1.宣戦布告
この村は平和だ。
天候には恵まれており獰猛な動物もおらず、そして何より大陸一の大国の『イーリス』の王都に近く、山賊やらに襲われる心配もない。
土の質も良く農業を行うのに最適だで、税もかなり良心的だ。
むしろこんなに低い税で国がやっていけるのか心配になるほどだ。
「まーたサボってる!」
少女の高い声が響く。この少女の名前は『サラ』と言い小柄で栗色のウェーブがかった髪をしていて、小さくとも何にでも食って掛かる強気な性格をしている。正直なところ色々な部分の発育が性格に反比例して控えめ……今後に楽しみな状況だ!
「今変なこと考えたでしょ」
「いや、考えてないよ!?」
俺の名前は『アレス』覚えてはいないがどこぞの国の神様から名前をとったそうだ。体格は少し痩せぎみだが平均程度で得意なことは土いじりが同年代より少し上手いだけな『ザ・農民』だ。
「てか、アンタいっつもここで寝てて仕事大丈夫なの?」
「ある程度終わってるし今日はいい天気だから昼寝でもしようかと思ってさ」
「サボってばかりいるとおじさんに言いつけるよ」
「それだけはご勘弁を!!」
そう言って額を地面に擦り付ける。ニコラスおじさんは昔にあった魔族との戦争で、魔王と3日間もの間戦い続け首を落とした大英雄で王国の騎士団長……の後ろで物資の搬送をしていたおっさんだ。
この村で唯一剣の扱いをしっており、俺に剣の稽古を付けてくれている。平和なこの村にはあまり必要ないとは思うのだが……。
「あはは、ならこの薪を私の家まで運んでくれる?」
「かしこまりましたお嬢様」
「なんかキモいわねアンタ・・・・・・」
薪を背負い舗装されてない道を歩いていく。途中村の皆に挨拶をしたり野菜を貰ったりしながらサラの家を目指す。俺はこの平和な村が好きだ。可愛い幼馴染みがいて、少し退屈ではあるがみんなが笑って暮らしているこの村が好きだ。
と、その時背筋に悪寒が走る。突然空に暗い雲が立ち込め山の上に大きく男の姿が写し出される。
「なんだあれ……?」
「やあ、人間の諸君 誠に勝手ながら君たちには死んでもらう」
天気の良いいつも通りのその日、俺の大好きな「平和な村」が終わりを告げた。