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18.消えたオルトロス

「結局ピエちゃんは来なかったな……」

「無事だといいんですが……」

「案外あのおっさんならなんとかなってるんじゃないか?」


 昨夜の出来事があり、ギルドで夜を明かした俺たちはピエちゃんの心配をしていた。とりあえず受付で状況の確認をするため移動すると、慌ただしく職員が行ったり来たりと騒がしい様子だ。


「何かあったんですか?」

「あら、丁度呼びに行こうと思ってたのよ。実は……」


 受付のお姉さんの話しによるとオルトロスというギルドはそのたちの悪さと他2つの闇ギルドと比べ一般人への被害が著しく多かったらしく以前からマークされており、俺たちが絡まれる前から強制捜査及び上層部の逮捕が決定していたらしい。しかし、いざ踏み込んで見ると奴らのアジトはもぬけの空となっており、全団員が一夜の間に消え去ってしまったとのことだ。


「それで団員がどこに消えたのか緊急で調査を進めてて少しバタバタしてるのよね……」

「消えたなら良い話しなんじゃないんですか?」

「そうもいかねぇだろ。突然消えたってんなら誰かが消したってこった。そいつらがオルトロスよりお優しい集団じゃないってことは確かだな」

「どこかのイイやつが成敗してくれたってことじゃないのか?」

「そんなに正義感溢れる連中ならギルドと連携するだろうし、もっと前に対処しているはずだろ?それにオルトロスの連中は()()じゃなくて()()()()んだ。一つのギルドを痕跡を残さず文字通り消すなんてマトモなやつの仕業じゃねぇだろ」

「それに、まだ敵対組織に消されたとも限らないわね。何か大きなことをやらかす為に身を隠してるかもしれないし」

「その通りです。今ギルドは正確な判断を下す為に情報収集をしている状態なので何かあればご報告をお願いします」


 そう言ってお姉さんが頭を下げる。そこでふとピエちゃんのことを思い出す。


「そういえば昨日言ってたピエロの人のことなんですが、何か情報とか来てますか?」

「ピエロの……。あっ、そういえばその事で話しがあったのよ。実は昨日本人がいらして伝言を頼まれたの」

「良かった、無事だったんだな。でも伝言って?」

「えーと……」


------------------------------


「アナタがアレス君達の言ってたピエールさんですね。今呼びに行きますので少々お待ち下さい」

「いえ、呼びにいかなくて大丈夫でやすよ。それよりお嬢さん、坊っちゃん方に伝言を頼んでも?」

「はぁ……」

「いえね、アッシの雇い主様が仕事が遅いってカンカンでして……。今夜中にこの町を出なくちゃならんくなりやして。坊っちゃん方には別れの挨拶も出来ず心苦しいでやすが無事だと伝えて貰えますかい?」

「えぇ、それくらいでしたら。本当にお会いにならなくて大丈夫なんですか?」

「雇い主を怒らせると明日の食い扶持にも困る身でして……。あ、そうだ。あと今度どこかで会うことがあれば約束のお話を頼むとも伝えておいてくだせぇ」

「分かりました。お仕事頑張ってくださいね」

「ありがとうございやすお嬢さん。んじゃ、アッシはこれで」


------------------------------


「……ってことだったわ」

「そうか、ピエちゃん行っちゃったのか」

「まぁ、仕事だってんならしゃーない。無事だってわかったんだし良かっただろ」

「そうだな、無事ならいつか会えるだろうしな」

「そうね、色んな国を旅してる口ぶりだったし縁があれば会えるわよ」


 急に行ってしまったピエちゃんに少しの寂しさ……いや、よく考えたらそこまで寂しくもねぇな。

その後俺たちは情報収集ついでにダンジョン攻略に向けて買い物をする為市場へと向かう。


「なぁおっちゃん、コレもうちょい安くならねぇか?」

「俺にも生活があるんでな。嫌なら買わなくていいぜ」

「ん~、それならこっちも買うからよ。コレくらいでどうだ?」

「商売上手だな兄ちゃん。商談成立だ!」


 30分近く値切り合戦をしていたジョンと屋台のおじさんはやっと折り合いがついたのかお互いを称えて固い握手を交わしていた。


「そういえばおっちゃん。オルトロスの連中が消えたって聞いたんだが何か知らねぇか?」

「おお、それなら今みんな噂してるぜ。けど消えたって事以外はわからんなぁ……」

「まぁ、町の厄介モノが消えたってんならみんな大喜びだわな。消えたって言うが下っ端も残ってないのか?」

「そりゃあもう、俺が知ってる顔は当然のこと隣に住んでた下っ端っぽい男も消えてたくらいだ」

「マジで全員なのか……。わかったわ、あんがとなおっちゃん」

「おう、今後ともご贔屓に頼むぜ兄ちゃん」


 振り返らず手だけ振り、ジョンが俺の元まで歩いてくる。


「コレでリストの物は全部買ったな……ってなんだよその顔」

「お前ってホントにコミュ力高いよなぁって、フリーターの癖に」

「フリーターとコミュ力は関係ねぇだろうが!」

「まぁ、ソレはソレとして集合場所に行くか」

「納得いかねぇ……」


 買い物を終え事前に決めていた喫茶店へと向かうと既に目的を終えたサラとルシールが待っていた。


「お、やっと来たわね。リストの物は全部買えた?」

「おうよ!」

「お前が買ったみたいに返事してるけど買い物したの俺だからな?」

「オルトロスに関しては何か聞けた?」

「いや、下っ端も含めて全員消えたって事以外は何も分からなかった」

「こっちもです……」

「まぁ、立ち話も何だし中に入ろうぜ?」

「そうね、お茶でもしながら明日の予定でも立てましょう」


 そう言い喫茶店の中に入るとなにやら歌声が聞こえる。


「ん?歌声?」


 声のする方を見ると店の開けたスペースで男が歌を歌っていた。


「吟遊詩人か、昼の喫茶店にいるなんて珍しいな」

「お客さん達初めてかい?この店は冒険者や商人やらの情報が必要な客が多くてな。吟遊詩人を呼んで歌って貰ってるってわけよ」

「へぇ、吟遊詩人って物語を歌ってるだけじゃないんだな」

「人によるわね。世の中での出来事を歌ってたり、過去の伝説を歌ったりね」


 案内された席に着いて吟遊詩人の歌に耳を傾けるとどうやらオルトロスの失踪事件について歌っているようだ。


「かくしてオルトロスめらは勇者に懲らしめられるのであった~♪」

「え?勇者……ですか?」

「俺らなんもして無いよな?」

「ま、実際勇者様が居てその町で悪党が消えたってんなら関係あると思われるだろうしな」

「サイン求められたらどうしようかなぁ?」

「いや、顔は知られてないんだからアンタだって気付くのはギルドか教会の人だけでしょ……」


 喫茶店を後にし、ギルドへと向かう。


「ってことで消えたって事以外は特に分からなかったです」

「そうですか……。情報提供ありがとうございます」

「それで今日は少しダンジョンへ潜ってみようと思うんですが問題ないですかね?」

「現状オルトロスは団員の一人も目撃されていない状態ですので、嫌がらせを受ける心配は無いので大丈夫でしょう。ですけど不審な人物を見かけた場合はその場から離れてギルド関係者へ通報をお願いします」

「分かりました。ありがとうございます」


 ギルドからも問題ないと言われたのでダンジョンへと向かう。まぁ居ないやつらの心配したってしゃーないしな!


「そっち行ったぞー」

「オーライ……オーライ……っと!」


 ダンジョンに来た俺たちはとりあえず怪我しない程度に潜る事になり、昨日と同じくホーンラビットを狩っていた。


「もうホーンラビットくらいなら楽勝だな」

「慣れるのは良いことだけど調子だけには乗るんじゃないわよ?」

「分かってるって。ソレより今回の踏破報酬は何かな?」


 昨日はハズレだったので、期待しながら報酬部屋へと入る。


「何かジョンの箱だけ色違くね?」

「これはレア箱だな」

「レア箱?」

「まぁ、良いもんが入ってるってこった。ま、低層だからそこまでだろうけどな」


 ジョンが金色の箱を開けると縞々模様の棘が十数本入っていた。


「ホーンラビットの角で作られた針だな。ま、投擲武器の節約にはなるな」

「僕らは昨日とほとんど替わり無いですね」


 ルシールとサラはホーンラビットの靴やコートを手に入れたようだ。


「さて、今回こそは俺も良いものが出ますようにっと」


期待しながら箱を開けるとそこには……。


「ウガァァァァ! アレス! オコッタ!」

「いきなりデカい声出さないでよ。ってアンタまたハズレ引いたの?」


 箱の中には昨日と同様「スカ」と書かれた紙が入っていた。無駄に達筆なところが余計ムカつく。


「何なん!?俺勇者だよ!?もっとホラ聖剣とかさぁ!」

「こんなとこで聖剣なんて出されてもビビるわ。てかお前の場合聖剣じゃなくて聖鍬じゃねぇか?」

「そんなことないモン!聖剣だモン!ビームとか出して無双するんだモン!」

「バカやって無いで次行くわよ?」


またしても何も得られなかったことに憤りつつも次の階へと移動する。俺やっぱ神様に嫌われてね?何で?

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