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白鳥サノバビッチ  作者: 砂井ぱー
第5章 〝アンソポリス〟花の都
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第047話 辿り着いた答え

 サソリと瀬良寺が階段を駆け上がる。


「二手にわかれましょう」


 サソリは一人で片っ端から戸を開けていく。


「妻ちゃん、どこー!? ルドルフー! バカチビー!」

「無礼者!」


 広間には殿様と数名の家臣が勢揃いしていた。

 どことなくサソリに似ている殿様は、


「私を誰だと思っておる! 御所藩主・風詠サソリであるぞ!」

「へー。そりゃ失礼しました、藩主様」

「あっ……ご本人」


 偽サソリは慌てた。

 本人と鉢合わせた場合にどうするかは考えていなかった。

 家臣たちは正真正銘、本物。

 彼らもまた行方不明になっていた藩主の帰還に驚く。


「サソリ様、よくぞご無事で……」

「どの口で言うの! 蚊虻教に洗脳されて、サソリを殺そうと企んで、サソリの偽物を用意したくせに!」

「洗脳ではありません。我々は心から蚊虻教の教義に感服しておるのでございます」

「もっとひどいじゃん!」


 家臣一同は熱心に蚊虻教の良さをまくしたてる。

 曰く、蚊虻教には理想があるだの、人類と妖怪の種を超えた平等が実現されるだの。


「サソリにだって理想があるよ。穢多を解放して人類平等を実現したいもんね」

「とんでもない愚策です! ……畏れ多くも申し上げますと、サソリ様ではお世継ぎすらままなりません。我々としては蚊虻教こそ我が藩にふさわしいリーダーかと」

「あんたたちさ、ただ保身に走ってるだけじゃない?」


 決裂。


 ――どうせこの人たちとは分かり合えないって思ってたけどね。


 それに何よりサソリの怒りは偽藩主に向けられていた。


「似てないっつーの! サソリはもっと美人だもん!」


 サソリは髪飾りを外す。

 形状が変わり、武器になる。

 まずは偽藩主を、それから手当たり次第に家臣を殺害していく。


「サソリ様、ご乱心か! ただでは済みませぬぞ!」


 しかしサソリは慌てずに、


「蚊虻教に殺されたってことにすればいいの」

「お待ちを! 話せばわかる……」

「ごめんね? サソリには、これ以外の解決方法は思い付かない」


 城が血に染まる。


     *     *


「止まってください」


 一方、瀬良寺は突然に声をかけられて驚いた。

 無我夢中で城内を走っているところだった。


「……何者だ……?」


 瀬良寺は棍棒に手をかける。

 相手は重傷を負った人物。

 しかし、なかなかの手練れであると感じられた。


「わたくしめはターマン・ホーマー。公儀祓除人でございます」

「なに?」


 ターマンは手裏剣を飛ばした。

 手裏剣が刺さった床が開く。

 落とし穴だ。

 下には無数の刃がきらめく。


「……感謝する。あなたが引き留めてくれなかったら私は負傷していただろう」


 瀬良寺はまだ警戒を緩めずに、


「申し遅れたが、私も公儀祓除人。瀬良寺サンと申す者」

「存じております。お父上によく似ておられます」

「父上とお知り合いか?」

「……」


 ターマンはうずくまる。

 出血が止まらない。


「ターマン殿、手当てを!」

「それには及びません」

「しかし……」

「書庫をお探しなのではございませんか?」

「どうして、そのことを」

「わけあって蚊虻教に潜入しておりました。書庫までご案内できます。さあ参りましょう。わたくしめの命が尽きる前に」


 必死で使命を全うしようとするターマン。

 その姿勢に、瀬良寺は感銘を受けた。


「あなたを傷つけた蚊虻教の輩には報いを受けさせましょう」


 ターマンは苦笑した。


     *     *


 やがてたどりついた書庫で、瀬良寺は父の報告書を探す。

 そこに、父を殺した者の手がかりがあるかもしれない。

 藁にもすがる想い。


「……〝公儀祓除人〟ギューデン・カミル……?」


 ふと目についた一冊の本。

 見覚えのない姓と見覚えのある名前。


「あなたのお父上の旧姓でございます」

「……ターマン殿、あなたはなぜ私に協力してくれるのですか?」

「……あなたさまとわたくしめは同じでございます」

「それは……」

「本を開いてみてください。カミル様は絵を描くご趣味がございましたから、似顔絵のひとつでも挟まっているでしょう」


 瀬良寺は報告書を開いた。

 そこには、父の描いた似顔絵が。

 描かれているのは、父カミル、母ビタリア、ターマン、そして、よく見知った人物。


「ターマン殿、これは……!」


 聞きたいことがあったが、聞けなかった。

 瀬良寺は頭を下げる。

 ターマンは死んでいた。

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