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15.いざ新人研修へ


「はぁ!?オバケと話して加護の正体が分かったですってぇ!?」

「シィー!!!静かに!」


 昨日の出来事をサラ達に話すと正気を疑うかのような表情へと変わる。ヒドくない?


「だけどよ、アレス。そんなの信用しろって言う方が無理じゃねぇか?」


 ジョンの言う事ももっともだ。俺だっていきなりオバケに加護の正体を教えてもらったなんて言われれば寝ぼけてるのかと思う。しかし本当の事だからそう言うしかない。


「俺だって信じられないさ。けど実際昔にここで死んだ人だったらしいし、夢だとは到底思えないんだよな……」

「そんな事言ってもねぇ……」

「みんなは俺の事が信用できないってのか?」

「できないわね」

「カケラもできねぇな」

「少し不安な気もしますね」

「わーい、良い仲間たちダナー」


 酷い!酷すぎる!こんな扱いされるなんて!俺はこんなにも誠実に生きているってのに!


「まぁ、信じる信じない以前にその紋章を隠すのには賛成ね。紋章を隠すのは冒険者にとって珍しいことじゃないしアンタの場合出てる位置も目を引いちゃうからね」


 そう言ってサラは手袋をした右手をひらひらと振る。意識の高い冒険者の場合、対人戦などを考慮して紋章を手袋などで隠す場合があるらしい。しかし大抵の冒険者は自分の加護に誇りを持っており、力を誇示する意味でも隠さない場合の方が若干多いようだった。ちなみにサラは『アフロディーテ』から加護を受けている。豊穣も司る神から加護をもらってるんだから今後に期待だね!


「僕もそれには賛成です。しかし神殿に気を付けろと言うのは少し無理があるんじゃないでしょうか?」

「そうなのよねぇ……。しかももう神殿で紋章見せちゃってるし……」

「それについては今まで通りで問題ないんじゃないか?変に意識するとそれこそ異端者としてしょっぴかれるぞ?」


 この国の国教は創造神信仰に基づいており、基本的には自分の加護を司った神様の教えを遵守せよという内容である。教会は加護の判定や神託を広める役割を請け負っており国民からの信頼も厚い。聞く話によると神殿は審判の神による監視を受けており、不正などを行うと厳しい天罰を受けるとのことだ。


「うーん…、じゃあ当面は怪しまれないように両手に手袋をしつつ神殿に関しては考えないようにするってことでOK?」

「そうね。それでいきましょう」


 こうして当面の方針も決まったところで予定通りギルドに行き新人研修を受けることになった。


「はぁはぁ……。はぁはぁ……。」

「遅い!もっと全力で走らんか!」

「もう……!限界です……!」

「聞こえん!もっと声を張れぃ!」

「もう限界です教官!」

「まだ声が出るだけの元気があるじゃないか。あと10周追加ぁ!」

「騙されたぁ!」


 俺は今年還暦を迎えると言う引退した冒険者から訓練を受けていた。彼の引退前の冒険者ランクはAランクらしく相当な活躍をしたとのことだ。身長は2mはありそうな程高くシャツからは丸太のような腕が生えている。これで還暦は嘘では……?


「よし休憩だ!午後の訓練に備えて休むように!しっかり食えよ若人!」

「はぁはぁ……、バケモンかよ……、あのジジィ……。」

「おー、やってんなぁアレス。」

「ジョンじゃねぇか。そっちはどうだった?」

「何か知らんが竹咥えて水に潜らされたり、植えた竹の上飛んだりしてるよ」

「何だそれ竹の精霊にでもなるのか……?」


 ジョンは投擲の技術を買われ背の低い温厚そうな爺さんに連れて行かれた。せめて何か投げろよ。


「そっちも終わったのね。ワタシ達も終わったからお昼に行きましょう」

「アレスさん達はどんな訓練でしたか?」

「俺はずっと走らされてたよ。ジョンは竹とくんづほぐれつだ」

「言い方ぁ!?」


 魔法を使える組はたまたま居た高名な魔法使いに手ほどきを受けている。クソ!俺も魔法が使えればあの美人魔法使いの先生に手取り足取り指導して貰えるのに!


 そんなこんなで俺らは普通の定食屋でお互いの訓練の内容などを話しながら普通の定食を食べて訓練へと戻った。この町に名物とかないんか???


「よーし!本日の訓練終了!帰って明日に備えろよ!」

「水……、水をくれ……」

「ホレよ」

「随分とアンタの訓練はキツそうね」


 ジョンから受け取った水を飲む俺にサラが同情する。確かに俺だけ明らかにキツい気がするけど教官の性格のせいなのだろうと半ば諦めている。


 一心に水を飲んでいると突然受付のお姉さんに呼ばれる。


「アレスさん。今よろしいでしょうか?」

「はい!デートのお誘いなら大歓迎です!」

「いえ、教会から使者の方が来ていまして。アレスさんとお話をしたいとのことです」


教会という言葉に表情を固くしているとサラに肘でつつかれる。いけない、あくまで平常心だ。


「あ、はい。今行きます。」


 お姉さんについていくと白い司祭服に身を包んだ女性が待っていた。異様にも目のあるはずの位置には布が巻かれており、目のマークが書かれていた。ふむ、胸の方はなかなか……。


「アレス様ですね?」

「はい、そうですけど。何でしょうか?」

「本部より連絡があり、アレス様に加護が与えられるとのことです。神殿までご足労願います」

「分かりました。ちょっと気になったんですけど質問良いですか?」

「はい、私に答えられる範囲であれば」

「その……、目のそれって宗教的な何かですか?」

「いえ、私個人の趣味です」

「趣味……」

「はい、趣味です。他に質問がなければ移動しましょう」


 変わった趣味だなと思いつつ神殿へと足を運ぶ。神殿は少し大きめの町であれば必ず一つはあるもので加護の判定などは結構身近なものだ。しかし加護の付与と言うのは聞いたことが無い。神託を受けたからボーナスみたいなものだろうか。


「では右手を」


 祭壇近くまで行くと使者にそう言われ右手を差し出すと手袋を外して手を優しく握られる。女の人に手握られるのって何か思ったよりエッチだね……!などと考えていると右手に光が差す。

 光が止むとそこには歯車のような形の紋章が刻まれていた。この紋章の時の神クロノスだったかな?何で時の神様が?


「これにて加護は授けられました。使える権能は私どもには分かりませんが、魔王討伐の一助となることを願っております」

「ありがとうございました……?」

「私では無く神に感謝していただければと」


 そして加護を授かった?俺はみんなのいる宿へと戻る。


「でどうだった?」

「加護を授かったらしいんだけど特にスキルとか貰える感じじゃないんだな」

「お?いや、加護をもらったんならスキルが最低一つは貰えるもんだぞ?俺の『完全記憶』もそうだ。」

「それって使い方とか誰に教わるんだ?」

「俺のは使うっていうより常に発動してるタイプだからわからんが、聞いた話しによると加護を授かったタイミングでスキルの内容と使い方が頭に浮かぶそうだ」

「え?そうなん?俺なんもなかっただよ?」

「何だその方言……。お前の場合変な加護も付いてるし何かバグってんじゃねぇか?」

「バグってるってお前……。どうすんだこれ……」


 魔王と戦おうというのに詳細不明の加護と爆弾みたいなスキルだけじゃ話しにならん。そう思い宿の部屋で色んな必殺技名を叫んでいると壁ドンされた。ごめんなさい。


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