25.ミステイク
最強少女の方が更新滞ってますが近日中に更新しますのでもう少しお待ちいただければと……!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!」
光に包まれた視界が元に戻った瞬間アレスの耳に悲痛な叫びが届く
「俺……!まだ……!俺……!君に……!」
声のする方向を見ると片腕を切断された少年が蹲っていた。年は15~17程だろうか、まだあどけなさを残すその顔を悲痛な表情で歪めている。
「どう……なってんだ?さっきまで俺は……?」
状況が理解出来ず困惑していると後ろから少女の声が聞こえる。
「ユウマくん!逃げて!」
ユウマと言うのは少年の名前だろうか?アレスはその警告を聞き少年に視線を移す。少年の周りにはいかにもという風貌の男達が立っており、その中の一人が握る剣には血が滴っていた。その足元には少年のものと思われる腕が転がっている。男たちは少年を見下ろしニタニタと下卑た笑みを浮かべている。その中でも一際楽しそうに笑うドレッドヘアーの男がこれまた楽しそうに声をかける。
「あ~あ~!ぜ~んぶ君のせいだよボクちゃ~ん!子供が出しゃばるからこんな事になるんだよ?」
ドレッドヘアーの男の言葉に賛同するように周りの男たちが笑う。少年は未だにぶつぶつとうわ言を繰り返しており、その言葉も耳に届いていないようだ。
「お、おい!あんたら仲間なんだろ!?助けなくていいのか!?」
数人の武器を持った男たちに片腕の少年が勝てるはずも無く、アレスは少年を助けるよう近くにいた複数人の男女に声をかける。
「おい!聞こえないのか!」
アレスの声に反応を示さない彼らに業を煮やし掴みかかろうとするも手がすり抜ける。
「はぁ!?」
何度か試すも手は相手をすり抜け、彼らはアレスの様子を気にも留めない。
「ん~壊れちゃったのかな?」
蹲った少年の顔を覗き込みドレッドヘアーの男は興味を失ったように真顔になり後ろに振り向きながら指示を出す。
「飽きた。ツマんないから殺しちゃっていいよソレ」
ゆっくりと遠ざかるドレッドヘアーの男。そして少年を囲んでいた男の一人が斧を振り上げる。
「……やる!こ……やる!」
「あ~?なんだって?」
「殺してやる!!」
少年の並々ならぬ殺意に男が後ずさると何かが飛び出し男の顔を掴む。
「がっ!!やめ……」
ボキンと重みのある音が聞こえ男が力なく倒れる。
「う、腕が勝手に!?がっ……」
突如として動き出したのは切断されたハズの腕であり、その腕が仲間の一人を殺したことに驚愕するも、その男を少年が残った腕で掴む。その体には純白の鎧を纏っており、切断された左腕によって辛うじて少年と識別できる。
「オーバーライド:■■■■」
アレスの耳に届く声が不自然に不協和音へと変換される。最後の言葉はノイズに変換され聞き取れないがその言葉に反応し切断された左腕が黒い鎧に包まれていく。左腕を漆黒の篭手が包み込むと少年の切断された腕の位置へと一直線に飛んでいき切断などされていないかのようにくっつき純白の鎧を徐々に黒く侵食していく。
「イィィィ~ねぇぇぇぇ!壊れてないオモチャの方が壊し甲斐があるってモンよぉ!!」
玉座のように立派な椅子の位置まで来ていたドレッドヘアーの男がぐるんと振り返り奇声を上げる。少年が掴んだ男はみるみる内に凍りつき、いつの間にか握っていた純白の剣で残りの男達を始末しながらドレッドヘアーの男へと歩み寄る。
「だけどお前は俺様に近寄ることもできねぇんだよぉ!!」
叫ぶ男を無視して少年は歩を進める。
「チッ……。【贖罪の鎖】!!!」
ドレッドヘアーの男が叫び声を上げた瞬間地面や空中から鎖が飛び出し、少年を拘束する。しかし少年は歩みを止めず、圧力のかかった鎖がギリギリと嫌な音を立てる。
「ヒーローってのはつれぇよなぁ!!テメェの女が犯されても殺されても世間体気にして助けられねぇんだからよぉ!!」
無言のまま怒気を纏い少年は一歩ずつ足を踏み出し、鎖が軋む。2~3歩進んだ所で鎖は限界を迎えたのか甲高い音を立てて砕け散り光の粒へと姿を変える。
「あの女には随分楽しませて貰ったぜぇ?」
表情を崩さず少年を煽り続ける男だが、鎖が砕けるのは予想外だったのが額に汗が滲む。少年が無視して接近するのを見てドレッドヘアーの男は小さく舌打ちをし、手元の鎖を引っ張る。するとボロ切れを纏い羽の生えた少女が引き摺られる形で男と少年の間に突き出される。
「ひっ……!」
少年から滲み出す殺気や怒気などのドス黒い感情に怯み少女が悲鳴を上げるも少年は意に介さず突き進む。
「クソがっ!『正義を示せ』アイギス!」
「いやぁぁぁぁあああ!」
男がそう口にすると羽の生えた少女は震えながら悲痛な叫びを上げ手を前に突き出す。その直後神々しく光る半透明の壁が幾層にも連なり少年と男を隔てる。その光景を見ても少年は歩きながらいつの間にか左腕に握られていた漆黒の剣を振り上げる。よく見れば肘までだったはずの漆黒が少年の感情に反応するかのように広がり続けており、肩口まで侵食している。少年が剣を振り下ろすとさしたる抵抗も無く光の壁は切り裂かれ黒炎に蝕まれて消えていく。
「ば、バケモノ……!」
その光景を見た羽の生えた少女は短くそう呟くと勢い良く立ち上がり少年とは逆の方向へと走って逃げようとする。しかし何かに足を取られ派手に転ぶ。
「お前だけは……!絶対に許さない……!」
羽の生えた少女の足には手足を切断された同年代の少女が怒りの満ちた顔で腱に齧り付いていた。
「このっ!!ハナセっ!はなせっ!離せぇぇ!!」
半狂乱になりながら足に食いつく少女の顔を何度も蹴りつけるが少女は鼻の骨が折れようと歯を緩めない。羽の生えた少女の顔が恐怖に染まるのに反比例して手足の無い少女の顔が悍ましい笑顔へと変わっていく。
「あっ……あぁっ……」
羽の生えた少女が蹴りつける足を止めた時にはすでに少年が目前に立っており、歯をガタガタと震わせる事しか出来ていなかった。少年はゴミを払うかのように軽い動作で羽の生えた少女を漆黒の剣で斬りつけると声にならない叫びと笑い声を飲み込むように黒炎で包まれる。
『おぉっと!こんな所に居たのか!』
眼の前の惨状に唖然としていたアレスの耳にどこからとも無く声が響く。その声は隣の部屋の話し声のように何かに阻まれ不明瞭なのにも関わらず、目の前で語りかけているかのようにスッと耳に入ってくる不思議な声色だった。
『こりゃ手違い手違い』
不思議な声色ながらも幼い少女のように聞こえる声はそう続ける。
『これ以上はネタバレだからちゃっちゃと自分の物語に戻らないとね』
少女の声がそう言うと報酬部屋と同じようにアレスの視界が光に包まれていく
「おい!一体どうなっ……」
アレスは疑問を口にするも言い切らない内に光に包まれ消える。その瞬間少年はアレスが居た場所へと振り返る。
「どーしたよ!余所見かぁ!?」
「………………」
ドレッドヘアーの男に話しかけられ少年は元の方向へと向き直し歩き出す。少年を蝕む漆黒はもう半身まで広がっており、その左腕には不気味な目の模様が赤黒く光輝いていた。
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「………殿!……ス殿!」
誰の声だ?どうなってんだ?
「アレス殿!大丈夫ですかアレス殿!」
「うおっ!!ミダス?」
「そうですミダスですぞ!大丈夫ですか!?」
「大丈夫ってどういう……」
「大丈夫とは言い難い顔色ですぞ?」
「顔色?え?そんなに顔色悪い?」
「死人の方がまだ顔色が良いくらいですな」
「俺死んでた!?」
「冗談はこれくらいにするとして……。アレス殿と私に時間差がありましたが一体何があったのですか?」
「何がって……あれ?何か忘れているような……てか時間差って?」
「どうやらどこかに転送されたようでしてな」
「転送……?ってうお!?」
転送と言う言葉を聞き周りを少し見ると何故か甲冑を来た集団に取り囲まれ槍を突きつけられている。
「結構居てはマズい場所に居るようですな!」
「笑顔で言うことじゃねぇ!?」
「おや?坊っちゃん?」
「え?」
聞き馴染みのある声に振り返ると道化姿をした小柄な男性が甲冑鎧の間にちょこんと立っていた。
「ピエちゃん!?」
「お知り合いなので?」
「あぁ、少し前に会ったヤツなんだよ」
「これは一体どう言う事でやすか?」
「どうもこうも俺にも分からないんだよ。ダンジョンで宝箱開けたら光に包まれて今ココ」
「それは災難でやしたねぇ」
「てかピエちゃんはどうしてここに?てかここは何処でこの人達は一体……」
突然の状況にピエちゃんまで登場して、オラ、何が起こってるか分かんねぇぞ!
「ん~、どこから説明した物か……。とりあえずここは謁見の間でこの人達は近衛騎士の皆さんでやす」
「謁見……?近衛騎士……?」
「ピエールよ。その者らは?」
重く、落ち着いた声が聞こえ顔を上げるとそこには玉座に佇む男性がいた。
「先日イーリスへ赴いた際に出会った青年です。悪事を働く人間では無いのでご安心を。隣の男はわかりかねますが見た所、仲間の一員かと」
「ほう、その者がイーリスの勇者か」
「ピエちゃん?あの王様っぽいお方は……?」
「王様っぽいも何も、謁見の間で偉そうに玉座に座ってるヤツなんて一人しかおらんでしょうに」
「も、もしかして……」
「うむ、余がジャーバッハ帝国皇帝のアラゴス・ジャーバッハである」
「うえぇぇぇぇ!?」
「して坊っちゃん、他のお仲間は?」
「そう言えば……!」
周りの様子を見るがサラ、ルシール、ジョンの姿は見えない。
「情報量が多すぎるぅぅ!!!」
「はっはっはっ!!」
アレスの叫び声とミダスの笑い声が玉座に響き渡る。
--------------- サンザーラ王国にて ---------------
「サラさん!一体そっち行きました!」
「任せなさい!詠唱破棄!火よ!」
いつもより小ぶりな火球が小型の狼のようなモンスターへと飛んでいき小さく爆ぜる。
「オラァァァ!」
怯んだモンスターを上半身裸で筋骨隆々な大男が殴りつける!
「ナイス!やるじゃないゴンザレス!」
「ハッハッハァ!我が筋肉に敵なし!」
「にしてもダンジョンに飛ばされるとはね……」
「早く他の三人を見つけないとですね」
ルシールとサラはダンジョン大国である『サンザーラ王国』のダンジョンの一つに転移されていた。
「しかし見ず知らずなのにありがとうねゴンザレス!」
「なに!年端も行かぬ少年少女を助けるなどゴンザーラ公爵家の者として当然だ!」
「公爵ってめちゃくちゃ偉い人じゃないですか!?」
「気にするな少年!小さな事を気にしていては筋肉が育たぬぞ!」
「良い人なんだろうけど……キャラが濃いわね……」
「そうですね………」
「ハッハッハァ!!」
--------------- ???にて ---------------
「どうして俺ばっかりこんな目に……」
「邪神様が降臨なさったぞぉ!!」
「我らをお救い下さい邪神様ぁ!!」
「邪神様って結構普通な顔してんだな」
「オイそこぉ!それは悪口だろうが!」
「「「「「おお……!喋りなさったぞ……!!」」」」」
「で、アンタらはどちら様?」
「我々は邪神様を崇拝する信徒にございます。邪神様には我らを救って頂きたく存じ上げます」
「邪神って……。で、この娘は?生贄か何かか?」
ジョンが指差す先には体中に何かしらの塗料で模様が書かれた裸の少女が横たわっている。
「その通りにございます。村の中で純血の少女を探し生贄として用意させていただきました」
「ふざけんなボケ、服着させとけ風邪引くだろうが」
「邪神様は着衣プレイの方が好みなのか」
「オイ!さっきから何か失礼なヤツ混ざってるぞ!」
ジョンがツッコミを入れていると横たわっていた少女が起き上がりジョンの前へと跪いく。
「邪神様、どうか私達を……私達の村をお救い下さい!」
「はぁ……、アイツらも探さにゃならんってのに……」
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