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第67話 真珠色のすごい騎士



「ねーたは、まじゅの、ちゅごいきち!」


 わたしがそう言った途端、その場がパアーっとまばゆく輝いた。

 その場っていうか、正確にはわたしを抱っこしたすすきさんが立っている足元の魔法陣。場所は例の黒玄家の別館だかなんだか、深川少年との儀式に失敗したのと同じところだけど、今回は一度で成功したらしい。


 複雑な模様の魔法陣も輝いてるけど、それ以上にわたしを抱っこしたすすきさんの全身が光を帯びている。

 キラキラつややかな白だけど、虹色の輝きも秘めた……ああ、これって真珠色だね。パールホワイト、白真珠のように綺麗にきらめく白色の光。

 あれ? わたしの手とか身体も光ってる? あ、クアアもピカピカ! 光るぷにぷに紅白パンダ可愛い!


「すべてを己の色に染め上げる絶対的な真珠色の魔力か。質も量もすさまじいが、この純粋さは……αδάμας(アダマス)、決して侵されることのない不屈の金剛、真珠色のダイヤモンドだな。スライムが喜んで平伏して、主の望むがままの変化を受け入れるわけだ。テイムより結びつきの弱い守護騎士の絆でもこれだけ相手の魔力に働きかけられるとは……だが、これで薄の魔力も相当に強化された。テイマーは無理にせよ、他のスキルが目覚めた可能性もあるな」


「こうして可視化すると真珠ちゃんの魔力ってほんとにきれいな真珠色なんだねぇ。うん、これは風花(かざはな)の白じゃなくて、パールホワイトの白だから、姉さんはほんとにすごかったんだね」


 つぶやく憲法と竜胆叔父様。

 会場設営はもちろん憲法だけど、前回より見物人がめちゃくちゃ多い。前回モニター越しだった黒玄家ホワイト家のみんながこの場にいるし、月白お兄様も見たいっていうから日曜開催になったしね。


「真珠、すっごくきれい! でも、すごい騎士(ちゅごいきち)って、真珠はほんとに可愛いね。僕も真珠のすごい騎士になろうかなぁ」


 というか、例のウエディングフォトツアーには月白お兄様も全日程参加した。

 ダンジョン内には入らなかったけど、地上に取り残されたミルクちゃんを遊んであげたり、すすきさんがいなくて夜泣きするわたしをなだめたりって大忙し!

 なので、学校はオンライン登校という名のほぼさぼり。いや、月白お兄様、小学二年生相応のお勉強はとっくに終わってるし、世界を旅して見聞を広めるほうが得るもの多いもんね。わたしは旅のあいだ、ねーたねーた泣いて退化したけど……。


 でも、守護騎士はすすきさんだけでいい。月白お兄様はだいじな家族、『すごいお兄様』って存在!

 なのに、外野がわけわかんないこと言ってるし……。


「すっげ! オレ、守護騎士じゃなくて、姫にテイムされたいっす! なんっすかこのキラキラ! めっちゃすげぇっす!」

「あー、なる。このチビが最強護符ってわけか。憲法、このチビ入れるキャリーケース作れ。深川が背負って運ぶには背負子か?」


 テイムされたい深川少年も微妙だけど、宵司レッドカード! わたしダンジョン持ち運び禁止!

 即座に白絹お祖母様がぴしゃりと諫める。


「馬鹿おっしゃい。これは真珠がそれだけ薄を大切に思っているからこその、大掛かりな祝福魔法になったのよ。当分おまえは真珠に接近禁止ね。薄によく頼んでおきましょう」

「そうですね。これでやっと落ち着きましたから、真珠お嬢様が三歳になられるくらいまでは旅行も移動もなしにしましょう。毎日規則正しい生活を心がけないと成長に悪いですし、この三カ月で真珠お嬢様もミルクお嬢様も三年分は泣きましたからね」


 うんうん、ばあやはわたしの本物の育てのお母さん! わたしファーストなわたし最優先!


 産みのお母さんの沙華さんも闇王パパとこの場にいるけど、ミルクちゃんは不参加。たぶん今ごろ温水プールで楽しく遊んでるはず。

 この三カ月、甘やかされまくったわたしは赤ちゃん返りな甘え癖がついたけど、ミルクちゃんはベビーシッターや護衛の人々と楽しく遊べるようになった。ごはんのときとか、夜寝る前は母親が必要だけど、昼間は母親より身体を動かして思う存分遊ぶ方を優先するって。


 まあ、ダンレン!のヒロインってダンジョンの数だけ恋するんだもんね。社交性めっちゃ高そう!

 だけど、すっかり話の変わったこのダントラ!世界は、沙華さんがヒロインって気もする。


「真珠ちゃん、すごいね! テイマーかぁ。あたしもダンジョンでモンスターを倒せばなにかのスキルが手に入るのかな? ねえ、闇王様、今度、試しにどこかのダンジョンに連れてってくれる?」


 闇王パパに腕をからめて笑顔で見上げる沙華さん。すっかり距離感がラブラブ夫婦! 並んで立っているのが自然な感じ!

 実際、沙華さん効果すごくてね。この三カ月で闇王パパ、見た目が十歳以上若返ったし、視線が甘い。まさしく恋に落ちた魔王!

 だけど、沙華さんのスキルに関してはかなり問題があったらしい。


「沙華、きみは真珠同様、幼い頃スキル覚醒していたようだ。きみの身体を守ってくれるスキルだから、ダンジョンで戦うのには向いていないし、きみのことは私が守るから気にしなくていい」

「え? あたしの身体を守るって、あの、あたしのスキルってなに?」


 後日、憲法と竜胆叔父様が魔道具作りで話し合ってるのを小耳に挟んだところ、沙華さんはサキュバススキルを覚醒させてしまっていたらしい。ダンジョンで冒険してなくても、幼い頃の性虐待がね……。

 先天的に魔力の多かった沙華さんは魔力の多い大人との濃厚接触から未熟な肉体を守るために、相手の魔力を吸収して身体強化できるスキルに目覚めていた。だからこそ感染症にかかることなく健康でいられたし、自分より魔力の少ない男性の子供を妊娠せずにも済んだんだろうって。


 なんかもうなんだかなーって感じだけど、多少なりとも女性に対する態度を反省したホワイト家の男性陣は、ありあまるお金で弱い立場の女性や子供への支援団体を設立することにしたらしい。

 黒玄家は白絹お祖母様が各方面での慈善団体を設立済みだけど、だから相談があるとかなんとか口実に、フランシスおじいちゃん、すっかり黒玄家に居候してるし……。


「おおっ! なんと心が洗われる景色だ! すばらしい! どんなモンスターを前にしても死など恐れたことはなかったが、今この歳になってこれほどまでにもっと長生きしたいと願うことになるとは……せめて真珠の成人まで、いや、真珠が沙華と同じように美しい花嫁になる日まで……!」


 あと二十年近く生きる気満々のフランシスおじいちゃんだけではなく、この場にはホワイト家の四兄弟も立ち会っている。


 てかさぁ、旅のあいだに黒玄家の隣にホワイト家のおうちがででんと完成してたんだよね。この世界の建築って魔法でできるから、お金と魔力があれば一カ月で超豪邸が建つみたい。

 で、ホワイト家四兄弟はこれから可能な限りそこに住んで、隣の黒玄家にわたしに会いに来るらしい。闇王パパが建設中の新しい黒玄邸なんて、最初からホワイト家の区画があるとか……。

 ほんっと迷惑! だって、黒玄家も微妙だけどホワイト家四兄弟も全員、人間的に微妙!


「さすがは私のただ一人の姪っ子。わずか一歳にしてこれほど神々しい魔力を放つとは、私の真珠は世界で一番美しく純粋で、そして誰より強い。真珠のモンスターときたら、宵司の火力と憲法の容赦なさを合わせた以上に圧倒的に無慈悲で震えが来るほど残酷だ。ああ、真珠よ、私の女神!」


 竜胆叔父様の話だと一番プライドが高くて性格が陰険な長男、こしあんこぉコンラッドはマゾっぽいし……。


「真珠ほどお姫様が似合う赤ん坊はいないな。そうだ、真珠のために遊園地を作ろう。パールにちなんで海の中の人魚姫の遊びができるようなものにするか。月白の音楽ホールも併設して、クリスタルの城を作ろう。子供の夢の国だ」


 次男のまぜあんこぉマイケルは子供好きだったっぽいけど、言動の端々にピーターパンシンドロームとかペドフェリアとか突っ込みたくなる部分があるし……。


「今もすばらしく可愛らしくて強いが、真珠は大きくなったら沙華のように美しく、宵司のように強い冒険者になるんだな。よし決めた。俺は今すぐ真珠の守護騎士になる! だから憲法、もう一度今の儀式を!」


 三男のリッチあんこぉリチャードは宵司と同じ俺TUEE臭漂ってくるから、接近禁止! 油断したらすぐさまダンジョンに連れていかれそう……。


「どうして宵司からこれほど美しい魔力の娘が……いや、違う。沙華から生まれた娘だからだね。沙華、僕は兄として全面的にきみの味方になりたいから、僕をきみの守護騎士にしてくれないかい?」


 四男のはっぱあんこぉハワードは実は策謀家? わたしが難攻不落だからって、沙華さんに近づこうとしてるし……。


 この四兄弟プラスおじいちゃん、みんなまとめて迷惑だから、真珠ちゃんきっぱりお断り!


「ぐらっぱ、あんこぉ、ごーあえい! ぐばい、ふぉえば!」


 おじいちゃんも伯父さんもあっち行け! さようなら永遠に!

 そんな風にきっぱり拒むのに、この年の年末からホワイト家の人々がクリスマスイブや月白お兄様の誕生日を黒玄家で過ごすのは恒例行事となりました……。

※次回、本編最終話は時間が飛んで三年後!

 だからといって三年後に投稿するつもりはないのですが(笑)

 2分割……いや、3分割で足りる?というくらい文字数が増えていっているので、投稿までもう少々時間をください……。

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