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24.「当たり」って何だろうね……?

親戚の子供の面倒見たりと忙しかったので更新遅れました!待ってくれている方には本当にすみませんでした!

「壊れないな……?」

「壊れないですな……?」


 男二人で鍬を凝視する。ミダスのスキルがどれほど強いのかはわからないが今のところ武器相手であれば全戦全勝である。しかし目の前の鍬は何事も無いかのように佇んでいる。


「アレス殿、この鍬の詳細をお聞きしても?」

「あ、あぁ。実はかくかくしかじかでな……」


 真剣な面持ちのミダスに問われ俺は鍬を入手した経緯をなるべく詳細に教える。


「なるほど……。であればこれは神の恩寵と言わざるを得ないですな。」

「神の恩寵?」

「何か確証があるワケでは無いのですが……。自分で言うのもなんですが私のスキルは余程強力なのか神殿騎士の祝福された武器ですら相手にならん程ですが、この鍬はまるで壊れる様子が無い」


 祝福武器とは神殿が権力を得るに至った要因の一つでもある。原理はわからないが信心深い教徒が使える神の加護が付与された武器らしく、耐久性や性能が普通の武器とは一線を画す代物だ。噂によればただの教徒が歴戦の強者を凌駕するレベルで性能が良いらしく、その武器を与えられた者は神殿騎士と言われる。


「であれば、この鍬は私のスキル以上に強力な神の恩寵を受けていると考えられるのでは?」

「一理あるな……。てかミダスって神殿騎士と戦ったのか?」

「神殿と事構えるって何したんだ?酒屋で色んな話聞いたが邪教徒か魔族ぐらいしか思い当たらねぇんだが……」

「いえ、事を構えると言う程の事では無くてですな、私のスキルは見た目が少し禍々しい物で……」


 そう言ってミダスは手に黒いモヤを集める。


「たまたま通りすがりの神殿騎士にコレを見られましてな、邪教徒と勘違いされ襲われた際に相手方の武器が壊れてしまいましてな。後日正式に謝罪されたので問題にはならんかったのです」

「それは何というか……」

「災難だな」

「災難ね」

「災難ですね」


 神殿はかなり厳格な組織であり、邪教徒や魔族など明確に人を害する存在でもなければ揉めることはほぼ無い。たまたまスキルが発現したミダスがたまたま通りかかった神殿騎士に勘違いされて襲われるというのはかなり運が悪い。ミダスのスキル内容も考えるとそういう星の下に生まれたのだろう。


「で、ですな。その鍬を譲ってはいただけまいか?」

「え?コレ欲しいの?」

「ええ、私のスキルで壊れないものがあれば今後の生活が劇的に改善されるはずなので是非譲って頂きたい」

「あー……。確かにこれがあれば色々できるよなぁ」


 せっかく手に入れた鍬だが、ミダスの生活を思うと同情の気持ちの方が強い。俺の場合は最悪鍬が無くても死にはしないが、物も持てないミダスからすればそれこそ死活問題だ。


「ん~……。じゃあスキルの制御ができるまで貸すってのはどうだ?」

「良いのですか!?」

「まぁ、あれば便利だろうけど。無いと死ぬワケじゃないし」

「ありがとうございます!このご恩は必ず……!」


 そう言って鍬をミダスへ渡そうとすると突然鍬が光線を放つ時と同様に光り始める。


「ファ!?」

「ぬ!?」


 驚いて手を引っ込めると光は収まる。試しに再度ミダスに渡そうとすると再度光り始める。


「これもしかして渡せない系……?」

「でもさっきはミダスさんに貸せましたよね?」

「うむ……。アレス殿、必ず返すのでもう一度お借りしても?」

「お、おう……」


 恐る恐る鍬を渡そうとすると今度は光らず、ミダスが手に取る。


「ふむ……」

「今回は渡せたな……?じゃあ、このまま……」


 そう言いかけると鍬が光始める。


「わー!!ウソウソウソ!!」


 慌てて鍬をひったくると光が収まる。


「もしかするとこの鍬は他人へ『譲渡』することが出来ないのでは?」

「今のを見てるとそうみたいね」

「え~……。コレもしかして呪われてる系?」

「ま、神様からの贈り物を他人に譲渡するのは罰当たりってこったな」

「逆にお前らには渡せないのか?」


 その後色々と試した結果「誰が相手でも譲渡と捉えられる行動を取ると光る」「譲渡とは別に他人が手に持つことは可能」ということが分かった。


「残念ですが諦めねばならんですな……」

「期待させてスマンが無理みたいだな……。でも俺みたいに手に入る可能性もあるし?」

「でも私は運が悪いですからな……。験担ぎも兼ねてこの階の報酬部屋はご一緒しても?」

「もちろん!なんだったら渡せそうな装備ならお前にやるよ!」


 そうして俺たちはミダスと一緒に報酬部屋へと足を踏み入れる。中にはミダスの名前の書かれた宝箱もしっかりと用意されていた。


「では早速……。おお!」


 ウキウキして宝箱を開けたミダスが声を上げる。


「早速ご利益があったようですな!では……」


 慎重に宝箱の中身を取り出すと革製の手袋らしく、壊れる様子も無いようだ。


「壊れない……!手袋さえあればまともな生活が送れる……!」


 涙を流しながら手袋を掲げるミダス。ふと宝箱を見ると紙のような物が見える。


「何か紙みたいなの残って無いか?」

「紙……?どれどれ……」


 そう言ってミダスが手袋をはめてから紙を手に取り凝視する。


「何々?『当たり(譲渡)』?」

「譲渡?誰かからのプレゼントってことか?」

「まぁ、報酬部屋から出たんだから神様の贈り物ってことではあるな」

「私達は今回も消耗品ね?」

「そうですね。僕も何か特別なものが欲しいところです!」

「悪いな、勇者は俺なンだわ!んじゃそろそろ俺も……っと」


 無事ミダスも当たりを引けたようなので満を持して俺も宝箱を開ける。さも当然かのように紙が入っておりいつも通り書かれている内容を読み上げる。


「えーと『当たり(譲渡ペナルティ)』だってよ!いや俺ばっかり悪いね……ってペナルティ!?」

「天罰ね」

「天罰だな」

「天罰ですね」

「言ってる場合か!武器とかスキルとか考えるとこのペナルティってかなりヤバい系なんじゃ……?」


 そう言って辺りを警戒するも特に何も起きてないようだ。


「特に何もなさそうだな……?」


 何も起きない事を不思議に思いつつも胸を撫で下ろす。しかしそう思ったのもつかの間、ミダスの方を見ると大変な事になっていた。


「ミダス!?お前消えてるぞ!?」


 なんとミダスの体から光の粒が立ち上り足の方から徐々に消えて行っている最中であり、脛の辺りまで消えていて宙に浮いているような状態になっていた。


「そういうアレス殿も大変な事になってますぞ!?」

「ふぁ!?何で!?」


 ミダスの言葉を聞き驚いて自分の足元を見るとミダスと同様に足の方から徐々に消えていく光景が映る。


「ちょっとちょっと!?流石に洒落にならないわよ!?」

「ぼ、僕もですか!?」

「絶対アレスのせいだろコレ!?」


 どうやら全員が同様に消えて行っているようで部屋の中は驚きの声で騒がしくなる。


「俺が何したってんだよ!」

「アンタが神様に文句言ったからじゃないの!?」

「とりあえず謝って下さい!アレスさん!」

「そうだ!とりあえず心を込めて謝りゃ許してくれるかも知んねぇぞ!」

「南無三……!」

「神様ぁ!ケチとか言ってすみませんでしたぁ!今後は心を入れ替えますから……」



 アレスの命乞いにも似た祈りの声を最後に部屋には空の宝箱と静寂だけが残された。

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