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4.冒険の始まり(後編)

 突如として輝き始めた左手を見て呆然とする俺にサラが声をかける。


「ねぇアンタ、それって加護を授かったんじゃないの?」


 そう言われ我に返る。加護とは神から授けられる力であり、加護を授かると右手の甲に紋章が浮かび上がるという。稀に複数の神から加護を授かる者もいるが、その場合は右手の甲から方に向けて1個ずつ追加されるらしい。


 再度左手の甲を確認する。瞳を閉じたような変な紋章だ。紋章は神のシンボルであり、加護を授けた神によってどんな紋章かが決まる。しかし、紋章に見覚えは無く、まず左手についてる時点で何かがおかしい。


「いや、そんな不思議そうな顔されても分からないわよ……ってキモッ!不思議そうな顔したまま涙流さないでよ!」


 怖くて泣いちゃった……。よくわからん邪神とかだとヤだな……。


「とりあえず怖いから神殿で見てもらいたいんだけど。来てくれる?」

「なんでアタシまで行かないといけないのよ。アンタ一人で行きなさいよ」

「いや、でも村長にサラのこと頼まれたし……」

「アタシだってパパに村の事頼まれてるんだから残らないとだし……」

「いや、でも変な邪神の加護とかだと困るし……」

「でもでもってこともじゃないんだから……ってその顔やめなさいよ!夢に出てくるでしょうが!」


 その後も必死に説得(土下座)することで何とか神殿へと向かう事になった。村の事は村長の家の隣に住んでるモブロスさんにお願いしたし、早速出発しよう!……と意気込むもこの村には馬が二頭しかおらず、その二頭もおじさん達が乗って行ってしまったので、仕方なくサラと二人徒歩で王都を目指す事になった。


「なんでアタシまで歩きで行かないといけないのよ……。」

「そんなこと言ってちゃんと着いてきてるクセに~★ミ」

「はっ倒すわよ、アンタ」

「君に押し倒されるならかんげ……イタッ!脛はマズいですよサラさん!」


 道中軽口を叩きながら舗装された道を進んでいくと男性二人がグラスウルフに襲われている。サラにカッコイイところを見せようとグラスウルフへと飛びかかる。


「助かる!数が多くて苦戦していたんだ!」


聞き覚えのある声だなと思い振り返るとニコラスおじさんと村長だった。別れの挨拶した後にすぐ会うと少し気まずいね。


「お前アレスじゃないか!なんでここにいるんだ!」

「そんな事言ってる場合じゃないよおじさん!話はグラスウルフを倒してからにしよう」


 そう言って持っていた鍬でグラスウルフを叩きつけるがあまり効果は無く、唸り声を上げながら憎しみのこもった目でこちらを見ている。


「グルルルル……!」

「実は俺犬派なんだよ。出会い方は最悪だったけどこれから最高の親友になれると思わないか?」


 グラスウルフは喉を噛み切らんと飛びかかる。うん、親友になるのは厳しいみたいだ。


「アレス!お前剣はどうしたんだ!」

「訓練用の木剣しかないから鍬の方が良いかなって!」

「剣の稽古付けてやった意味ないだろうが!」


 ニコラスおじさんがグラスウルフを剣で斬りながら言う。俺は近くのグラスウルフを蹴ったり叩いたりして逃げ回る、足腰には自身があるんだよチクショーが!農民舐めんな!


 逃げる俺、追いかけるグラスウルフ、それを更に追いかけるおじさん。予想外に良い連携になったらしくグラスウルフは1匹、また1匹と数を減らして行く。みんな俺追いかけすぎじゃない……?


「~~~~~火よ!」


そして残りのグラスウルフが3体程になったところでサラの詠唱が終わり、火球がグラスウルフを焼き尽くす。ボンっと破裂するような音と肉の焼ける臭いが広がる。


「ふー、何とか倒しきったな。」


そう言って汗を拭きながらニコラスおじさんが歩み寄ってくると俺の足を見る。


「おい、お前足怪我してるぞ?」


 どおりで痛いはずだ。逃げている最中は興奮して気づかなかったようだが、膝から踝までざっくりと切れており、かなり痛々しい見た目だ。見たら痛くなってきた……ぴえん……。


「勢い良く出てってアンタだけ怪我してるじゃない。足出して、回復魔法使ったげるから」


ぴえん顔をしているとサラも寄って来てそう提案して来るが、俺にも男のプライドがあるため断る。


「こんなモン唾付けときゃ治るさ★ミ」


そう言って大げさに手に唾を吐く動きをして傷口に塗り込む。


「唾って、おじいちゃんじゃないんだから……ってアンタそれ!」

「へ?」


 そう言われ。視線の先を目で追う。傷がない……。2~3回ほど傷口とサラの顔を交互に見る。


「なにこれ知らん。怖っ」

「ついに人間辞めたのねアンタ……。」


 そう言いドン引きするサラ。ぴえん……。


「冗談はここまでにして、多分さっき発現した加護の影響でしょうね。詠唱した素振りも無かったし『自然治癒』のスキルかしら?」

「何だアレス、お前加護を得たのか?どれ、見せてみろ」


 そう言いニコラスおじさんが手を差し出すので俺も左手を差し出す。


「いやそっちじゃなくて……って左手に出てんのか?しかも全く見たことない紋章だな」


 おじさんも知らないらしい。やっぱ邪神とかの類いなのかな?


「色的に善神だとは思うが……。神殿で調べてもらうしかないなこれは」

「色で善神かどうかってわかるの?」

「あぁ、基本的に善神は白っぽい色で邪神とか悪神の類いが黒っぽい色に光るらしい。昔戦争俺が戦争で見た加護持ちの魔族は黒っぽい青で光ってたな」


 加護の色は重要だ。加護を授けた神の属性に依存しており、知っている人間が見れば使うスキルや魔法の系統がわかってしまう。そのため、余程加護に自信のある者以外は手袋をして隠す。おじさんの戦った魔族は余程自信があったようだ。


「まぁ人間が悪神の類いに加護授かるなんざ、滅多に無いからな。多少マイナーな神だろうが問題ないだろう」


 そう言いおじさんは手を離し村長のもとへ向かう。基本的に人間や友好的な亜人は善神の加護を、魔族や一部の邪教徒などが悪神の加護を受ける。しかし、善神の中でも「善意で人類を滅ぼす」など、色だけで完全に良い加護かどうかを見分けることは出来ない。


「やっぱりダメですかね?」

「あぁ。事切れている。ここからは徒歩だな。ここ数年魔物など出なかったのに運が悪いな全く……」


 馬は2頭とも喉元を食いちぎられておりすでに事切れている。ステファン……!ステファニー……!お前らの勇姿はしっかりと目に焼き付けたぞ……!


そして予想外に数を増やした俺たちは徒歩で王城へと向かった。


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