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白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
第5章 〝アンソポリス〟花の都
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第053話 人間なんて

「そんじゃ復興事業の経過報告をお願いね」


 あれから数日。

 妖怪と化した人々が混乱して行なった家屋の破壊。

 状況を飲み込めない人々による妖怪討伐。

 蚊虻教に対する暴動。

 混乱に乗じた犯罪事件。

 混沌からの回復に、新体制の御所藩が挑んだ。


「瓦礫の撤去はほぼ完了れあります」


 ここは城内の会議室。

 元気よく発言するのはサクラ。

 藩主・サソリの号令により、御所藩における被差別身分は撤廃された。


「サクラちゃん、すごーい!」


 サソリが幼い復興隊長をべた褒め。


「ところで悪いやつらにいじめられてない? もう差別とかない?」

「大丈夫れあります。妖怪がいっぱいなのれ、身分を気にする人がいないれあります」

「よかったー。で、妖怪になっちゃった人たちは大人しくさせられた?」


 サソリに話を振られたのは瀬良寺。


「妖怪になった本人も、家族が妖怪になった人々も、徐々に落ち着きを取り戻しています。マギとリケイカインの存在も大きいようです。彼らに御所藩の子供のふりをさせました。妖怪になったにもかかわらず楽しく過ごす様子は、特に大人たちの心に響いております」

「妖怪になった人たちは暴れてない?」

「棍棒を用いた厳しい指導を繰り返した結果、問題を起こす者はいなくなりました」

「怖……」


 結論としては、復興の目処がそれなりにたったということ。

 すかさずビタリアが、


「サソリ様、そろそろ息子を江戸に発たせてくださいませ」

「いいよー」


 サソリは軽いノリで返事をする。


「むしろ今までありがとうね。おかげですっごく助かった」

「公儀祓除人として当然のことをしたまでです」


 瀬良寺は謙虚に答えた。


「これからは将軍様の護衛かー。おめでとう。御所藩主の誇りだよ、瀬良寺ちゃんは」


     *     *


「誇りを持って生きなさい」


 出立の日を迎えた瀬良寺。

 見送る母からはいつも通りの厳しさ。


「復讐はむしろ誇りを奪います。私自身も愚かでした。もうあなたは家業である将軍様の護衛にだけ集中なさい。父上が果たせなかった夢を息子が果たす。これが人の道です」

「心得ております」

「江戸は都会です」

「は?」

「悪しき心を持つ者も多いでしょう」

「何のことです?」

「変な女に騙されないように。あなたの結婚相手は私が選びます」


 思わぬ提案に瀬良寺は頭を抱えた。


 ――いっそ本当のことをぶちまけてみようか。


 ふと頭をよぎる憎悪をすぐに打ち消す。

 サソリとルドルフの愛。

 神葉の父への想い。

 それらに触れて、わかったことがある。


 ――父上は自分を圧し殺したんじゃない。父上なりに母上への愛を全うしようとしたんだ。今なら父上を誇りに思える。


「母上、お体にお気をつけて」


 ただ健康だけを願うことにした。

 それからマギとリケイカインを見て、


「お前たちはやはりここに残るのか?」

「余には行く宛もしたいこともないぞ。もうこの体はきっと元には戻らないであろうから」

「リケイカインは? ……聞くまでもないか」


 マギに密着してどつかれるリケイカイン。

 見慣れた光景に瀬良寺は微笑む。


「楽しい旅だった。色々と助けられてばかりだったな。いつかまた会えたら、今度は私が助けになるよ」


 瀬良寺は旅立った。


「……暇ぞ……」

「男子たる者、国家のために死ぬべきです」


 虚無なマギに対し、ビタリアから強い思想が繰り出される。


「マギ、好きぃ♡」


 リケイカインはマギさえいれば幸せそうだ。

 だがビタリアがそれを許さない。


「男同士で、なんてこと!」


 リケイカインの硬い体を、ビタリアがぽかぽか殴る。


「こんな暮らしも悪くないぞ」


 目を細めるマギ。

 冷たい風が吹く。

 秋が近い。

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