決戦前夜の一夜漬け
突然だが、明日は武道部との決戦だ。
カンナの父親が経営している酒場を貸し切り、作戦会議を進める文学部の仲間達。
元々作戦会議と言っても、誰がどの順番で戦うか、最後に控えるウェポンマスターのリヒトに対して、どう立ち向かうのか、それ位しか対策の立てようがない。
何故なら、最後にリヒトが居る事以外には、誰が参加するのかすらも分かっていないからだ!
「……そう考えると、結構私達って不利な状況よね……相手からしてみれば、文学部のメンバー全員対策する事だって出来るもの」
文学部の部長であるサーヤが、自信無さげにため息を吐く。
「その為にあたしとブンドゥクが出るんだって! あたしはともかく、文具使いはブンドゥク以外に存在しないんだからさ!」
「ま、まぁ最悪俺が三人倒すからさ……みんな危ないと思ったら降参してくれよ?」
カンナは俺の戦闘力を信頼しきっている様だ。
怪我人が出る可能性もあるしな。
出来る事なら、俺だけで三人相手にした方が良いとは思う。
文具使いの能力は、この世界を書き上げた神である作家神から与えられた物だ。
戦闘経験は浅いが、この何でもアリの力ならば、ウェポンマスターが相手だとしても勝ち目はある……と、思う。
自信は無いが、カンナにカッコ悪い所は見せたく無い。
これでも一応男の子だからな!
って言うか幾ら決闘とは言え、流石に学生同士の喧嘩で流血沙汰にはならないよな!?
「ふむ……念の為じゃ、特別に、わしから文学部の皆へ、特別な加護を与えよう。存分に戦うといい」
そう言って、作家神が小さな文房具を取り出した。
「これ、消しゴムですか? これも何か特別な力が?」
「うむ、これは仮死後無じゃよ。仮に死んでしまったとしても、後からその事実を無かったことに出来る物じゃ」
死ぬ事も想定するって、流石に物騒過ぎだろ!?
いや、使わないに越した事は無いよな。
俺だって人殺しは嫌だし、死ぬのは誰だって嫌な筈だ。
俺は一度死んでるけどな。
作戦会議は終わった、文具神からの加護もある。
後は、ストーリーテラーである俺が、どの程度戦えるかだ。
その為に与えられた武器がこの竹の定規。
素刀・理威転乱。
見た目は小学校で使う様な竹の定規だ。
それを剣の様に振るって扱うのだろう。
作家神から、この文房具の扱い方の指南書も渡されている。
この戦い、一晩で俺がこの剣をどれだけ理解出来るかで勝負は決まるだろう。
今日は徹夜だな。
何時もはワープロ学園の学生寮で生活している俺だが、今日はカンナの家に泊まることになった。
俺とカンナ以外の文学部メンバーは学生寮に戻る様だ。
「ブンドゥク、まだ寝ないの?」
「……ああ、今日は徹夜かもな。俺がこの武器の能力を完全に理解しないと、勝ち目は無い」
「そっか……頑張ってるね」
俺の隣に椅子を運び、カンナと並んで座る。
「いや、カンナは寝なよ。明日はカンナだって戦うんだぞ? 出来れば怪我はしてほしくないし」
「ブンドゥクが頑張ってるんだから、あたしも頑張るよ。何かして欲しい事とか無い? 何でもするから!」
流石にそこまで言われてしまったら、断るのも失礼かもな。
「じゃあコーヒー飲みたいな。ブラックで」
「うん! ちょっと待っててね!」
そう言って、カンナがコーヒーを淹れに行った。
徹夜で何かをするなんて、日本にいた頃でもゲーム位でしか徹夜した事無いな。
それがまさか、一夜漬けみたいな事で徹夜するとは……
ここまで熱心に勉強したのも、初めてかもしれない。
嫌々やっているんじゃない。
それが今、俺のやりたい事なんだ。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
なるべく長く投稿していきますので応援して頂けると励みになります!
ブックマークや評価等、頂けたら嬉しいです!
よろしくお願いします!