表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
第6章 〝ネクロポリス〟死の都
56/111

第056話 sugeeeeee

 田村町は毎日晴れた。


「ここのどこが理想郷ぞ?」


 マギは毎日リケイカインをいびった。


「マギ、ごはん食べて機嫌なおして♡」

「また白米だけではないか! おかずは?」

「ないってさ」

「えぇい、もうこんなところ出て行くぞ」


 食っちゃ寝の生活を手に入れたはいいものの、内容は決して満足のいくものではなかった。

 時々気晴らしに家事の手伝いを試みるが、


「そんなに薪をくべたら家事になっちゃうよ!」

「この洗い物、全然汚れが取れてねぇぞ!」

「寝かしつけた赤ちゃんが起きちゃった!」

「左の袖と右の袖の長さが全然違う!」

「こいつすげえぇええぇぇぇ! 常識ってものを何も知らねぇ!」


 ことごとく失敗して町民を呆れさせていた。


     *     *


「何か用か? ヘンテコ妖怪」


 居場所もなければ仕事もないマギ。

 穴掘り作業を続けるキビのもとに来たが歓迎はされなかった。


「余をもてなせ」

「偉そうにしてんじゃねぇよ。聞いたぞ。お前失敗ばっかして町のみんなに迷惑かけまくってんだってな」

「……」

「尻拭いは黒い方にやらせて、自分は暇潰しか?」


 図星だった。

 言い返さないマギに、キビは追撃。


「さっさと消えろよ、無能妖怪。人間の敵。キモイんだよ。穀潰し。バーカ」


 平民にコケにされて、マギは黙ってはいられない。


「穴を掘ったら雨が降るなんて迷信ぞ。そちのしていることはまったくの無駄。余の方がよっぽど民の役に立っておるわ」

「んなことわかってんだよ」

「!?」

「誰だって苦しい時にはすがるものがほしいんだよ。俺が穴を掘ってる間は、雨が降るかもしれないって期待できるだろ。わくわくするだろ。ちょっとだけ不安な気持ちがまぎれる。それだけで意味は十分あるんだよ。わかったか、バカ」


 正論をお見舞いされて、マギは絶句。

 キビは手を止めて汗をぬぐうと、


「でも本当の本当はもっとつまんねーことのためなんだ」

「……?」

「とーちゃんとかーちゃん、それに町長のじーちゃんに褒められたいってだけ」


 照れ臭そうに笑うキビを見て、マギは少し元気になった。


     *     *


 一方、町でも雨乞いの準備が進められていた。


「リケイカインちゃん、これのお手伝いも頼める?」

「あい!」


 手先の器用なリケイカインはあちこちから引っ張りだこ。

 すっかり町民からの信頼を獲得していた。


「この羊毛を使って衣装を作るの。雲みたいなデザインね」


 雨乞いの儀式当日にキビに着せるための服であった。


「余を呼んだか?」

「呼んでないよ」


 暇を持て余すマギが登場。

 寝ていていいから何もしないでくれと追い払われた。

 あてもなくさまよっていると、見覚えのある顔が視界に入った。


「キビに似ておる」


 話しかけられた女性はにっこり微笑み、


「あの子のかーちゃんだからね」

「むぅ、道理で。キビが会いたがっておったぞ」

「……そう」

「会いに行かないのか?」

「意味ないからね。何かほしいものがあるとか言ってた?」

「いや、別に……ただ、ちょっと寂しそうだったぞ」


 キビの母親の顔がひきつる。

 しかし笑顔を崩さずに、


「仕方ないねぇ。じゃあ後でとーちゃんと一緒に行くかぁ」


     *     *


「作業は順調?」


 一組の男女がキビを訪ねた。


「とーちゃん! かーちゃん!」


 キビの表情が明るくなる。


「ほら、夕飯を持ってきてやったぞ」

「こんなに食っていいのか?」

「もちろん。お前は大事な仕事をしてるんだからな」

「へへっ」


 久々に一家団欒のひととき。

 マギは遠くの木陰から見つめる。


「ところで、体調はどうだ? 風邪ひいたりしてないか?」

「めっちゃ元気だよ!」

「そりゃよかった。お前に倒れられたら雨乞いが延期になる。ペースを落とさずにしっかりやれよ」

「……うん!」


 キビは顔に笑いをへばりつかせる。

 両親によく似ていた。


 銚子の形状をした穴はすでに大きい。

 キビを縦にしても横にしてもすっぽり収まるほどである。

 完成の日は近い。


「……?」


 マギは違和感に包まれた。


 ――胸が苦しいぞ。


 膝をつく。

 気づかれないように、声は押し殺す。


「マギ、早くしてね」

「!」


 いつの間にか、すぐそばにリケイカインが立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ