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11.トナーリの村へようこそ


「やーっと着いたぜ!」

「そんなに遠くもなかったじゃない?」

「お前らは戦えて良いよなぁ!荷物持って立ってるだけの俺はとっても長く感じたなぁ!」

「ははは……」

「いい歳して拗ねんなよ…」


 道中何事もなく隣町に着いた俺たちは素材の換金と汎用討伐依頼の報酬を貰うべく冒険者ギルドへと向かうことになった。


「ようこそ!ここはトナーリ町だ!のどかな景色が楽しめるぞ!」

「うわ…、まじで町の説明する人いるのか……」

「安直な名前だな」

「安直な名前ですね」

「トナーリって……王都から見たら全方位隣じゃない?」

「あれ!?思ったより辛辣!?」


 突然何の得があるのか分からない説明をする不審者に声をかけられ、せっかくなので美味しい店を聞き冒険者ギルドへ急ぐ。しかしホント町の説明して何の得になんのかね?


「いらっしゃいませ。ご依頼でしょうか?ご登録でしょうか?」

「汎用討伐依頼の報酬をお願いします」

「承知しました。こちらで受け付けるので討伐証明となる部位を出してお待ち下さい」


冒険者ギルドで依頼の達成を報告すると綺麗なお姉さんが出迎えてくれる。メガネは知的さを演出し、束ねた髪もまたキュートだ。胸も豊穣の神の加護を……ってあれ?


「お姉さん王都にいなかった?」

「あぁ、多分私の姉ですね。王都で冒険者ギルドの受付をしているので」

「あぁ、どおりで見覚えがあると…。それよりこの運命的な出会いを祝ってこのあtイタタタタ!?サラさん耳は取っ手じゃないですことよ!?」

「三度目は無いわよ?」

「……はい」


 これ以上はマズイと思い静かに椅子へと座る。お姉さんはアルミラージの角を見ながら書類に何かを記入しており、それを静かに見守る。


「はい、ではこちらが報酬となります。部位は隣の素材屋で買い取ってもらえるのでお持ちいただけると幸いです」

「ありがとうございます」


 報酬を受取り隣の素材屋へと足を運ぶ。中にはごちゃごちゃと様々な魔物の素材が乱雑の置かれており、メガネをかけた神経質そうなおじさんが対応する。


「素材の持ち込みですかな?」

「はい、アルミラージの皮と肉、それと角を数点です」

「どれどれ…。おぉ、なかなかいい腕をお持ちで、解体の経験が?」

「えぇ、仲間が昔解体屋で働いていたもので」

「なるほど、これ程綺麗な状態でしたら多少色を付けてこれくらいでどうですかな?」

「はい。ではそれで」


 解体が綺麗だった為かおじさんが少し嬉しそうな表情になる。隣でジョンが誇らしげにドヤ顔してたのでとりあえず引っ叩いておく。その後、不審者のおじさんに教えてもらった店で昼食を済ませる。メニューはパンとサラダに味付けのされた肉だった。


「で、この後どうするんだ?」

「とりあえず宿を確保して、時間もあるしその後依頼も少しこなしておきたいわね」

「国からの支援金もあるしそんな急がなくても良いんじゃないか?」

「お金はいくらあっても困らないでしょ?それに今のうちに強くなっておかないと魔王なんて一生倒せないわよ」

「だってよ?ジョン」

「オメェもだろうが!」


 ということでサラとジョンが宿の確保、俺とルシールで依頼の確認に行くこととなった。


「いらっしゃいませ…あれ?忘れ物でもしましたか?」

「いえ、時間も早いので簡単な依頼をこなそうかと」

「そうでしたか。でしたらこちらが今ある依頼ですのでご確認をお願いします」


 そう言われ『E』と書かれたバインダーを一冊手渡される。


「このEってのはなんですか?」

「お客様のランク毎に依頼の割り振りをしているので、『E級冒険者への依頼』をまとめたものという事ですよ」

「へぇー、あれ?冒険者カードにはランクなんて無かったような」


 そう言って自分の冒険者カードを確認するもやはりランクは記載されていない。


「はい、冒険者のランクはギルド側でのみ管理、使用しているのでカードには記載されない情報になります」

「へぇー」

「アレスさん。この依頼なんてどうですかね?」

「どれどれ?ゴブリンの討伐と生態調査?」

「そちらは最近この町の近くでゴブリンが徘徊しているのが目撃された為出された依頼となります。主な目的はどれくらいの数がどこにいるかの調査で討伐はできたら追加報酬が出るというものになります」

「なら最悪危ないと思ったら調査だけで切り上げても問題なさそうだな。なら受けてみるか」

「ではこれでお願いします。パーティで受注します」

「承知いたしました。気をつけて行ってらっしゃいませ」


 依頼を受け町の入り口に戻るとサラとジョンが先に待っていた。


「どう?何か良い依頼はあった?」

「ゴブリンの生態調査受けてきた。討伐すれば追加報酬だと」

「うげぇ……。ゴブリンって臭いし汚いしキモいし嫌いなのよね……」

「まぁまぁ、今日はちょっと奮発して風呂付きの宿取ったし良いじゃねぇか」

「お、風呂付きなのか、良いねぇ」

「だろ?」


 雑談をしつつ依頼書に記載されていた位置まで移動する。洞窟の近くまで着くと獣臭さが鼻に付きサラが顔をしかめる。


「この臭い…いるわね。しかも結構な数じゃないかしら?」

「分かるのか?」

「普通こんなとこまで臭いしないわよ。数が多い証明ね」

「どうする?帰るか?」

「何いってんの。最低でもどれくらいいるかくらいは確認しないと」

「んじゃ行くか。みんないのちだいじに」


 意を決して不気味な雰囲気の洞窟へと足を踏み入れる。ところどころがぬかるんでおりかなり歩きにくい。


「おい、そこ罠あるから気を付けろよ」


 ジョンの忠告を聞き足元の水たまりを見ると先端を尖らせた木が敷き詰められていた。


「うお!危ないな…!しっかしゴブリンってアホなイメージだったけど罠とか仕掛けるもんなのか?」

「普通…では無いわね。もしかすると知能の高い個体がいるかも知れないから注意なさい」

「へいへい…っと?」


 不意に足に何かが引っかかる。それと同時に横からジョン目掛けて槍が飛び出す。しかしちょうど靴紐を結んでいたらしく槍はジョンの頭のあった位置を素通りし反対側の壁へと突き刺さる。


「っぶね!お前これ運悪かったら死ぬぞ!」

「ホントすまん!これからは気をつける」

「頼むぞ!?俺はただのフリーターだからな!?こんなん当たったらマジで死んじまうぞ?」


 悪意を滲ませた罠に緊張感を増し、それまで以上に警戒心を強めて奥へと進む。すると広場のような空間へと辿り着く。壁際には食べかすや盗んだと思われる鉄製の食器や農具などが散乱しており、部屋の各所で薄緑色の小人がいびきをかきながら眠っていた。


「大体9匹ってところかしら。私の魔法で固まってる6匹を処理するから残りの3匹を頼むわね」


 気付かれないように無言で頷くとサラが小声で詠唱を始める。俺とジョン、ルシールは剣を構えて離れた位置にいる三匹に忍び足で近寄る。


「~~~~~火よ!」


 詠唱が完了したのか人の背丈程もある火の玉が固まって寝ていたゴブリンへと襲いかかる。その音を合図にそれぞれ担当のゴブリンの首元に剣を突き立てる。うぇ…ヤな感触だ。


「やったか?」

「おい!フラグ建てんなジョン!」


 突然フラグを建てるジョンを諌めつつ部屋を見渡す。固まって寝てたゴブリンは半ば炭と化し、三人で担当したゴブリンも首の近くに血溜まりを作り置き上がる気配もない。


「これで依頼達成ね。帰りましょう」


 サラがそう言い振り返った瞬間鈍い音がする。


「ガハッ!」


 そんな声を出しながらサラが俺の足元まで吹っ飛び地面を擦りながら静止する。


「おい!大丈夫か!?」


 返事は無い。あまりの衝撃に意識を失ったようだ。怪我の具合を確認する為に体を見ると、細い腕は赤黒く変色し変な方向へと曲がっている。


「おい!お前はサラを治せ!俺たちでこのデカブツをどうにかする!」


 そう言われ入り口の方に目をやると棍棒を持ち、粗末な防具を身に着けた2メートル程あるゴブリンが立っていた。ゴブリンの上位種『ホブゴブリン』だ。


「グルアアアァァァ!!」

「オラァ!」

「グギャァァァ!」


 威圧する為に叫び声を上げるホブゴブリンだったが、それをものともせずジョンが近くにあった農具を投げる。目を押さえてうずくまっているところを見るに目に刺さったようだ。


「待ってろよサラ!今治してやるからな!」

「…………」


相変わらず返事はないが俺はサラの折れた腕を手で包み「治れ」と必死で願う。すると今まで感じた事のない程体から何かが抜ける感覚を覚えて意識を失いかける。成功したか確認してみると腕は傷ひとつ残っていない状態になっていた。


「良かった!成功した…!」


 無事腕が完治したことに胸を撫で下ろして立ち上がり、サラの腕を折った憎いホブゴブリンに目をやる。


「オラァ!」

「~~~~雷よ!」


 ジョンは近くにあるものを手当たり次第に投げつけ、ルシールは雷の魔法を使いホブゴブリンを攻撃する。ホブゴブリンは体のあちこちが焼け焦げナイフやフォーク、包丁などが突き刺さっており、息も絶え絶えだ。俺はサラの仇を取るべく近くに落ちていた鍬を持ちホブゴブリンへと駆け出す。


「サラに何してくれとんのじゃボケがぁ!!!」


 そう叫び鍬を振り下ろすと「グシャ」と何かの潰れる音と共にホブゴブリンの頭に鍬が刺さる。そしてホブゴブリンは左右にゆらゆらと揺れた後地面に崩れ落ちる。


「はぁはぁ……クソッ…!早くサラを連れて町に戻るぞ……」

「あぁ……」


サラを安静な場所に移すため振り返ると地面が突然起き上がる。あれ?なんだこれ?そう不思議に思っていると視界が霞んでいく。


「おい!大丈夫か!」

「大丈夫ですかアレスさん!」


ジョンとルシールの叫び声を耳にしながらやがて俺の意識は深い沼へと沈むように暗転した。


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