34.ゴンザレスの過去3
お待たせして本当にすみません……!
仕事と生活環境の変化でなかなか時間が取れず更新が止まってました……。
土日の間にあと1~2話程度は書きたいなと思ってるので、お時間のある方はお付き合いいただければと!
「……という事があったんだ」
「という事ってお前まだ何も言ってないからな?」
領内にある古ぼけた書店でお互いに真剣な面持ちで棚を凝視していた。突然訳の分からない事を言うゴンザレスにセルドは呆れた声を出しながらも目は本棚から話さない。
「あれ?言ってなかったか?」
「何をだよ。俺はお前が謹慎食らって親父に怒られたとこまでしか聞いてないがね」
「ん~とはいえ他人に聞かれても困るし、やっぱりやめておくか……」
「他人ねぇ……。おい!ジイさん!今日客来たか?」
「あぁ!?あんだって!?」
「長生きしろって言ったんだよ!!」
「余計なお世話じゃ小僧が!」
肩をすくめるセルドにゴンザレスは苦笑いを浮かべる。今いる古書店は昔こそ賑わっていたらしいが、今は新しく建てられた魔導書店に客を取られ今では訪れる人間の方が少ない。しかもあまり治安の良い立地ではない事から通りを歩く人間ですら稀だ。
「下手な場所より密談には持って来いだろ?」
「それもそうだな。実は……」
昨日の出来事をセルドに説明する。
「何だそりゃ?ただの不審者だと思うが……親父さんには言ったのか?」
「いや、父上には何も……」
「何で…って、あぁ、親父さんも容疑者ってことか?」
「そういう訳ではないが……」
「そういう訳なんだろうよ。お前がそう思うなら話すべきではないだろうしな。で、俺は容疑者から外れてるんか?」
「当たり前だろう?だってお前姉上に惚れ……」
「ジイさん!晩飯なんだっけ!?」
「何言っとるっじゃ!晩飯はもう食ったろうに!」
「あぁそうだったな!長生きしろよジジィ!」
耳まで真っ赤にして誤魔化すセルド。セルドはゴンザレスとレティアの幼馴染であり、恋愛に疎いゴンザレスですらわかる程、レティアに惚れていた。レティアが殺された時など1ヶ月近く部屋から出てくる事がない程だった。
「で?その怪しい男の事は何かわかったのか?」
何冊かの本を手に取りカウンターで料金を支払いながらセルドが問いかける。
「いや、特に何も分かってないな……」
「まぁ天下のゴンザーラ家に忍び込むくらいだ。相当な手練だろうな」
ゴンザレスの住む国サンザーラ王国は南北の国に挟まれるように位置しており、西には魔物の生息する大森林があり、国防に力を入れる必要があった。そしてゴンザーラ家は「盾」と呼ばれ、魔物の進行を遮るように領地を持っている。畑違いとはいえ戦闘面では国内最強と名高い貴族の邸宅であり、気づかれずに侵入するとなるとかなり実力を持っていたと考えられる。
「とりあえずはそいつの言っていた通り強くなろうと思う」
ゴンザレスもセルドに続き本を購入する。
「まぁ別にお前やお前の親父さんがどうにかなるとは思わんが用心だけはしとけよ?」
店を出ると人通りのない通りがオレンジ色に染まっていた。あとは帰るだけだと後ろを振り向くと声をかけられる。
「あぁ、そうだ。何か分かったら俺にも教えろよ?」
いつもとは違い真剣な声だった。ゴンザレスはその声に応えるように振り向かず手振り家路へと着く。
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「この時期にダンジョンだと?」
不機嫌そうにそう言い睨みつけるゴレアス。ゴンザレスは少し萎縮しつつも口を開いた。
「私も貴族です父上。『盾』としての役割を果たす為にも強くならねばと思いまして……」
勇気を持って言葉を口にしたゴンザレスだったが、父の眉間の皺が増える度に声は小さくなり、最後は消え入りそうになっていた。
「ほぅ、お前に『盾』の役割を果たせるとでも?」
その言葉に唇を噛み締める。父の言葉通りであろう。大森林から溢れ出る魔物は通常の魔物より強い個体が多い。魔法の使えないゴンザレスが多少身体を鍛えたところでチンピラや弱い魔物を倒すのが精々だろう。上級魔法を駆使し、身体能力も秀でているゴレアスに反論できるはずもない。
「だが、自覚を持つのは良いことだ。励めよ」
予想外の返事に驚くゴンザレス。
「返事」
「……はい!必ず父上の期待に応えてみます!」
思いがけずダンジョンへ通う事を許され、意気揚々と部屋を出ようとしたところで声をかけられる。
「あぁ、そういえば最近ゾーイ嬢と会っているか?寂しそうにしていたぞ?」
最近のゴンザレスは学業に訓練にと明け暮れており、久しく婚約者に顔を見せていない。返答に困り目を泳がせているとゴレアスがため息をつく。
「ゴンザーラ家は『盾』だ。槍でも剣でもなく『盾』なのだ。言っている意味はわかるな?」
真剣な面持ちで頷くゴンザレス。
「分かっているなら良い。行っていいぞ」
父の言葉には「守れ」という意味が込められているのだろう。ゴンザーラ家の娘が殺害され、犯人も捕まっていない。次にゾーイが狙われても不思議ではない。父親の言葉の重みを感じ気を引き締めゴンザレスは部屋を後にした。
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「そろそろ『盾』を継ぐ時が近いようだな……」
上等な酒の入ったグラスを傾けながら窓の外を見るゴレアス。
「目を離すんじゃないぞ?」
「はい、領主様」
暗闇に紛れるように黒装束に身を包んだ男が現れ問いかけに応える。顔には赤い面をしており、その面には悍ましい笑顔が彫られているが、反対に声から感情は感じられない。
「しかし、ご子息に『盾』が務まるでしょうか?」
「あの子の魔力は目を見張るものがある。成長すれば私以上になるだろうな」
「しかし、魔法に対する適正は皆無では?」
「そんなものアレを継承すれば些細な問題に過ぎんだろうさ」
そう言い少しの間左手の指輪を見つめ、言葉を続ける。
「だが、今は弱い。危害を加える者がいれば殺せ」
「はっ……!」
返事と共に黒装束の男は闇に溶ける。男の気配が消え、ゴレアスは再び窓の外に目を向ける。
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