19.いざダンジョン攻略へ!(再)
ニ階へと降りるとそこにはゴブリンが徘徊していた。ちらりとサラの方へ目をやる。
「何よ?もう気にしてないわよ?」
「なら良いけどさ。辛かったら言えよ?」
「ご心配どうも。でもワタシだって強くなったんだから!」
そう言い詠唱を始めるサラ。
「~~~火よ!」
詠唱が終わると火球が飛び出しゴブリン数体を炭へと変える。
「ここならある程度広いし依頼の時より余裕ね」
「逞しいこって、おいアレス。俺らも負けてらんねぇな?」
そう言いジョンも先程手に入れた針をゴブリンに投げつけ攻撃している。そして目を抑えているゴブリンをルシールのレイピアが貫く。
「そうですよ!もっと仲間を信頼しましょうアレスさん!」
「そうだな、俺も頑張らねぇとな」
そして余裕を持ってゴブリンをある程度狩り報酬部屋へと進む。
「今度こそ何か出ますように今度こそ何か出ますように今度こそ何か出ますように」
「ニ度あることは三度あるっていうしな」
「意地悪言ったらかわいそうですよジョンさん」
「てりゃぁあ!!」
気合充分に宝箱を開けるとそこにはボロボロの短剣が入ってた。
「なんとも言えねぇな……ってお前泣いてるのか?」
「今度もハズレだったらどうしようって……」
ボロボロで粗末な短剣ではあるが、コレは俺にとって間違い無く宝だった。ちなみにジョンは棍棒でサラはローブ。ルシールは何枚かの硬貨だった。
「よーしこの調子で進むぞー!」
「急に元気になったな……」
「余程嬉しかったのね……」
「良かったですね!アレスさん!」
「おうよ!」
三階はニ階と同様にゴブリンだったが少しだけ装備が整っている。
「リッチなゴブリン?」
「ありゃあゴブリンファイターだな。奥にはゴブリンアーチャーも居るし今までより注意しながら進もうぜ」
「そうね、皆怪我しないようにね」
ゴブリンファイターやアーチャーは普通のゴブリンよりも多少強かった。しかし、知能が低いと聞いたように特に連携を取る訳でも無く、そこまで苦戦せずに倒せるレベルだ。
「さーてと、今回も良いものが入ってるかな?」
「またスカだったりしてな」
「もう、ジョンさん!」
「ワタシは杖みたいね。店売りの方が高性能だから使わないけど」
「僕は靴ですね、丈夫そうですけど履きづらそうです」
「俺は良くわからん指輪だな。アレスはどうだ?」
そう言ってジョンがアレスの方を見るとアレスは短剣を両手に持って不思議そうな顔をしてた。
「どした?」
「これ同じ……だよな?」
両手に持つ短剣を交互に見比べる。粗末さも含め全く同じ短剣に見える。あれ?俺ちょっと嫌な予感してきたなー。
「ま、低層だし被ることもあるでしょ。次行くわよ」
「そ、そうだよな。おーし!次の階も頑張るぞー!」
「俺、オチ読めたわ」
四階へ降りると今度はグラスウルフが居た。多少大きく素早いため、ここで怪我をする初心者も多いそうだ。しかし俺達のパーティには魔法使いが二人もいる為、ジョンと俺で軽く注意を引きサラとルシールの魔法で仕留めることで危なげも無く報酬部屋まで辿り着く。
「イヤァァァァ!!」
「ギャハハハ!やっぱお前はそういうヤツだよな?ギャハハハハ!」
叫ぶ俺に笑うジョン。嫌な予感が当たってしまった……。宝箱の中にはニ階や三階と全く同じ短剣が収められていた。
「た、たまたまですよ!」
「じゃあ次の階も同じ短剣だったら交換してくれる?」
「それはちょっと……」
「イヤァァァァ!!」
「バカやってないで早く行くわよ」
五階にはグラスウルフとゴブリンが居た。が少し様子がおかしい。
「ゴブリンがグラスウルフに乗ってるな」
「あれはゴブリンライダーですね」
「ゴブリンがグラスウルフに乗ってるだけでじゃないのか?」
「ゴブリンライダーはグラスウルフとの連携が取れるので初心者だと苦戦する人も多いよう……ですが……」
再度ゴブリンライダーの方を見る。知能が低いせいなのかゴブリンはグラスウルフが歩くとちょくちょく振り落とされており、その度に再度よじ登る。とてもじゃないが連携が取れるとは思えない。
「お、おかしいな?」
「あれゼッタイ別々にした方が良いんじゃないか?」
「ま、神様もミスるこったな」
その後何体かと戦闘を行うが、走るグラスウルフに振り下ろされたゴブリンがよじ登ろうと動きを邪魔して正直前の階のグラスウルフ単体の方が余程強かった。なんとも哀れな光景を目にしながらある程度倒してから報酬部屋へと向かう。
「さ、流石に四連続は無いよな?」
「いや、お前ならあり得るな」
「だ、大丈夫ですよきっと……」
「ねぇ、ルシール?目合わそ?ね?」
目をそらし続けるルシールに問いかけつつ宝箱を開ける。その中には紙が入っていた。
「おいまたスカか?」
「いや、何か違うこと書いてる。えーと『調整中』?」
「何を調整するのか分からないけどコレ入ってる時点で調整ミスじゃないかしら?」
「ド、ドンマイですアレスさん!」
「ねぇ、ルシール?目合わそ?ね?」
頑なに目を逸らすルシールと目を合わせようとしつつ次に階へと進む。
五階ではホブゴブリンが出現するようだ。しかしサイズは洞窟で見たものより小さく。少し小柄な大人くらいの大きさだった。
「何か小さくないか?」
「依頼の時に出たのが特別デカかったんだろ。基本ダンジョンに出るのが平均サイズらしいぞ?」
「ま、前の時は運が悪かったってことね」
サラが詠唱を済ませゴブリンを焼き払う。その火球はいつもより少し大きく感じたが、多分気のせいだろう、うん!
「ま、ダンジョン産ってこともあるがかなり余裕だな」
「まぁ新人研修である程度強くなってるんだし当然ね」
報酬部屋へとたどり着くと一つだけ金色の箱が目につく。
「お、コレお前のじゃねぇか?」
「え?俺の?本当に?」
「流石に今までが運悪かっただけですよ!」
やっと運が向いてきたようだ。高鳴る期待を胸に箱を開けるとまたしても一枚の紙が入っていた。
「調整しすぎじゃねぇか?」
「いや、今回も違うこと書いてあるな『Congratulation』?」
「良かったじゃない。祝われてるわよ?」
「いや、祝うんだったら良いもの入れてくれない?体感『スカ』となんも変わらんのだが?」
祝福してくれるのは嬉しいがその気持の分何か欲しいものだ。金箱だったがなんとなく分かって居たので気にならなくなってきた。いや、普通にムカつくわ。
「そろそろ休憩がてらお弁当でも食べましょうか」
そして俺達は報酬部屋の端で弁当を食べることになった。
「そういえば他の冒険者の邪魔になりそうだけどここ居ても大丈夫なのか?」
「問題ないです。報酬部屋はパーティ毎に別の次元が使われているらしく、他の冒険者と出くわすことは無いらしいですよ?」
「別次元って、無駄にスケールデカいな」
「神様のやることはわからんな」
昼食を取り終え六階へと進むと直立した犬のような生き物がウロウロしていた。
「きゃわわわ!」
「コボルトね。ほとんどゴブリンと変わらないけど少し身体能力が高いそうよ」
「流石にアレよりホブゴブリンのが強いんじゃないか?」
「装備が良いのと数が多いのでホブゴブリンより強い判定なんじゃないかしら?」
そう言われコボルトを見ると新品の鎧に剣を所持しており、数も心なしか他の階層より少し大きく感じる。考えて見てくれ、ふわふわな犬の見た目に鎧装備ってお前……。可愛い以外の表現が見つからん……。
「少し撫でて見ていいか?」
「やめときなさいよ。アレも一応モンスターよ?」
「ま、コイツなら多少怪我しても回復するし良いんじゃないか?」
「ま、それもそうね。気が済んだら戻ってきなさい」
「っしゃ!」
呆れ顔の三人を尻目にモフる為ゆっくりとコボルトに近寄る。
「よーしよし、可愛いでちゅねぇ」
コボルトに近寄るとやはりカワイイの塊だった。もふもふの毛並みに潤んだ瞳。怖がっているのか小刻みにプルプルと震え不安そうにこちらを見つめている。
「怖くないでちゅからねぇ~……え?」
怖がらせないようにゆっくりと近づいていると突然低い声で唸り俺に襲いかかるコボルト。歯茎むき出しでぶち殺すと言わんばかりに首筋を狙って剣を何度も振り下ろす。その目は血走っており人と魔物が絶対に分かりあえないことを物語っている。
「ちょ!?怖すぎ!?黒目ちっちゃ!助けてぇ!!!」
「ほーら言わんこっちゃないじゃない」
「ま、いい薬になんだろ」
「アレスさんは魔物をナメすぎです」
「あれー!?みなさーん!?冒険が終わりますことよー!?」
数分放置された後、俺はなんとか救出された。もう二度と魔物相手にカワイイとか言わんわ……。




