23.腹ペコ破壊神ミダス
今日気づきましたが初いいね&ブクマが付いてました!付けてくれた方ありがとうございます!これからもお付き合い頂けるように頑張ります!
「ったく!神様もケチだな!」
ぶつぶつと文句を言いつつ俺は八階のモンスターを鍬で倒していく。八階ではオークが出現し、数はそこまで多くない。オークは食用として食べられることもあり、ある程度ポピュラーな魔物ではあるが人型に近く拒否感を示す人間も少なくない。そのため『魔物愛護団体』を名乗る輩がオーク討伐の邪魔をすることもあり、最近では冒険者や肉屋も厄介事を避ける為オーク肉は出回らなくなっていた。
「そういえば最近オーク肉食べてないわね……」
「あぁ、魔物愛護団体が最近暴れてるみたいだしな」
「僕は元々オーク肉は食べなかったので問題ないですが、美味しいんですか?」
「そうね、上等な豚肉って感じね。昔は村でも時々仕入れたけど最近はめっきりね」
「あぁ、村長も好きだったしな。でも俺はちょっと無理だな。人食べたやつの肉はな……」
オーク肉が出回っているからと言って、オーク自体が一方的に狩られる程弱い訳では無い。人間には加護によるスキルがあるので中位の冒険者であれば小遣い稼ぎに狩れる程度勝てている状況だ。しかし、身長2m~3mで体重も200kg近くあるオークに一般人が勝てるはずも無く、冒険者の居ない村ではそこそこ被害が出ている程だ。
「え?アンタ知らないの?」
「ん?」
「オークは人を襲うけど主食は木の実や果物よ?」
「それは初耳だ。そしたら女攫って手籠めにするってのは?」
「それは本当らしいぞ。ただ繁殖と言うよりは娯楽の要素が強いらしいぞ?ま、それでも害獣には変わらんけどな」
どうやらオークは俺の想像と違い、草食中心の雑食性らしい。気性もそこまで荒く無く生息域がガッツリ被らなければ積極的に襲って来る程では無いようだ。女性を犯すのはあくまで娯楽であり、そもそも人間とオークの間で子供は生まれないらしい。
「へー、オークって思ったより邪悪な魔物では無いんだな」
「まぁ、人間臭い悪意は無いだろうが、動物特有の自然の悪辣さはあるだろうな」
「まぁ、他の動物からすれば性交なんてそこまで問題でもないんでしょうよ」
「でも、被害に遭われた女性には深刻な問題なので対策は必要ですよね……」
「うーん難しい問題だなぁ……。相手だって生きてるし皆殺しってのも違うだろうし、被害が出ている以上野放しってわけにも行かないしなぁ……」
「ま、そこらへんの難しいことは国のお偉方とか学者様が考えてくれんだろ」
「そうね。ワタシ達が考えて答えの出る問題じゃないわね」
柄にも無く真面目な話をしていると突然男女の二人組が行く道を塞ぐ。
「魔物愛護団体のメンバーだ。ここでオークを狩るのはやめろ!」
「噂をすればなんとやらってヤツだな……」
「魔物が可愛そうだと思わないの?私達と同じで必死で生きてるだけなのよ?」
「これ以上横暴を繰り返すのであれば我々が相手をするぞ!」
突然出てきた二人は魔物愛護団体のメンバーらしい。昔は極力魔物との生存圏が被らないように色々工夫したり共存できる仕組みを考える団体だったらしいが、最近では冒険者や魔物の素材を扱う店などに嫌がらせを繰り返しトラブルが絶えない団体になっているらしい。
「って言われてもなぁ……」
「そんじゃ質問なんだが、アンタらここまで来るのに魔物は一切殺して無いのか?」
「当たり前じゃない!魔物に気付かれないように進んでるのよ!」
「ほーそりゃあご立派なこって。で、魔物と戦いもしないのにダンジョンに何の用なんだ?」
「魔物を虐殺する冒険者に警告をしているのだ!これ以上魔物を苦しませる事は許さん!」
「ってことは他人の食い扶持潰して回ってるってことか、魔物愛護団体ってのは余程暇なんだな?」
「おい、ジョン!煽るなって……」
「いーや言わせてもらうね。お前さん方は立場の弱い店や冒険者を虐めて悦に入ってる卑怯者なんだよ!」
「言わせておけば!我らの崇高な信念を侮辱するか!」
ジョンの一言に激昂した男が剣を抜き、戦闘態勢を取る。
「ちょ、ちょっとターイム!」
流石に突然殺し合いに発展するのは御免なので、流れをぶった切りジョンを説得する。
「おいジョン!何であんな突っかかるんだよ?適当な事言ってやり過ごそうぜ?」
「すまん、昔のバイト先が魔物愛護団体に嫌がらせされて潰れてな……」
「そりゃ悔しいだろうけど……。今こいつらと揉めたからって元に戻るわけじゃないだろ?」
「そうだな、流石に頭も冷えたし無難な方向で行くか」
「よし、なら任せとけ」
ジョンが納得したところで魔物愛護団体の二人にゴマを擦りながら近寄る。
「いやー、うちの仲間がすみませんねぇ。自分の方から言って聞かせますんでここはどうか穏便に……」
「ならん!やつは我々の信念を侮辱したのだ!その代償を払わせてやる」
かなりご立腹なようで聞く耳を持ってくれない。
「ああ、やっぱり今回も駄目だったよ」
「なんで急にイケボなのよ……。まぁ、穏便に済まないって言うならやるしか無いわね!」
そう言ってその場に居る全員が戦闘態勢を取る。人数的にはこちらが有利ではあるが、向こうは一切引くつもりは無いらしい。お互いが相手の出方を伺い緊張感を高めていると突然何者かが声をかけてくる。
「アレス殿?アレス殿じゃないか!」
「何だ貴様は!こいつらの仲間か!」
「あんたは……ミダス?」
声の方向を見るとそこにはミダスが立っていた。前回会った時はボロボロな布を纏っていたが、今は真っ黒なコートを羽織っていた。
「おぉ!ちゃんと覚えてくれていたか!こんなところで会うなんて奇遇ですな!して、こちらのお二人は?」
「魔物愛護団体の連中らしい、オークを狩るなってさ」
簡単に状況を説明するとミダスは俺たちを交互に見て何やら考え込む。
「ふむ……。そちらのお二方、こちらのアレス殿は私の恩人でな。剣を下げては貰えまいか?」
「やはりアイツらの仲間か!お前も邪魔すると言うなら相手になるぞ!」
「ふむ……、どうしたものか……。お、丁度いい所に……」
そう言いミダスは近くにいたオークに近寄ると手で触る。
「…………!」
「スマンな」
オークの頭は崩れ去り、ミダスはそれを確認して呟くように謝ると首元に噛みつき肉を食いちぎり咀嚼する。
「な……!?」
「モグモグ……。生き物を殺すのは罪か?」
「あ、当たり前だ!罪も無い生き物を殺すなんて許されないことだ!」
「なら野生に生きる動物達も罪があると?」
「動物達は私達が保護しないといけない尊い生物よ!醜い人間とは違うの!」
「なるほど話にならんな。じゃあ罪どうこうは置いておくとしてお二方は私達を殺そうとしているという事で間違いないな?」
「お前らは魔物の虐殺に加え我らの信念を侮辱した罪がある!その命を持って償ってもらう!」
「なら殺し合いの覚悟は出来ていると?」
「我々は精鋭でな。殺し合いにすらならんだろうよ」
魔物愛護団体の二人は見下すように鼻で笑う。先程の言葉が本当であれば、彼らは魔物を傷つけずここまでたどり着いた事になる。もしそうであれば冒険者であれば中の上程度の実力はあるのだろう。
「では、生きる為に私もお二方を殺さねばならんな……」
「できるのならなぁ!」
そう言って魔物愛護団体の男がミダスへ短剣を数本ミダスへと投擲する。ミダスは左手を振り短剣を塵へと変え、右手で拳を握る。その右手には黒い霞のようなものが集まり、右手が見えなくなる程集まると力を込めて壁を殴り付ける。殴られた壁を伝い黒いモヤが魔物愛護団体の二人へと襲いかかり、武器と防具を塵へと変える。
「まだやるかね?」
「く、クソ!今回は見逃してやる!」
ミダスの脅しが余程聞いたのか二人は捨て台詞を吐いて一目散に逃げて行った。
「いやー!なんとか穏便に済みましたな!」
「穏便とは程遠かったような気もするが……。とにかくありがとうなミダス!」
「いやいや!これしきのことでは恩の一割も返せていないですぞ?」
「十分助けて貰ったよ。それよりスキルは制御できたのか?」
そう言って握手をしようと手を差し伸べるとミダスが首を横に振る。
「いえ、まだまだ修行中でしてな。まだ制御は出来ておらんのです」
「え?でもさっきスキルで攻撃してただろ。それに服も着てるし……」
「いえ、少しばかり集めることはできるようになったが、制御には程遠い状態でして。それに服は『当たり』らしく、壊れにくい性質のものが宝箱から出ただけで長時間触らなければスキルに負けないだけみたいで……」
「そうか。流石にすぐに制御できたら苦労しないか。だったらメシ食ってくか?」
「是非に!」
そうしてミダスに助けて貰った礼として昼食を食べさせてやり、食後に雑談をする。
「そう言えば俺も宝箱から当たりが出たんだよ。ホラ」
そう言ってミダスに鍬を渡す。
「鍬……ですかな?特別な効果がお有りで?」
「そうなんだよ。鍬のくせに物消し飛ばしたりビーム出したりするんだよ」
「それは本当に鍬なのだろうか……?」
「あっ、あの……それ……」
ミダスが鍬の感想を言っているとルシールがおずおずと声を掛ける。
「ん?どしたルシール?」
「いえ、その、それ……手で持って大丈夫なんですか?」
「「あっ……!」」
そう言われ二人で鍬を見る。しかし、鍬に崩れる様子は無く、至って普通だ。
「「あれ?」」




