第101話 久しぶりだけど初めまして
――城内に入る必要があるな。
大江戸城が人間を蹂躙し妖怪を擁護するという想定外。
城の内部では何が起こっているのか?
妖怪によって乗っ取られているのか?
確かめなければならなかった。
「ひいぃ! デカキモ妖怪!」
ところが侵入した城の中は至って普通。
人間の姿しか見当たらないし、マギは気味悪がられる。
「そち、この城を動かしているのが誰なのか知ってるか?」
偶然出会った人間に質問してみた。
「生意気な口を聞くな、妖怪め! 私は貴族院議長だぞ!」
「余は妖怪皇帝ぞ!」
マギは【魅了━ファスツィナツィオン━】を発動。
すっかりマギに惚れ込んだ議長は素直にマギを操縦室まで案内してくれた。
「ここから先は危険ゆえ、そちは立ち去れ」
「ありがとうございます!」
そうしてマギは壁を破壊し、乱暴に突入したのだ。
如何なる脅威が待ち受けていようと決して屈するまいという気概をもって。
しかし目の当たりにしたのは意外なメンツだった。
「……これはどういう状況ぞ?」
沈黙。
驚いているのはマギだけではなかったからだ。
中にはマギを知らない者さえいる。
やや気まずそうに神葉が、
「えー……こちらマギ様っす。……あの……松山藩主の息子で一応公爵で……まあ、そんな感じの方っすね」
「嘘をおっしゃい!」
にわかには信じられないのがビタリア。
「この醜い白鳥のどこが公爵様ですか!」
「余は妖怪皇帝ぞ!」
「この空気を読まない偉そうな性格……まさか本当に公爵様!?」
「神葉、状況を説明しろ」
神葉は面倒くさそうに、
「色々ありすぎって感じなんで、説明したところでマギ様にはまず間違いなく理解できないっすよ」
「簡易的で構わないぞ。余が知りたいことは混乱の原因。なにゆえに人間の城が人間を襲っているのか。妖怪退治の障害物は何か。さあ話せ」
「……ちょっと待ってくださいっす。なんかマギ様賢くないっすか? もしかして戻っちゃいました?」
リケイカインもビタリアもうんうん頷く。
明らかにマギの知能が向上している。
「人格なら完全に取り戻したぞ」
「あちゃー」
神葉は顔をしかめる。
「せっかくバカになれてたのに、もったいないっす!」
「マギ、もうよい」
先代皇帝が会話を引き継ぐ。
「吾輩は過ちを犯していたようである。将軍閣下は人間を滅ぼそうと考えておられる。おっしゃるに、人間に愛はない、と。吾輩は再考せねばならぬ。果たして如何にすれば理想の世界へと達することができるかを」
「……? 将軍はどこぞ?」
「こちらにおられる」
「瀬良寺ではないか」
将軍は微笑みながら挨拶をする。
「この体はみが奪ったのじゃ。最早、瀬良寺サンの人格は無いと思え」
「……大江戸城を動かしているのはそちか?」
「そうじゃ」
「殺す!」
くちばしを将軍に向かって伸ばすマギ。
遮ったのは神葉とリケイカインだった。
「何するんすか! あんた正気っすか!?」
「意識は将軍だけど体は瀬良寺のなんだよ!?」
かつて旅を共にした2人に文句をつけられてもマギは引かない。
「余は妖怪皇帝ぞ! 戦争の続行をここに宣言する! 必ずや一切の妖怪を滅ぼしてやる!」
「あんたも妖怪じゃないっすか!」
「承知の上ぞ」
「あんた、まさか……」
マギと神葉の会話の途中だが、将軍は城を操作する。
大江戸城は外見のみならず内部までもが変形できる仕組みとなっていた。
今や将軍にとって急務は先代皇帝との語らい。
邪魔する勢力は排除するのみである。
「消え失せるのじゃ。戦いたい者どもは勝手に戦え。みに構わないでたも」
将軍が警告するとともに城が変化を起こす。
床がせりあがり、壁が彼らを分断する。
強制的にそれぞれ別の空間へと移動させられる。
「さて」
ふたりだけになった空間で将軍は先代皇帝に問いかける。
「みと子作りせぬか?」




