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8.愛しの我が家へ

「どうしてこうなったんだ……!」


 子供の悲痛な泣き声に破壊を楽しむ残虐な笑い声が入り乱れ不協和音を織り成す。


「俺は……!サラの笑顔が見たかっただけなのに、どうしてこんな……!」


 畑は見る影も無いほど凄惨に荒れ果て、事の重大さを伺わせる。


「あぁ神よ!あなたが本当にいるならどうしてこんな残酷なことができるんだ!」


 俺は無惨にもバラバラに壊れてしまった野菜を抱きかかえ泣き叫ぶ。


「うわあああぁぁぁぁあ!!!」



---------------数時間前---------------


「一時はどうなるかと思ったけど大したことなくてよかったな」

「ホントにね。帰ったらモブロスさんにお土産渡してお礼しないとね」


 俺たちはルシールやジョンと別れた後、タイミング良く出発する乗り合い馬車に乗ることができた。


「あの魔法での宣戦布告を見た時にはまた戦争が始まると思っってヒヤヒヤしたわい」

「おじさんは招集されても補給部隊だろうし多分大丈夫でしょ?」

「モブロスがキレなければな……」

「あぁ、それは重要だね……」


 モブロスさんの恐怖に落ち込んでいるといきなり馬車が止まり、怒声が響く。


「そこの馬車止まれぇ!!」


 男の野太い叫び声で車内に緊張感が広がる。


「もしかして盗賊か!?やっと冒険者らしいイベントが来たのか!?」

「ちょっと待ちなさい、何か様子が変よ?」

「へ?」


 サラにそう忠告され、逸る気持ちを抑えて外の音に聞き耳を立てる。


「そこの馬車!俺たちを乗せてくれ!アイツが…!アイツが来る!!」

「落ち着けアンタら、馬車はもう満員なんだ。それにアイツって誰なんだ?」

「説明してる時間は無いんだ!どこでも良いからアイツの居ないとこに連れてってくれ!」

「困ったなぁ……」


 外では何やら錯乱した男達が馬車に乗ろうと御者を困らせているようだ。


「クスリでもやってんのか?」

「そんな人達が何でワタシ達の村の近くにいるのよ?」

「クスリ巡りツアーの団体客とか?」

「一発アウトよそんなツアー」

「よしここはワシが様子を見てこよう。お前たちはここで大人しくしてるんだぞ」


 そう言いおじさんは馬車を降りて行った。俺とサラは何かあればすぐに駆けつけられるように準備をしつつ外の様子を伺う。


「何があったんだ?」

「いや、それが……」

「早くしろ!アイツがもうすぐそこまで来て……」

「ギャッ!やめろ!俺たちが悪かった!もうしないk…グハッ!」

「あぁ……。もう手遅れだ……」

「お、お前は……!」


 外での状況が一層慌ただしくなる。俺とサラは『アイツ』の顔を見る為に外へと飛び出した。


「お、お前はジョン!?」

「何でこんなとこにいるのよ」


 外に出てみるとザ・山賊と思われる格好をした男たちが死屍累々と倒れている。そしてその中心に山賊達の返り血を浴びて赤黒くなった服を纏って笑顔で佇むジョンがいた。


「ジョンって誰のことだい?僕はモブロスだよ?」

「あ、モブロスさん?すみません、街で似た人と仲良くなったもので……」

「見間違えるなんて余程僕に似てたんだね。アレス君にも友達ができたようで何よりだよ」

「ってかそんなことよりどうしてここに?と言うよりどうしてこんな事に?」

「あぁ、ちょっとトラブルがあってね」


 モブロスさんは笑顔を崩すこと無くハンカチで顔や手の血を拭いながら事のあらましを語った。


------------------------------


「アニキ!何もこんな時に村襲わなくって良いんじゃないですかぃ?」

「何いってんだ!こんな時だから襲うんだよ!」

「と、言いますと?」

「そんなんだからお前はいつまで経っても馬鹿のままなんだよ!考えても見ろ、さっきの宣戦布告を見たんなら村人は王城へ一目散に逃げていくに決まってる。そうしたら俺たちはもぬけのカラとなった村で楽に仕事ができるってもんよ!」

「さっすがアニキ!やることがこすいぜ!」

「褒めんな褒めんな。お、アレがサイショ村だな。いかにも平和ボケしてそうな村だぜ」

「アニキ!大変です!村人が逃げてませんぜ!殺していただくモン頂いちまいますか?」

「困ったな、人を傷つけるのはポリシーじゃないんだがな……」

「さっすがアニキ!やってることは外道なのに一抹の優しさを忘れねぇぜ!」

「褒めんな褒めんな。しっかしどうするかね?流石にそろそろ稼ぎが無いとこっちが干上がっちまうし……」

「それでしたらアニキ。適当に暴れて逃げさせてからゆっくり物色すれば良いんじゃないですかぃ?」

「冴えてるなお前、それで行こう。くれぐれも村人が怪我しないように注意しろよ野郎ども!」

「聞いてたか野郎ども!盛大に騒いで村人を追っ払うぞ!」

「「「「 お う ! 」」」」


 そして手当たり次第に暴れ、目についた空箱や空樽を破壊し怒鳴り声を上げる盗賊達。


「オラァ!さっさと逃げねぇと酷い目にあうぞ!オラァ!」

「キャー!」「ママー!」「まずい!逃げるんだ!」


 盗賊達の強面もあってか予想以上に作戦は順調に行った。しかしそれを見て止めに入る男が一人。


「君たち何をしてるんだ!」

「なんだァ?てめェ……」

「僕はこの村を任されているモブロスと言う者だ。要望があれば僕が対応するから話をしよう」

「交渉は無駄だ!俺達はお前らがどっか行くまで騒ぎ続けるだけよ」

「僕らが村から出ていくのが目的なのか?出ていった後は何をする気だ?」

「そりゃ、おめぇ……。山賊と言えば奪うだけよ!」

「略奪が目的なのか?金銭はどのくらい欲しいんだ?」

「そりゃあ、あればあるだけ良いに決まってんだろうが」

「無制限に金銭を渡すことは無理だ。僕らにも生活がある」

「それもそうだな……って交渉は無駄だと言っただろうが!」

「痛っ!」

「あ、すまねぇ。肘がぶつかっちまった。大丈夫か?」

「………」

「おい大丈夫か?打ちどころ悪かったのか?」

「………血ィ………」

「あ?何だって?」

「血ち血チ血ィ……」

「アニキ!こいつ何か様子がおかしいですぜ?」

「血ィィィィイイイイ!」

「うわぁー!逃げろお前ら!コイツはやべぇ!」

「血ィィィィイイイイ!」

「ギャァァァ!」


------------------------------


「という事があってね。少し頭に血が登ってしまってこんな状況になってしまったんだ」


 そう言ってモブロスさんはどこから出したのかシミひとつ無いシャツに着替え襟を正す。


「パネェっすね」

「パネェわね」

「パネェ……?」

「何でもないです!それよりコイツらどうしますか?」

「んーここから王都に連行しようにも人数が多いから時間がかかりそうだね」


 その後意識を取り戻した山賊がモブロスさんを見て錯乱するのを宥めながら話しを聞き、絶妙に優しさを感じるのとモブロスさんの恐怖が刻まれている為、今後悪事をしないように説教をして開放する流れとなった。


「やーっと帰ってきた!一日離れただけなのにえらく久しぶりに感じるなぁ!」

「アンタは村から出ないから余計にそう感じるでしょうね」

「そういえば俺の野菜達は元気かな?待ってろよ!俺が今行くからな!」


 愛しの野菜達と再会するべく俺は走りだす。今回の野菜達はある目的の為に育てていた特別な物なのだ。懐かしの我が家に到着し、裏庭にある畑を確認する。


「よし!問題ないな。育て方が良いから一日水をやらなくっても元気だなお前たち!」


 お日様を浴びてキラキラと輝く野菜達。少し遅れてしまったが目的の為に収穫させて頂こう!


「アレス兄ぃ!帰ってきたの!」「アレス兄ぃ!おかえりなさい!」「アレス兄ぃ!王都はどうだった?」

「おう3バカども。ただいま、王都はすごかったぞー」

「「「いいなぁー!」」」

「お前達ももう少し大きくなったらお父さんやお母さんに連れてって貰えるさ」


 まくし立てるように出迎えてくれたこの子達は「ロン」「コーディ」「アン」の3人だ。年が近いこともあってかいつも一緒に行動しており、根はいいのだが少しだけイタズラっ子な気質もある子たちだ。


「そういえばサラお姉ちゃんの誕生日プレゼント用意した?」

「おう!今から準備するところよ。お前たちも手伝うか?」

「「「やるー!」」」


 そう、何を隠そう今日はサラの誕生日なのだ。俺は誕生日プレゼントとしてサラの好きな野菜を丹精込めて育て上げ、過去一の出来に仕上がっている。ちなみに野菜だけだと確実に嫌われるので保険として小洒落たネックレスも用意してあるので心配無用だ諸君。


「引き抜く時は周りの土を掘って丁寧に取り出すんだぞ?これは特別製だからな!」

「「「はーい」」」


 概ね収穫し終えたので残りの作業を子供達に任せて俺はサラの家へ向かう。


「コンコン!サーラ!雪だるまつくーろぉー!」

「うっさいわねアンタ!何意味不明なこと叫んでるのよ!」

「サラ……。少し時間もらっても良いか?」

「何よ改まって……」

「少し俺に付き合って欲しいんだ」

「別にいいけど、何よ?」

「着いてくればわかるさ。」

「はぁ?」


 何がなんだか分からない様子のサラを連れて俺の家に向かう。しめしめ、今回の騒動で自分の誕生日も忘れてしまったようだ。これはサプライズ成功間違いなしだろう!


 家に着くと泣き声と笑い声が入り混じる声が聞こえ、嫌な予感がして裏庭へ急ぐと凄惨な光景が目の前に広がる。ロンは泣きながら、アンは笑いながらお互いに野菜をぶつけ合っており、コーディは熱心に野菜を水洗いしている。


「どうして……こんな……なんで……」

「アンが野菜ぶつけるのぉ!!」

「キャハハハハ!!」

「……」


 うなだれる俺の肩をサラが叩き笑顔で言う。


「で、これを見せたくて呼んだワケ?」

「サラの……。3馬鹿が……。誕生日で……。喜んでもらおうと……。うわぁぁあん!!」

「よしよし、ワタシの誕生日プレゼントを用意してくれたのね?」

「グスッ!ヒック!うん……。ヒック!」

「よしよし、祝ってくれるその気持だけで十分嬉しいわよ」

「グッス!…本当?」

「本当よ。じゃあ落ち着いたみたいだしこのカオスな状況をどうにかしましょうか」

「…うん!」


その後サラによって宥められた子供達と後片付をし、砕けてしまった野菜たちで夕飯を作り、全員で食べて無事誕生日パーティを終了した。ネックレスはガキどもの見てない時にしっかり渡したから問題ない……はず?


「三角星@小説家になろう」って名前でツイッターアカウント作りました!


現状だと更新情報呟くだけですけど、お手空きの際にでも「@MsMr00000」で検索してフォローして下さると嬉しいです!

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