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白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
第6章 〝ネクロポリス〟死の都
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第059話 リケイカインの回想

「ぼくたちは超鳥(ちょうちょう)という名の妖怪。すべての妖怪をまつろわせる種族なんだよ」


 リケイカインが物語り始める。

 他の種族とは異なり、超鳥すなわち皇族には指導者としての資質が求められる。


「貴様の固有能力を見せよ」


 古より続く慣習。

 卵から孵化し、ある程度成長した超鳥には皇帝より直々に〝試し〟が与えられる。


「まずは【魅了━ファスツィナツィオン━】を発動せよ」


 超鳥の固有能力。

 あらゆる動物から愛を獲得できる。

 超鳥が妖怪を束ねることができる所以だ。


「次に貴様独自の固有能力を発動せよ」


 超鳥は特別な妖怪である。

 他の種族とは異なり、2つの固有能力を持っている。


「体が硬くなるだけか?」


 2つ目の固有能力はその個体の特質によって決定される。

 リケイカインは殻にこもるような性格だった。

 ゆえに硬質化の能力を生まれ持った。

 現皇帝を超える者のみが跡を継げる。

 もし力量不足と見なされたら……


「死刑である!」


 王水門の地べたには、皇帝になれなかった超鳥の死体がたくさん転がっている。


「即刻自害せよ」

「ねえ……皇帝陛下……」

「死ね」

「ぼくのこと、好きぃ?」

「貴様は不要だ。死ね」


 皇帝に魅了されて逆らえる者はただ一人もいなかった。

 リケイカインとて同じである。

 本来なら、ここで果てるはずの命であった。

 しかし彼には【魅了━ファスツィナツィオン━】が別方向に作用した。


「……赦さない……」


 愛が憎しみに変わった。

 リケイカインは逃走した。

 その際、卵をひとつ盗んだ。


「ぼく一人じゃ皇帝を倒せない」


 理由はそれだけではなかった。


「ぼくだけが不幸なんて嫌だ。ぼくと同じ悲しみを持つ兄弟がほしい」


     *     *


 リケイカインは人里を巡った。

 その中で妖怪と取引をしている宗教団体が存在することに気づいた。

 追跡すると、大工部家に辿り着いた。


「妖怪と取引してるなら、こいつらも敵。やっつけちゃお!」

「それは愉快な話ぞ」


 悪巧みを聞かれて、リケイカインの顔からニヤニヤが消えた。

 木の枝に座るのは一人の少年。

 口封じのために殺すべきだったが、少年の風体が気にかかった。


「どうしてそんなにボロボロなの?」


 少年の身体中に包帯が巻かれている。


「そちは妖怪か?」

「質問に答えてよ」

「翼があるのはよいな。余はどこか遠くに飛んで行きたいぞ。せめて高いところに登れば、天に手が届くかと思ったが無理だった。そちは空の果てに何があるか見たか?」

「空の上にはいいところなんてないよ」


 少年は溜め息を漏らす。


「理想郷はどこにもないのか」


 リケイカインは飛んで少年に近づく。


「お前、大工部家の人間? だったら殺さないと。妖怪と仲良しなやつらは敵!」

「どうぞ」

「怖くないの?」

「何事も諦めが肝心ぞ。そちは間違っていない。余はもうすぐ蚊虻教の救祖の役を担わされるであろう。親の言いなりに働かされるのは嫌だが、余は抵抗などしない。疲れたくないから」

「……本音は?」


 なぜだかリケイカインはドキドキしていた。

 少年は傷だらけの顔に笑みを浮かべて、


「妖怪のそちになら、しがらみなく話せる。余は……本当は……自由になりたい」

「マギ様~、どこっすか~? そろそろ実験の時間っすよ!」


 誰かの声がする。

 リケイカインは慌てながら卵を少年に押し付けた。


「いつか会いに来る!」

「……」

「これって、きっと運命♡」

「この卵は……」

「妖怪の卵。中身を浴びたら妖怪になれるよ。鳥みたいな妖怪に。空を飛べる。自由になれる」

「……余は……」

「自分で選んで」


     *     *


 話を終えてリケイカインはマギの頬を撫でる。


「感動の再会をするつもりだったのに、マギってばバカになっちゃって、ぼくのこと忘れてるんだもん。悲しかったなぁ。でも、よかった♡ だって、ほら、ぼくたち同じになれたよ♡」


 しかしマギは返事をするどころではない。

 激痛に苦しんでいる。


「マギは実験を受けた影響で変身がゆっくりだね。でも、もう【魅了━ファスツィナツィオン━】は使えてる。もう一息!」

「……余は……能力など使っていないぞ……」

「マギはバカなんだから殺されててもおかしくないのに、まだ生きてるでしょ。能力で自分を愛させてるからじゃん。さ、もうひとつの能力を発動させて。一緒にやろ♡」

「……何を?」

「妖怪退治♡」

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