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白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
第6章 〝ネクロポリス〟死の都
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第054話 また追放されるマギ

 秋と言えば、


「食欲ぞ」


 大工部マギは毎日たらふく食べていた。


「花の都の料理は美味ぞ」


 瀬良寺サンの実家に居候し始めてから一ヶ月以上が経過していた。

 その間、まるで進歩はない。

 一日中ぐーたら。

 食っちゃ寝の自堕落な生活を送っていた。


「読書の秋はどうです?」


 瀬良寺ビタリアが軽蔑の目を向ける。


「歴史や政治、経済に妖怪などなど、公爵として身に付けておくべき知識は多岐にわたります」

「気が乗らないぞ」

「では剣術はどうです? そのだらしない腹部を引き締めてはいかがですか?」

「お腹がかわいそうではないか」

「マギ様!」


 ビタリアは食事中のマギを引きずる。

 向かったのは道場。


「今からここを掃除していただきます!」

「余は公爵ぞ」

「武士たる者、あらゆることを自力でこなせなくてはなりません。戦場に召し使いを連れていけますか? 掃除、炊事、洗濯。一人でできるようになって、ようやく武士として一人前なのです。はぁ……私としたことが、これまであなたを甘やかしすぎました。これからはみっちりしごきますからね」

「眠くなってきた」

「言うことを聞かなければ、晩御飯は抜きにします」

「うぅ」


 道場に一人取り残されたマギ。

 最初こそ大人しく床を拭いていたが、ビタリアがいなくなったのを確認すると、手を叩いた。


「出てこい」

「マギ♡」


 全速力で飛んできたのはリケイカイン。


「掃除」

「あい♡」


 相変わらずリケイカインはマギのためなら何でもした。

 マギは横になる。

 楽しい夢を見るつもりだった。


 ――夢の中でしか会えないのだから。


 マギが眠りについた瞬間。


「裏切り者には死あるのみ」


 余る猿がリケイカインを襲撃した。

 単純な物理的攻撃。

 もちろんリケイカインの硬い皮膚には通用しない。

 一方でリケイカインの黒鳥による物理的攻撃も余る猿には効かない。


「忘れてた。こいつ、増えるんだ」


 傷口から余る猿がわらわらと溢れてくる。

 固有能力【増殖━フェアメーレン━】。


「妖怪から人間に寝返るなど愚の骨頂。生かしてはおけない」


 増えた余る猿がめったやたらに攻撃を繰り出す。

 せっかく掃除した道場が汚れる。


「むぅ……母上……」


 マギは夢から覚めない。


「マギ、かわいい♡ こんなやつ、すぐにやっつけてあげるからね♡」

「今度こそ殺す。貴様に明日はない」


 余る猿に敵意を向けられても、リケイカインはへっちゃら。


「食べてやっつけるのもいいけど、従わせちゃおっかな。床が血で汚れたら掃除が大変だし」

「貴様の御父上直々のご命令だ。容易くは屈することなど無い」

「近くにいるの?」


 リケイカインは黒鳥に余る猿をすべて食べさせた。

 容易い食事であった。


「何事です!?」


 騒ぎを聞き付けたビタリアが到着。

 目の当たりにしたのは、荒れ果てた道場とすやすやのマギ。


「晩御飯抜きでは済ませられませんね」


     *     *


「じゃあ追放ね」


 城にてマギは藩主・サソリから処分を言い渡された。


「余は公爵ぞ!」

「黙りなさい、ドチビ」


 応接室にはマギ、リケイカイン、ビタリアの他に、サソリとルドルフがいた。

 5名中4名が妖怪である。

 ルドルフは卵から孵ってすくすくと育っている子供たちをあやしながら、


「御所藩のために頑張ってくれたから、少しくらいお目こぼししてあげてもいいんじゃなぁい?」


 しかし即座にサソリは、


「甘やかすのダメ」

「でも、おかげでお世継ぎも生まれたよぉ」

「子供たちが生まれたのは、ルドルフちゃんが卵を産んでくれたからでしょ」

「卵に命を吹き込んでくれたのはサソリ様だよねぇ」

「ふふっ。あなたの謙虚なところ尊敬してる」

「ぼくもサソリ様のこと敬愛してるぅ」


 かつての熱愛はないが、代わりに固い絆で結ばれている2人であった。


「何にしろ、あんた達の存在はうちにとって厄介になりつつあんのね。申し訳ないけど追放だから。しばらく戻って来ちゃダメだよ。わかった?」

「余はまだ元服して間もない子供ぞ」

「元服してんなら大人でしょうが! ちょっとは苦労して成長してね!」


 処分確定。

 ビタリアが手をついて、


「ご英断、心より感謝します」


     *     *


 かくして再び宿無しとなったマギ。

 今度のお供はリケイカイン。


「頼りないぞ」

「マギ、これからどこ行く?」

「どこでもよい。食っちゃ寝が許されるところであれば。あぁ~、そのような理想郷がどこかにないものか」

「ぼく、知ってる」

「むぅ?」

「理想郷に連れてってあげる」

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