う者よ、世界を照らす光になれ」

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