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第16話 赤ちゃんと人形

 お昼前にはDNA鑑定の結果メールが届いて、真珠ちゃんは黒玄宵司との父子確率が99.99パーセントということになりました!


「わたくしとも闇王とも憲法とも血縁関係があるけれど、露茄さんとは関係ないのね。困ったわ。真珠って露茄さんの付けた名前なのよね? でも、いまさら真珠ちゃんを他の名前で呼ぶなんて……」


 白絹お祖母様は結果のメール画面を、そのままタブレットごと闇王伯父様に手渡してため息。

 わたしはばあやに抱っこされて、ミルクごくごく中。さっき闇王伯父様の魔力もらったけど、なんとなく喉乾いちゃった。

 なんか、真珠ちゃんだいぶ離乳食進んでた気がするのに、消化と栄養重視ってことで、寝込んでた一カ月でミルクに逆戻り。魔素強化ミルクってなんでできてるか知らないけど、おいしいよ! 歯固めは闇王伯父様の指をガジガジしたから、ばっちりだしね!


「お祖母様、真珠は真珠でいいと思います。僕の本当の妹も養い親がつけた名前で呼ばれてるだろうし。でも、戸籍は宵司伯父様の娘が真珠って訂正しておいてくださいね。将来、僕と結婚するときに困るから」


 竜胆叔父様のハグから逃れた月白お兄様が、闇王伯父様の横からメールをのぞきこんで口出ししてる。

 でも、ごくごくしてたら、ぽわぽわ、ねむねむ……そういえば、朝のおねむタイムなかったっけ? しばらく寝てたもんね。体力戻ってないみたい。ふぁふぁもにょむにゃ……。


「戸籍はどうにでもなるけど、月白、本当にいいの? 真珠ちゃん、今はものすごくおとなしくて可愛いけど、いずれあの宵司に似てくるかもしれないのよ?」

「そんなの、僕だってあのお父様の息子だし、お母様だってわりと自由な人だったから、お互い様です。むしろ、あのお父様とお母様の本当の娘が小姑でついてくる僕のお嫁さんになれるのは、この世で真珠くらいしかいないと思います」

「それもそうかもしれないわね……そうね、あの憲法と露茄さんの本当の娘がほかにいるのね……。楽しみだけど、どんな子か、ちょっと不安ね……」


 あふぁ、ばあやの抱っこ、ゆらゆらあったか。哺乳瓶バイバイ。マシュマロ感触にお顔うずめちゃおう。


「真珠お嬢様、おねむですか? まだ回復中ですものね。では、真珠お嬢様はお部屋に戻らせていただきますね」

「ええ、お願い。でも、目が覚めたら知らせて。宵司の娘なら来年の雛人形は我が家で準備しなきゃ。去年も今年も縹家からいただいた雛人形でお祝いしたけど、来年は真珠ちゃんに似合う雛人形をきちんと誂えて……」


 にゃんこの日がお誕生日な真珠ちゃんは誕生日から一カ月眠っていたので、目が覚めたらひな祭り終了。

 去年のひな祭りも生後十日くらいだったから、さすがに記憶ないね!

 ていうか、ふつう、一歳の赤ちゃんは覚えてないよね、こういうイベント。

 だから、周囲が楽しんでくれればいいんだけど、白絹お祖母様、来年へむけて声が弾んでる。まあ、真珠ちゃん、白絹お祖母様の血を引く孫ってDNA鑑定で証明されたんだもんね。そりゃ可愛いか。


 だけど、息子の嫁っていうか、真珠ちゃんの実の母親ってけっこう問題ありそうな気もするけど……はっ! やばい! 一年と一カ月前の実母のささやき記憶が薄れてきてる!

 それ以前の前世の記憶なんて、もとから部分的にしか思い出せないし、赤ちゃんの健全な成長にストレスフルな感情は必要ないと思う。

 なんだけど……。




「悪役にも多少は同情の余地があるっていうか、黒玄グループの創業者一族って、ヒロインの実の母親が死んでから、祖母とか伯父とか一族の人間が次々に死んでるんですよね。だから、黒マジョが呪われた子扱いで、自分が虐げられた分、ヒロインをいじめる設定で……」




 おひるね中に久々に見たオタクの夢は、やっぱりイライラ感マックスだった!

 え? これって予言? それとも、えーっと、なんだっけ……あ、フラグ! フラグ回避したってこと?

 露茄お母様はもう亡くなってるけど、お祖母様も伯父様も生きてるよ。でも、これからなにかあるの? えーい、中途半端な記憶ダメダメ! だけど、これ以上、思い出せない。最初から記憶にないし!


 まあでもダンレン原作だと、ヒロインは悪役と取り替えっ子のまま成長するんだよね?

 だけど、今現在、もう真珠ちゃんは取り替えっ子だと判明してて、にもかかわらず黒玄家の一員だってことになったら、とっくに物語が変わってるよね?


 てことは、前世のオタク雑音は無視でOK!

 原作不成立!

 役立たずなオタクの記憶バイバイ!

 ああ、すっきり!


「はい、お洋服を着替えてすっきりしましたね。ちょうど午後のお茶の時間ですから、お祖母様と一緒にミルクとおやつにしましょう。さっそく、雛人形の見本が届き始めましたよ」

「あーい!」


 ばあやに全身介護なお世話してもらって、真珠ちゃんご機嫌で午後のティータイム。

 サンルームでは白絹お祖母様が大量のお人形とともに待ち構えてた。

 古式ゆかしい雛人形はもちろんのこと、洋風ドレスのアレンジおひなさまもあるし、ほのぼの動物キャラクターのお人形も勢ぞろい。ほんの数時間前に手配したとは思えないくらい可愛いお人形がいっぱい!

 だけど、一番可愛いのはスライムクアアな紅白パンダ!


「あらあら、真珠ちゃんはそのパンダが一番好きなのね。じゃあ、パンダの雛人形を……といっても、来年には気が変わってるかもしれないわね。まあ、その時はその時でいいでしょう。真珠ちゃんが遊ぶ用にはパンダのお人形セットを。対外的には伝統的なおひなさまに、黒玄家の家紋入り宝冠をかぶせたものを準備させましょう」

「せっかくですから、おひなさまの髪色は真珠お嬢様と合わせてもいいのではないでしょうか。真珠お嬢様はまぎれもなく宵司お坊ちゃまの娘ですし」


 真珠ちゃんがお人形たちとスライムパンダをああでもないこうでもないと並べ替えてる横で、白絹お祖母様とばあやは楽しそうにお茶してる。


「そうね。宵司の娘で、わたくしの血を引く孫なんですものね。こんなに可愛い孫が授かるなんて、長生きはするものね。ああ、そういえば、真珠ちゃん、猫の着ぐるみ姿も可愛かったわね。猫の雛人形も作らせようかしら?」

「時間は十分ありますから、まずは真珠お嬢様がお気に入りのパンダの遊び道具を揃えてさしあげてはいかがでしょう? お風呂のアヒルもそろそろ古くなってきましたし」


 いや、お風呂のアヒルはまだピカピカの新品だと思うよ、ばあや。

 あれ? でもそういえば、この一カ月、お風呂で遊んでない!

 だけど、ぷにぷに感触はクアアの勝ち! スライムってどういう生き物か謎だけど、ぬくいのがまたいいね。お風呂のアヒルより可愛いよ!

 そうだ、この人形、可愛い順に並べちゃおう。一番はクアア。次は、うーんと、こっちのおひなさまかなぁ? うんうん。


「まあ、お風呂遊び! そうね。真珠ちゃんはお人形遊びができるいい子ですものね。そういえば、どこかのお宅で子供用の大きなぬいぐるみベッドを見たことがあるわ。パンダのぬいぐるみベッドも作らせましょう。壁紙もパンダの、真珠専用の遊び部屋を作らせてもいいわね」


 大人は大人で楽しそうなので、真珠ちゃんはぐるっと並べたお人形を順番にいい子いい子となでなでしていく。

 でも、ひとつ撫でたら、クアアに戻るよ! だって、スライムクアアだけぷにぷにって動いて近づいてくるからね! 可愛い!


「そうですね。赤ん坊にはそんなに性差がないと聞いておりましたが、真珠お嬢様は本当に女の子らしくて、お人形遊びがお上手ですものね。一番おとなしかった月白お坊ちゃまでも人形は足で踏みつけるもので、憲法お坊ちゃまは投げて重さや大きさによって変わる落下速度と距離を計算するもの。闇王お坊ちゃまは手に持って武器と防具にするもの、宵司お坊ちゃまに至っては引き千切って粉砕するものでしたからね……」


 な、なんか、ばあやの思い出話が物騒! 男の子って大変だね。お人形は可愛がるものだよ。いい子いい子で抱っこ、なでなで。

 あ、クアアの方がもっと可愛い。ぷにぷに抱っこ、うきゃぁ! 一緒にごろごろ寝転がって、ぷにぷにボディにちゅーしちゃう!


「そうだったわね。なのに、真珠ちゃん、こんなに可愛いなんて……きっと、父親の影響を受けずに育てたのが正解なのね。この先もあの破壊魔は遠ざけて、わたくしと小春と薄の三人で育てましょう」


 白絹お祖母様がおいでおいでするので、クアアを抱っこしてよちよち歩く。

 一応、支えなしに自分で歩けるんだよ。でも、過保護に育てられてるので、転んでも痛くないように周囲にクッションがいっぱいだし、背後からすすきさんがついてきてくれてるけどね。


「まぁま、だぁだ!」

「抱っこしてもふわふわ! 本当に可愛いこと。今、おばあちゃんの部屋の隣に真珠ちゃんの部屋を準備させてるのよ。これからは毎晩、おばあちゃんと一緒に寝ましょうね。もう誰にも何も言わせないわ。真珠、あなたはわたくしの孫娘なんですもの。わたくしがこの手で育てるわ!」


 おおっ! 真珠ちゃん、心強い味方を得ました。

 そうだよね。仮パパとか光源氏とかじゃなくて、実の祖母に育ててもらえれば、きっと実母が犯罪者でもなんとかなる!

 ばあやとすすきさんもこれまで通りに構ってくれるみたいだし、あとはヒロインさえ見つかればダントラ回避!

 うん、養護施設のご厄介にならない分も、白絹お祖母様とばあやの老後はわたしがまかされるから、万事解決。

 うんうん、ね? これで大丈夫だよね? なにか見落としとか、余計なトラップとか、もうない……よね?


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