5、 アストラ魔法学校
しばらく歩いていると、とても大きな湖の中心に建物が見えてくる。
「見えたきたな、アストラだ」
この地域は元々巨大な火山だったらしく、大昔の噴火によってできたカルデラの中心に城が建てられた。しかし段々と水が溜まってきて、それは城を飲み込むほど大きなカルデラ湖になってしまった。浸水を防ぐため上へ上へと増築を続けた結果、今のアストラ魔法学校ができたという。研究によると今見えているのは城全体の10分の1にも満たないらしい。
湖のほとりまで来ると1人の女性が立っていた。
70代くらいで黒を中心としたローブを身にまとい、白髪を頭の後ろで束ねている魔法使いだ。
「ごきげんよう。失礼ですがアストラの教員の方ですか?」
「ごきげんよう、私はノバ・スミスと言います。アストラの教師です。どうやら生徒のようですね」
スミス先生と言うらしい。
「おかしいですね。生徒の到着にはまだ早いと思ったのですが、それも2人だけ、何かあったのですか?」
「実は……」
特に隠すこともないので汽車での出来事をそのまま話す。
「それは本当ですか?すぐに騎士団に報告しなければ、お二方、お名前は?」
「アラン・ウェイドです」
「アルバート・クランドールです」
「わかりました。ついてきてください」
そういうとスミス先生は湖の方を向き、杖を一振する。
すると湖のそこから大きな音を立てながらたくさんの岩が浮かび上がってきて校舎まで続く長い橋と大きな門ができた。
「おー」
門と橋には細かい装飾まで施されており素直に感心した。
アルバートも声こそ出ていないが相当驚いているようだ。
「さっ色々と話すことがありますが、とりあえず、ようこそアストラへ」
そういうと門が開き、3人は校内へ入っていく。
スミス先生について行くと、とある部屋に案内され、しばらくすると騎士団の男性が来て事情を聞かれた。
騎士団というのは犯罪を取り締まる機関であり、魔法省とは別の組織である。
このカークランドがまだ王国だった頃から存在し、魔法省と協力しながらも、国の秩序を守っている。だが仲が良いという訳ではなく、割とバチバチな関係である。
そして俺は起こった出来事全てを話した。
本を探していたというと騎士団の男はぴくりと反応した。
「そのマテウスという男が持っていた本はどんな見た目だった?」
これは…
「真っ黒な本でしたね」
「なるほど、最後にひとつ、本当に持っていないんだね?それに似た本を」
男は目を真っ直ぐに見てくる。
「はい、持ってないですね」
これは騎士団も黒だな…
本のことを話さない訳には行かなかった。例えば騎士団がこの話を魔法省に持ちかけた時、本の話が出てこなければ、俺が本のことを伝えなかった。つまり隠していることがあるのでは?となりかねないからである。
一通り話を聞いた騎士団の男は正式に調査を始めるといい帰って行った。
「大丈夫ですよ。このアストラにいる限り私たちが守ります」
スミス先生は優しく微笑みそう声をかけてくれた。
しばらくすると他の生徒も学校へ着いたらしく。
これから入学式が始まる。
俺とアルバートも他の生徒達と合流し会場へと向かった。
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