20.聖剣……だよな?
最強少女の方の見直しが思った以上に時間かかって更新遅くなってます……。最強少女の方は今日明日で終わらせて土日の間で両方併せて4話は更新する予定なのでどうぞお付き合い下さい!
「あ、危なかった……」
「だから言ったじゃない、所詮魔物なんだからよくわからない期待を捨てなさいよ」
「だってモフモフしてて可愛かったんだもん」
「だもんってアンタね……」
「まぁまぁ、コレでアレスも学習しただろうしもう良いだろ。な?アレス」
「あぁ、流石に今回は命の危険も感じたし今後は気を付ける」
「ならいいけど……」
見た目とは裏腹に野生の力強い生命を感じたところで俺たちは気を取り直して六階の攻略を進めることにした。
「にしてもココのコボルト共は装備が良いな。野生のもこんな感じなのか?」
「いえ、野生のコボルトに製鉄技術は無いので皮や木製の鎧や槍などが主ですね。鉄製の装備は運良く冒険者や商人の襲撃に成功した集団くらいでしょう」
「ならなんでココのコボルトは装備が良いんだ?ほぼ新品だろ」
「その辺に関してはまだ研究が進んでいないらしく良く分かって無いそうですが『神の試練』ということで納得されている感じですね」
「俺としてはハズレの装備しか貰えてないから信仰が薄くなりそうだけどな」
ダンジョンでは不思議な事が多々起きる。同時に襲ってくる数・知能・個体の戦闘力など、階層毎に強くなる仕様のためか道理にそぐわないこともしばしばだ。まぁ道理うんぬんの話をするのであれば、人間しか襲わない魔物が生態系を無視して出現するだけでも相当なものだ。しかも階層ごとに強くなり、ダンジョン外に出ることが出来ないという親切設計つきなのだから「神の試練」だというのも納得である。
「お、報酬部屋だな」
「今度は良い物が出ると良いわね?」
「いや、俺は10階くらいまではこの流れだと読んだね」
ジョンの軽口をスルーしつつ部屋に入るとまたしても金色の箱が目につく。
「俺の箱は金だな」
「1日に金箱2つってのはかなりツイてるとは思うがお前の場合はなぁ……」
「僕らのは携帯食料などですね」
他のメンバーの箱には携帯食料や松明などの消耗品が入っていた。ダンジョン攻略では長期戦になることもあるので、奥を目指すパーティからすればありがたい話だろう。
「ま、どうせまたよくわからん紙ってオチだろうけどな」
コレまでの流れから期待せず箱を開ける。
「ホラ!やっぱ紙じゃん!」
箱を開けるとまたしても紙が出てくる。神様は余程俺が嫌いらしい。
「で?今回は何て書いてあるんだ?」
「えーと……『大当たり(確変)』?確変ってなんだ?」
確変と言う見慣れない文字を見て疑問に思っていると後ろ側の壁からガコンという音が聞こえ振り返る。
「あんなとこに扉あったっけ?」
「いや、俺らの入ってきた扉はあっちだ。ここに扉なんて無かったと思うが……」
「何か書いてありますね」
そう言ってルシールが扉に近寄り文字を読む
「当選者はこちらへ?」
「当選者ってどういうことだ?」
「流れ的にアンタじゃない?『大当たり(確変)』なんでしょ?」
「いや、そうだけども……」
「とりあえず入って見ろよ。何か良いもの貰えるかもよ?」
恐る恐る扉を開いて見ると中にはそこそこ広い空間が広がっていた。石で出来た洞窟のような場所で足元には水が踝程の高さまで来ている。部屋の中心には白い石でできた丘があり、何かが刺さっている。
「え?これ入って大丈夫?いきなりバカ強いモンスターとか出そうなんだが?」
「セーフエリアの隣だからそこまで心配無いだろうけど一応注意しながら進みましょう?」
「いや、コレもうスルーして次の階行かない?何かヤなんだけど」
「お前あれだけ冒険冒険言っといて今更ビビってんのか?」
そう言いながら皆が中へ入って行くので渋々俺も後に続く。丘の中心部まで進むと刺さっていた物の正体が明らかとなった。
「これ、めちゃくちゃ聖剣っぽくないか?」
丘だと思っていたものは台座だったようだ。中心には冒険小説の挿絵で見たようないかにもな『聖剣』然とした剣が深々と突き刺さっていた。いや、深く刺さり過ぎじゃないか?想像だと半分ぐらいだと思ってたけどこれ根本までガッツリ刺さってるじゃん。
「いや、深く刺さりすぎじゃね?」
「そうですね……。想像より深く刺さってますけど柄の模様は立派ですし、やっぱり聖剣の類ですかね?」
「アンタちょっと抜いて見なさいよ」
「えぇ~、でもぉ~、抜けなかったら困るしぃ~」
「何クネクネしてんのよ気持ち悪いわね」
「いやぁ、ー困っちゃうナー。やっぱ溢れ出る勇者の雰囲気ってやつ?ソレが勝因ですかね!」
わかりやすく調子に乗ってるとジョンが聖剣に近寄る。
「そおい!」
「ちょいちょいちょい!?」
ジョンはあろうことか聖剣を手かけ、力いっぱい引き抜こうとする。
「あ、やっぱダメっぽいな。これ以上力入れると折れそうだわ」
「聖剣って折れるの!?いやソレより何してんだお前!」
「いや、コレで抜けたら俺の物にならんかなーって」
「やらんよ!コレで抜けてたらお前殺してでも奪うわ!」
「こわ……近寄らんとこ……」
「ったく、勇者でも無いのに聖剣抜こうだなんて百年早いわ!」
「へーへー、じゃあ勇者様もさっさと抜いてくださいな?」
「分かっとるがぃ!」
全く油断も隙も無いフリーターだ。気を取り直して俺は剣の柄を手に取り力を込める。
「そおい!」
「その掛け声って万国共通なの?」
農民生活で鍛えた筋肉をフル活用して一気に剣を引き抜くと部屋一杯に光が広がり、やがて収まる。
「これが聖剣……!?」
光が収まり目が慣れてきて引き抜いた物の姿が徐々に現れる。俺の手に握られていたのは、それは見事な『鍬』だった。柄にはよくわからない神秘的な模様が彫られており、刃床部にはこれまた見知らぬ文字が彫られていて鈍い光を放っている。魔術には詳しく無いが、普通の文字が光るはずも無いので魔術的な意味合いを持つ文字が刻まれているのだろう。
「ぎゃはははは!流石にお前!それはズルだろ!」
「いやいやいや!?流石に鍬はおかしいだろ!物理的に引き抜けないじゃん!?」
そうである、鍬が突き刺さっていたのであれば刃床部が引っかかり、引き抜けないはずだ。運良く引き抜けたとしても鍬か台座のどちらかが壊れるはずだが、見たところ鍬にも台座にも傷ひとつない。それどころか台座には刺さっていたであろう穴が見当たらない。
「そんなこと言ったって抜いたらそうなんだからしゃーねーじゃねぇか」
「と言うより、先程まで剣の柄の形でしたよね?」
ルシールの言う通り先程確認した時には剣の柄の形をしており、金色の光を放っていたはずだ。しかし、今俺の手元にあるのは全てが白い石のようなものでできた鍬である。色も違うし鍔も見当たらない。もしコレが刺さっていたら白い棒が刺さっているようにしか見えないだろう。
「まぁ、アンタの武器も鍬だし丁度良かったんじゃない?」
「えと……その……似合ってますよ?」
「勇者(農民)wwww」
「嫌だァァァァァ!」
やっと勇者らしくなってきたと思ったのに聖剣じゃなくて聖鍬なんてあんまりだ!
ひとしきり嘆いた後、鍬の性能を試す為にも次の階へと進む。ジョンは余程ツボったのか笑いが止まない様子なのでとりあえず3回ほど引っ叩いておいた。




