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白鳥サノバビッチ  作者: えすくん
第5章 〝アンソポリス〟花の都
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第045話 虹

 ルドルフがドジをかましたおかげで、穢多2人が解放された。

 代わりにルドルフは呑し友駁(のましともぶち)に食べられそうな状況。


「あんたたちは逃げなさい!」


 サソリは髪飾りをほどく。

 刀に変形。

 隠し武器であった。


「おらー!」


 しかし呑し友駁には刺さらない。


「サソリ様、助けてくださいぃ」

「情けない声、出してんじゃないよ、バカチビ! あんたもちょっとは頑張りなさいよ! ……あれ?」


 なんだかんだサソリも呑し友駁に捕らえられてしまった。

 ツノから流れ出るぬるぬるの体液。

 獲物を酩酊させる効果がある。


「わあぁ、もうダメだぁ」


 ルドルフは泣く。


「しっかりしなさい!」

「でも……なんだか、だんだん眠たくなってきちゃいましたぁ。ぼく、もう死んじゃうんだと思いますぅ」

「あんたは最初から眠そうだったでしょ!」

「……お腹空いた……」

「……ねぇ?」

「……」

「それが最期の言葉!!? もうちょっとまともな言葉を言い残しなよ!!」

「……あっ」


 言われてみれば確かにもっと大事なことを言い残すべきであった。

 ルドルフはポケットをまさぐる。


「サソリ様、これ渡すの忘れてましたぁ」


 穢多のマスク。

 黒くて硬くて先端が尖っている。

 酩酊しているルドルフはぐらぐら体を揺らして、


「わぁ」


 偶然だった。

 ルドルフはマスクを呑し友駁の口の中に押し込んでしまう。


「ちょっと待って。こいつ、痛がってない!?」

「……」

「寝るな!」


 サソリは体に力を込める。

 妖怪に捕まって身動きが取りづらい上、酩酊し始めている。

 これが最後のチャンスかもしれない。

 そう思いながら髪飾りの武器を呑し友駁の口の中に突き刺した。


「思った通り! あんたも手伝ってよ!」

「……え?」

「サソリの手を押して! 違う! もっと強く!」

「う~ん。とやぁ~!」


 呑し友駁が苦しむ。

 やがて痛みに耐えかねて、サソリとルドルフを食べるどころではなくなる。

 2人はツノから解放された。


「やった……」


 退治するまでには至らなかったが撃退に成功。

 呑し友駁は這って逃げて行く。


「あんたのおかげだよ、バカチビ……」

「えへへぇ」

「謙遜しろよ」

「あっ」

「え? ……あっ」


 呑し友駁のぬるぬる体液にまみれて、2人は抱擁していた。

 男同士。

 ついうっかりサソリは硬くしてしまっていた。


「いや、これはね、違うの。別にそういうのじゃなくて……あんたも硬くなってない?」

「興奮しちゃうんだもぉん」


 恥じらうルドルフを見つめるサソリ。


「もしかして、あんたも……」


 言いかけたところで、どよめきが聞こえてきた。

 洞窟からだ。


「どうしたの!? また妖怪!?」


 駆けつけたサソリ。

 しかし騒ぎの正体は、


「生まれた!」


 さっきサソリ達が救出した女性が出産したのだ。

 赤ん坊の産声が響く。

 サソリは悲しげに微笑む。


「やっぱ、これが普通よねー」


 誰にというわけでもなく呟く。


「サソリも誰かと結婚して子供を作んなきゃいけないか」

「自分らしく生きないんですかぁ?」


 とろとろ走ってきたルドルフが問いかける。

 その呑気さにサソリは苛立ち、


「サソリは藩主なの! 後世に血を繋げてかなきゃいけないの!」

「厳しくしないでくださぁい」

「甘えるんじゃないの! このこの!」

「一番大事なのは愛じゃないですかぁ。愛はいつか実を結びますよぉ。ほら、サソリ様の優しさが、あの子を生かしたんですよぉ」


 父親になった穢多が近づく。


「サソリ様、畏れ多くも、どうか我が子の名付け親になっていただきたいであります」


 風が吹く。

 どこからか桜の花びらが舞ってきた。

 雨が晴れて、虹がかかる。


     *     *


 時間を現在に戻す。

 闇夜の中をマギたちは進む。

 目指すは城。


 ――待っててね、妻ちゃん。サソリが絶対助けてあげる。


 サソリは最愛の人を思い浮かべる。

 しかし城門に刺客。


「信者だけじゃない! 城勤めの武士まで私たちを邪魔する気だ!」


 瀬良寺が舌打ちする。

 数十人の規模だった。

 相手をするには骨が折れる。


「なるべく、その人たちを傷つけないようにしてちょうだいね! 本当に悪いのは上層部のやつらなんだから!」


 それが藩主の意向。


「ならば、ここは私にお任せを!」


 名乗りをあげたのはビタリア。

 剣術師範を務めているだけあって強い。

 更にサクラが穢多の仲間を笛で呼ぶ。


「サソリ様、お気をるけれ!」

「ありがとうね、サクラちゃん!」


 いざ、城の中へ。

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