16.いざダンジョン攻略へ!
更新かなり遅れてすみません!私生活でのトラブルが一段落付いたので時間ある限りガンガン更新しますのでお付き合い下さい!
「死ねぇ!ハゲぇ!」
「ハゲじゃねぇ!剃ってんだよ!」
筋肉ダルマとの訓練も1週間目となった今日、俺は教官との模擬戦闘訓練をしていた。
「ハゲはみんなそう言うんだぁ!」
ここぞとばかりに恨みを込めた攻撃を教官は片手で受け止め木剣を振り下ろす。ゴンと重い音と共に目の前に星が散る。
「よし、そろそろ問題ないだろう。今日で訓練を終了とする」
「え?もしかして免許皆伝?」
「調子に乗るな。最初見た時から比べればかなり強くはなったが、まだまだヒヨッコよ」
そう言って笑い、ヒゲをさすりながらまじまじと俺の方を見る。
「しかし、お前さん剣より鍬の方が強いってのは少しカッコがつかんなぁ……」
「農民舐めんな!鍬は俺のマイフェイバリットだこんちくしょうめ!」
剣を習うも上達しない俺を見た教官は様々な武器をあてがってくれたが何故か紛れ込んだ鍬の適正が一番高いということになり、俺のメインウェポンは鍬に決定してしまった。鍬持ってる勇者ってなんぞ???
「おー、アレスの方も今日で終わりか?」
「お、ジョン。ってことはお前も?」
「おう、免許皆伝だ。爺さんに気に入られたみたいでな、魔王討伐の後の就職先も安泰だ」
「おい、こっちを見るな。お前に免許皆伝をやるほどワシは甘くないぞ」
チクショウ!フリーターのジョンですら免許皆伝なのになんで俺はギリ合格な感じなんだよ!
「サラとルシールは定食屋で待ってるらしいし、俺らも行こうぜ?」
「あぁ、とりあえず着替えたら向かうから先行っててくれや」
ジョンと別れ着替えてから行きつけの定食屋へと向かう。
「やっと来たわね。お疲れ様アレス」
「お疲れ様です。アレスさん」
「おー、お疲れさん。二人ももう訓練は終了か?」
「ワタシは昨日、ルシールに至っては3日前には終わってたわ」
「だってよジョンさんや。才能が無いってのは辛いもんだな」
「全くだなアレスさんや」
「もう、いい歳して拗ねないでよね。ホラ、ご飯も来たし食べちゃいましょう」
いつもの定食屋でいつもの定食を食べながら今後について話しをする。
「そういやこの後の予定って決まってるのか?」
「そうね、新人研修で実力も付いたことだしダンジョンで力試ししてみるのも悪く無いんじゃない?」
「ダンジョン!!」
ダンジョンとは冒険者の間でメジャーな施設のようなものだ。原理不明だが、各階層で段階的に強くなるモンスター達が存在し、階層をクリアするとご褒美のように踏破報酬が用意されている。昔聞いた話しでは神が用意した試練の一種とのことだ。
「そうそう、こういうのを待ってたんだよ!」
「そうですね。僕もダンジョンは初めてなのでワクワクします!」
「良いんじゃねぇか?依頼より稼ぎは良くねぇが前回みたいな突発的に強いモンスターが出ることも無いだろうし」
「ソレもあるけど、今後旅を続けるなら自分たちがどの程度強くてどの程度の敵を倒せるのかも知っておかないといけないと思うのよ……」
そう言ってサラは少しだけ暗い表情をする。前回のホブゴブリン戦をまだ引きずっているのだろう。昼食を取り終えた俺たちは宿を引き払い、近場でダンジョンのある町を目指す。
「来たぜダンジョン!」
「テンション高いのは良いけど注意散漫にならないようにね?一応死ぬこともあるんだから」
「ま、無茶して奥の階層に行かなきゃ問題ないだろ」
ダンジョンの周りには装備のメンテナンスや、串焼きの屋台など冒険者狙いの出店で賑わっている。準備自体はトナーリの町で済ませているので入り口で入場手続きを済ませてダンジョンへと足を踏み入れる。
「今日は宿も取らないといけなし、少し潜ったら出るわよ?」
「おうよ」
ダンジョン内は土壁に囲まれた狭くもなく広くもない至って普通な空間が広がっていた。通路を進むとホーンラビットなどの脅威度の少ないモンスターがチラホラと徘徊しており、この量であれば囲まれて袋叩きといった状況にも陥らなさそうだ。
「~~~~雷よ!」
ルシールが詠唱を終えると轟音と共に雷が奔り複数体のホーンラビットが炭と化す。
「やっぱ魔法ってすげぇな」
「全くだ。そんなのが二人もいるんだから贅沢なことこの上無いな」
サラの方を見るとこちらは炎の塊を飛ばして消し炭を量産している。
「そういや毛皮とかは取らなくて良いのか?」
「ダンジョン内のモンスターは素材が消えるのよ」
「消える?」
そう言われ比較的綺麗なホーンラビットの死体を見ると黒い粒子へと崩れるように変化し完全に消える。
「おわ!なんぞコレ?」
「ダンジョン内のモンスターは神様の作り物だって説もあるらしいわよ?まぁ素材が取れない替わりに踏破報酬があるんだけどね」
「そういやここのモンスターって外に比べて少し弱くないか?」
「あぁ、何ていうかコイツら動きが少し単調過ぎないか?」
ジョンの言う通り、先程からホーンラビットは俺たちに対して突進を繰り返すばかりで野生のものと違い逃げたり生物特有のクセのようなものが感じられない。
「その筋の研究者によると知能が著しく低くて人間に対して以外攻撃を行わないそうですよ?」
「ニンゲン ゼッタイ ユルサナイってこと?」
「そんな悲しい怪物みたいな状態かは分からないですが、概ねそんなところだと思います」
「ホラ、バカやってないで踏破報酬取って帰るわよ?」
サラにそう言われ扉のある部屋へと向かうと三人の男たちがニヤニヤしながらこっちを見ているのが目につく。
「おいルーキー!ここを通りたきゃ金出しな」
「ザ・チンピラって感じのヤツ出てきたな」
「チンピラね」
「チンピラです」
「チンピラだな」
「チンピラチンピラうるせぇ!大人しく金払いやがれ!」
「先輩方、そのモヒカンどこの美容院でやってもらうんですか?流石に美容院さんも止めてくれないんですか?」
「生意気なルーキーだな。俺様の機嫌を損ねたバツだ、その女共も置いて帰りな」
「女共?」
不思議な事を言う先輩方だ。ここには男三人と女一人しか居ないんだから複数形はおかしいだろ。と後ろを見るとおずおずと目を潤ませるルシールが目に止まる。
「なーる!」
「納得しないでください!僕は男です!」
「何ゴチャゴチャ言ってやがる!痛い目見ないと分からねぇらしいな!」
そう言ってモヒカン先輩ABCは剣を抜き臨戦態勢を取り、ジョンと俺に向かって走り出す。
「くっ!」
「どうしたルーキー!口だけか?」
剣を鍬で受け止めるも押し込まれる。こいつら雑魚チンピラみたいな見た目と言動だけど俺らより手慣れてやがる。
「何してるんだ?」
後ろから声がしその場に居た全員が振り返る。声の主はガリガリに痩せてボロを纏った長身の男だった。
「なんだぁ?てめぇ。文句アンのか?」
「質問してるのはこちらなのだが?奇抜な髪型だと知能も下がるのか?」
「どいつもこいつも髪型バカにしやがって!」
モヒカン先輩が渾身の咆哮と共に俺の腹を蹴り男に斬りかかるべく走り出す。
「死ね!浮浪者が!」
「おっと……」
モヒカン先輩の剣が男の頭をかち割ろうと剣を振り下ろすが、男は至って普通な素振りで剣を掴もうとする。勢いから男の手が切り裂かれると思われたが、男の手が触れるや否や剣は黒く変色し、そのまま崩れる。
「は?」
「お前さんもこうなりたいのか?」
そう言って男はモヒカン先輩の顔を掴もうと手を伸ばす。
「ヒ、ヒィィィ!!」
「おい、待ってくれ!」
情けない悲鳴と共にモヒカン先輩ABCは走って逃げ出す。その様子を見て男は肩をすくめてこちらを見る。
「災難だったな。あいつら新人イビりで有名なんだ」
「アナタは?」
「私はミダス。訳あってここで底辺冒険者をしてる」
「おい、それ以上近寄るな」
ジョンが低い声でミダスに警告する。不思議そうな顔をしているとジョンはミダスの服を指差し続けた。
「アンタの服に付いてるそれ、血だろ?」
ミダスの服を見ると薄汚れており分かりにくいが血がべったりと付いている。汚れた顔にもよく見ると乾いた血がこびりついている。
「ゾンビか何かか?まるで生き物そのまま食べたみてぇだな?」
「それも含めて少し弁明させて貰っても?」
「助けてもらった礼だ。話しだけは聞いてやる」
そしてミダスはポツリポツリと語りだした。平凡な生活をしていたがある日神に加護を授けられたこと。しかしスキルを制御出来ず、手に触れた物体を全て崩壊させてしまうこと。それによって日常生活が困難になり、ダンジョンで弱いモンスターを殺しそのまま血肉を貪る生活を続けてるとのことだ。
「手を使わずにとなると服も着れなくてな……。今は少し慣れてこの布を羽織ってるが前は加護を授かる前から着ていた下着以外は裸だったよ」
「それは、大変だったな。信用はしねぇが同情はするよ」
「同情ついでに頼みごとをしてもいいか?」
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「うまい!うますぎる!」
ミダスは脱水症状になるんじゃないかと思われる程号泣しながら俺たちの弁当の感想を述べる。
「はい、あーん」
「あーん。本当にありがとうアレス殿!」
「いいってことよ。コレもウマいぞ?」
ミダスの頼みは「食べ物を食べさせて欲しい」とのことだった。調理器具はおろか食器や食べ物を手に取ることも出来ず、生肉や野草、果物を動物のように食べる以外の選択肢が無く、栄養失調寸前の状態だった。その後ミダスは号泣しながら俺たち四人分の弁当を食べ尽くし感謝を述べる。
「本当にありがとう。このスキルの制御ができたら必ず恩を返すと誓おう」
「良いって良いって。ソレより汚れ落としたり服着せたりとかは大丈夫か?」
「服なんて貰ってもすぐダメになるし汚れなら、ホレ」
そう言ってミダスが顔や腕を払うと黒く崩れた粒子がポロポロと落ちて払った箇所が綺麗になる。
「俺は崩れないが体についた汚れとかはスキルが適用サれるのでな、手で触れば綺麗にできるんだ」
「そりゃ便利……でもないか。これから大変だろうけど強く生きろよ!」
「あぁ、君たちも神のご加護がありますように」
ミダスと別れ報酬部屋へと足を踏み入れると4つの宝箱があり宝箱には俺たちの名前が刻印されていた。
「俺の報酬はこれか」
自分の名前の書かれた箱を開けるとそこには何かの文字が刻印された紙が入っていた。
「なになに?『スカ』?え?ハズレとかあんのコレ???」
「聞いたこと無いわね」
「僕たちのはホーンラビットの毛皮で作られた手袋ですね」
「お前さんはホントに運が良いのか悪いのかわからんな」
「コレガココロ……!!」
悲しい怪物と貸した俺の頬を涙が伝う。神様、俺何かしました?




