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10.一狩り行こうぜ!


「というワケで一狩り行こうぜ!」

「というワケでってお前……」


 俺は王都へ着くと一目散にジョンのいる酒場へと駆け込んだ。だって王都に知り合いなんて居ないんだもん……。


「いーこーおーよー!」

「子供か!俺にだって仕事があるんだ。それに魔王なんて仰々しいモンに挑むフリーターが居てたまるか!」

「お前が初の魔王討伐フリーターになるんだよ!」

「ならんわ!他を当たれ!」

「えー……」

「良いじゃねぇかジョン。行ってやれよ」

「店長!俺が居なくて店はどうするんですか!?」

「お前が居なくたって潰れやしねぇよ。それよりも魔王を倒すってことは勇者一行ってことだろ。そのメンバーにウチの店員が選ばれたってんなら宣伝にもなるしな」

「薄情すぎる!可愛い店員が命の危機に晒されるんですよ!」

「男だったら一回くらいそんな経験もあっていいだろうよ。これは店長命令だ、グダグダ言わねぇで行って来い」

「ほら!店長も賛成だってよ?行こうぜジョン」

「あークソ!しゃーねぇ行ったるよ!」

「本当は嬉しいクセに?」

「いや、普通に迷惑だからこの旅が終わったら縁切る予定だ」

「やめろジョン、真顔は俺に効く」


 こうしてジョンをパーティに引き込むことに成功した俺はそのままもう一つの心当たりに向かうことにした。


「で、なんで俺はこんなとこで何時間も待たされなきゃいけないんだ?」

「だってルシールがどこにいるかわからないんだもん……」


 俺とジョンはルシールに会うべく冒険者ギルドで待っていた。流れ的にすぐ会えると思うじゃん?夕方まで待つことになると思わないじゃん?


「ちょっくら飯でも買ってくるか」

「やめて!俺を置いてかないで!一人になったら寂しいじゃない!」

「やめろ!服を引っ張るな!」

「何してんのよアンタら……」


 振り返ると買い出しを終えたサラが立っていた。


「ルシールも誘おうかと思ったんだけどなかなか会えなくて……」

「ずっとここで待ってたワケ?頭使いなさいよ、受付に伝言残せばいいでしょうが」

「「oh...」」


 男二人でそんな簡単な事にも気づかなかったことを後悔しつつ受付へ向かうと聞き慣れた声が聞こえる。


「あれ?アレスさんじゃないですか。こんなところでどうしたんですか?」

「ルシールぅーー!」

「ちょ、ちょっとアレスさん!?どうしたんですか!?」


 再会を喜びながら戸惑うルシールに事のあらましを伝える。


「んー……。魔王討伐ですか……。」

「え?来てくれないの……?」

「いえ、行きたいには行きたいんですが僕で大丈夫かなと……」

「ダイジョブダイジョブ!農民とフリーターですら行くんだからお前なら余裕だって!」

「今更だけど不安になってきたわね……」


 それでも考え込むルシール。その様子を静かに待ち続けると決心したような目で告げる。


「分かりました。どれくらい力になれるか分かりませんが行きましょう!」

「よっしゃ!ルシール ゲットだぜ!」

「じゃあ少し準備が必要なので明日の昼に酒場で待ち合わせで良いですか?」

「いきなり行くのは流石に無理だよな。それで問題ないぞ」

「ありがとうございます。ではまた明日酒場で」


 ルシールとの別れを済ませ、ふと気がつく。


「そういえばジョンは準備とかいらないのか?」

「あぁ、酒場で寝泊まりしてるし荷物も貯金も無いしな。」

「そんなモンか?」

「そんなモンだ」

「そういえば明日酒場で集合なら今日は酒場に泊まるのかしら?」

「そうなるな。頼むぞジョン」

「えぇー…。俺別に今日着いて来なくてよかったんじゃないか?これ」


 ジョンの素朴な疑問を無視し、俺たちは酒場に泊まることとなった。


---------------翌日---------------


「よーし!気を取り直して出発だ!」

「「「おー」」」

「何だお前ら元気が無いぞ!昨日寝れなかったのか?」

「ワクワクして寝れなかったのはアンタでしょ。目の下のクマすごいわよ?」

「僕は少し緊張しちゃって…」

「俺は今になってこの旅に出て何の得がるのかと考えてるところだ」

「そういえば言って無かったわね。今回の旅は同行者も報奨金が出るそうよ?」

「え?マジで?どれくらい出るんだ?」

「このくらい出るだろうって話しだけど、もう少し増えるかもしれないって言ってたわ。」


 サラに出された紙をふむふむと読むジョン。


「お前らぁ!絶対魔王討伐するぞ!エイエイオー!」

「現金なやつだなぁ……」


 気を取り直してようやく冒険の始まりだ。まずは経験を積む為、討伐依頼を受けながら隣町を目指すこととなった。


「そういえばどんな依頼を受けたんだ?サラ」

「汎用討伐依頼ね」

「ハンヨウトウバツイライ?」

「国内の魔物を倒した場合、証明できる物を持って帰ればその魔物の危険度に応じて報酬が貰える依頼よ」

「誰が得するんだ?」

「国からの依頼よ。まぁ国内の魔物は減った方が都合が良いんでしょ」

「そんなもんか?」

「そんなもんよ」

「皆さん!アルミラージが居ますよ!」


 ルシールの指さす先を見ると角の生えた兎が居た。クリクリな目がきゃわわわ!


「おーよちよち!可愛いでちゅね~」

「あ、そんなに近寄ると危ないですよアレスさん!」

「大丈夫だよ、所詮兎だし草食だろ。それにこんな可愛い動物殺せるかよ?」

「アルミラージは肉を含む雑食です!人を襲う生き物ですよ!」

「へ?」


 そう言われアルミラージを見ると。クリクリな目でこちらを見据え、50センチもあろうかという角がこちらに向けられる。その体勢のまま足に力を込めたかと思うと一直線に俺の胸目掛けて飛び出した。


「っぶねぇ!」

「ふん!」


 間一髪でアルミラージの突進を避けるとすかさずルシールが細身のレイピアでアルミラージの首筋を貫く。


「おぉー!」

「これでも一応冒険者を目指してましたからね」

「俺解体できるからやるぞ?」

「解体なんてできるのかジョン?」

「あぁ、素材屋でもバイトしてたからな」

「さっすがフリーター!無駄に経験の幅が広いぜ!」

「褒め……られてねぇな……」


 ルシールからアルミラージを受け取ると首を締めトドメを刺す。そのまま鮮やかな手付きで解体を進めてアルミラージは肉、毛皮、角へと姿を変えた。


「どんなモンよ」

「手際が良いですね。これからはジョンさんに頼んだ方が良さそうです」

「おう、戦闘以外なら任しときな!」

「頼りになるわね」


 ジョンの予想外の手際に称賛を送る面々。あれ?俺いらないんじゃね?


 その後、何度かアルミラージを討伐するもののルシールが剣で刺し、サラが魔法で焼き、ジョンが解体していく。俺?俺は荷物持ちサ!


「じゃあここらへんで昼食でも取りましょうか」

「そうですね。別に急ぐワケでも無いですしゆっくり行きましょう」

「メシなら俺作れるぞ?酒場で調理もしてたしな」

「道具はあるの?」

「調理器具は持ってきてるから火頼むわ」

「じゃあ僕が魔法でつけますね」


 昼食を取ることになりジョンが竈を組み立てていく。


「へぇーアンタ結構旅慣れてる感じ?」

「あぁ、何度かな。それに『完全記憶』のおかげで本の内容を忘れないから大抵のことはできるぞ」

「一家に1台ジョンが必要だな」

「痛っ……」

「どした?」


 じゃがいもの皮むきを手伝っていたルシールが手を抑える。


「慣れないもので、手を切ってしまいました……」

「なら俺の出番だな」

「回復魔法でも使えるのか?」

「まぁ見てなって」


 そう言ってルシールの指を俺の手で包み力を込める。


「ハッ!」

「痛く…なくなったような?」


 手を離すと指の怪我は綺麗に治っていた。


「おぉー、無詠唱で回復魔法使えるなんて何気にすごくねぇか?」

「いやー……回復魔法ってワケじゃないんだけどさ。何か治れー治れーって念じると怪我とか直せるみたいなんだよね」

「みたいなんだよねって他人事だな」

「実はカクカクシカジカで」

「マルマルウマウマ」


 そうしてジョンとルシールに加護をもらったが何の神であるか分からないこと。その神の加護のおかげか回復魔法のような魔法が使えることを説明する。


「何の神か分からないなんて事あるんだな。ま、お前に加護授けるならよっぽど暇な神様なんだろうよ」

「酷ぇ!お前なんか神様に呪われちまえ!」

「残念だが俺はユニークスキル持ちだ、敬え凡人」

「へへぇ~」

「激弱ね」

「激弱ですね」


その後雑談をしながら昼食を済ませ、魔物を倒しながら隣町を目指す。あれ?俺ってヒーラーなんか?勇者ポジじゃないんか?

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