5.加護判明?
王城へ着くと一行は二手に分かれる。
「じゃあワシらは王城へ向かうから、終わり次第そこの噴水で落ち合おう」
「了解。じゃあ気をつけてなおじさん」
「どっちかというととアンタの方が危ないと思うのだけれど……」
サラの心配を他所に元気よく走り出し神殿へと向かう。
「そんなキョロキョロしてると財布スられるわよ」
「心配するな!財布なんぞ持ってきてない!」
「何しに来たのアンタ!?」
神殿に着き全力土下座で、ドン引きした顔のサラにお金を借りる。
「すみませ~ん!加護もらったみたいなんですけど見てもらえますか~?」
「ちょっと!そんな近所の店みたいに言わないの!」
「ほっほっほ、随分と元気な子じゃ。どれ、一つワシが見てやろう」
そういってデb……恰幅の良い老人がいかにも人の良さそうな顔で対応してくれた。
「これは……!?」
「これは!?」
「わからんのぉ……」
ずっこけそうになる俺。なんとか踏ん張って話しを聞くとこの老人、実は結構なお偉いさんらしく。分からないままなのも何なので調べてくれるとのこと。そして調べている間、老人の提案で神殿内を見て回る事になった。
「あの神様はなぁに?」
「あれは火の神であるアグニ様よ」
「あれはぁ?」
「あれは時の神であるクロノス様ね」
「じゃあ、あれはぁ?」
「子供じゃないんだから自分で読みなさいよ!鬱陶しい!」
無邪気に神様について質問するも叱られてしまう。彼女なんていた事無いからイチャつき方もわからん……。
「これは、何々……運命の女神様……。名前は無いのか?」
「運命の女神様は名前が無いわね。なんでも人が名前をつけると運命が決定されるかもだから『運命の女神』以外の名前で呼んじゃいけないそうよ」
「へぇ~難儀なもんだね神様ってのも」
そう言って運命の女神像を眺める。どこがとは言わんが豊穣の女神といい勝負じゃないかこれは……どこがとは言わんが。
「いてっ」
どこからとも無く小石が落ちてきて額にぶつかる。
「天罰ね」
「なんで!?」
「目が邪なのよ!目が!」
「その年頃なら仕方あるまいて」
「出たな妖怪!」
「ワシ結構偉いんじゃけども……」
ショボン顔の爺さんによると、現状判明している加護の中には該当する紋章はないとのこと。
「何か隠してんじゃねぇの?なぁ爺さんよぉ?」
「なんでそんな喧嘩腰なのよアンタ……」
「しかしのぉ、無いもんはないからのぉ……。何ぞスキルとかは発現したのか?」
「そういえば道中で『自然治癒』に似た現象があったわね」
「『自然治癒』か……。該当する神の紋章も確認してはいるが該当する紋章は無かったのぅ。他には何かあったか?」
「いえ、今のところそのような事は無いです」
「ならまだ未発見の神の可能性があるのぉ」
「新しい神様ってそんなポコジャカ生まれるもんなのか?」
「ポコジャカっておヌシ……。珍しいことではあるが全くない訳では無いんじゃよ」
爺さんによると神というのは信仰によって生まれたり消えたりするそうだ。例えば英雄が人々に信仰されて神に至るケースもあるが、逆に信仰を失い消滅したり邪神へと変化し、人々を苦しめる場合もあるそうだ。爺さんに礼を言って噴水へと向かうとすでに村長とおじさんが待っていた。
「おー、どうだったアレス」
「何か偉そうな爺さんも確認してくれたけど分からないってさ」
「偉そうな爺さんって……。あの方神殿長様よ?」
おじさん達へ神殿長から受けた説明をそっくりそのまま伝える。
「まぁ、私も加護に詳しい訳では無いが、特に信仰してる神様が居ないなら特に問題なかろう」
「いや、プロ農民としてはやはり豊穣の神様にですね……」
「アンタ絶対胸で選んだでしょ」
「そ、そんなコトナイヨー!そういえばおじさん達の方はどうだった?」
「あぁ、王城の方でも例の魔法は確認していたらしく。念の為、急ぎで軍を配置しているところらしい」
そう言われてみるとあちこちで衛兵らしき人たちが行ったり来たりしている。やはりこの国の王様は相当にやり手のようだ。とその時、衛兵の叫ぶ声と共に鐘が喧ましく鳴り響く。
「敵襲!敵襲ーー!敵は魔物の大群!兵士は急ぎ南門へ集合せよ!」
「南門って……!俺らの村の方向じゃねぇか!」
そう行って走り出そうとする俺の腕をおじさんが掴む。
「落ち着けアレス」
「でも……」
「でももへったくれもあるか!今ワシらが向かったところで邪魔になるだけだ。今はただ祈って待つしかないんだ……」
そう言われ、噴水の縁に腰をかける。横を見るとサラと村長が静かに祈りを捧げていた。俺はそれに習って村の無事を天に願った。