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文房具の本当の使い方

 突然だが、俺の人生に春が訪れたかもしれない。


 そう思い始めたきっかけは、俺が初めてブンドゥクと呼ばれた時からだ。


「えっと、どちら様ですか?」


「え〜? もうあたしの事忘れちゃった感じ? あたしが必要だ、あたしと居られて幸せだったって愛を囁いてくれたのに?」


 何を言っているんだコイツは。


 これは何だ、詐欺の一種か!?


 ここで俺がホイホイついて行ったら、怖いお兄さんに連れて行かれたり、高価な壺を買わされたりするアレじゃないのか!?


 それからと言うもの、この金髪褐色ギャルは、常に俺と共に行動する事になった。


 誤解の無いように言っておく。


 精神操作魔法なんて絶対に使ってない。

 作家神に誓って、魔法はやってません。


 確かに俺の能力で言うと、魅力の評価がヤケに高いのは確かだ。


 だが、それは能力値としての話しだ。

 俺がこの……


 健康的な褐色肌で、黄金に輝いている綺麗な髪の、派手ではあるが、化粧とかで作っている訳では無い美しい顔の、常にくっついてくるこんな美少女に好かれる要素が、俺にあったのか?


「ブンドゥクってあたしの事好きなの?」


 ニヤニヤしながら見てくる。

 これは非常に不味い。


 確かにこのシチュエーション、俺が一目惚れしたかの如く意識して、ジロジロ見てたのは否定出来ない。


 でも、流石に早すぎるだろう。


 え、まさかここで俺が素直に好きって言ったら、これでカップル成立なのか?


 どうする、どうすればいい。


「よーし、今日は今後の課外活動で、背中を預け合う相棒、バディを組んで貰うぞーさっさと二人組作れよー」


 教師の一声で、次々とバディが成立していくクラスメイト達。


 不味いな、俺もさっさと探さないと。




 結局、現地に行っても成立しなかった所で、金髪褐色ギャルのカンナとバディが成立し、三人になってしまうが、眼鏡の大人しそうな女の子、サーヤともバディが成立する。


 巨大スライムとの戦闘が終わって、一息ついた所だ。


「流石ブンドゥク! あの作家神が力を授けただけあるよね! お父さんがあたしと結婚させたがる訳だ!」


「……は? 結婚!? いつの間にそんな関係に……ってお父さん? まさか店長の!?」


 今思い出した。

 この世界では酒場のオーナーだった店長の娘。


 肌の色が同じだ。

 耳は人間の物になってるけど。


「わぁーい! やっと思い出してくれた!」


 そう言って、下着姿のまま勢い良く抱きつかれて、押し倒されてしまう。


 見つめ合う俺達。

 美しい顔が、どんどん迫ってくる。


 俺はいったいどうなっちゃうんだ!?




 気が付いたら俺は知らない部屋に居た。


 良い所で気絶した様だ。

 情けない。


「あ、起きた。大丈夫?」


 カンナが同じ部屋に居たみたいだ。


「思い出しちゃうな。ブンドゥクがあたしに、愛を囁いてくれた事。あの言葉があったから、頑張ってこれたんだ」


 ん?

 言ったっけそんな事。

 確かに話しをしたのは覚えてるんだが。


「えっと、俺の記憶が正しければ、陰キャオタクに優しいギャルは需要があるって言っただけであって……仲良くしてもらえて嬉しいとは言ったけど、別に愛を囁いた訳では無いと思うんだけど」


「……え、ウソ、でしょ? 全部あたしの勘違い……だったの?」


 そう言う事になる。

 俺に対してどんなフィルターがかかってたのかは知らんが。


「そ、そっかー……そうだよね。あたしってさ、結構聞き間違えちゃうからさ……本気で、あたしでも好きになってくれたんだって、思っちゃって……こんな、あたし――」


 何故、そこまで涙を流す必要があるんだ。


 俺の何処に好きになる要素があったんだ。


 いや、これは俺が悪いんだな。


 自分に対して、こんな美少女が好きになってくれるなんてありえないって、ずっと壁を作って、拒絶していたのは、俺の方だ。


 俺がちゃんと向き合わなかったから、カンナを泣かせてしまった。


「でも、でもね。例え勘違いだったとしても、あたしはブンドゥクの事、好きなのは変わらないから。だから、嫌いにならないで――」


 嫌いになんてなる筈ない。

 むしろ、何だかんだ俺だって意識していたんだ。

 それはきっと、カンナの事が――


「俺も、好きなのかもしれないから。よく分からないけど、一緒に居られて楽しいとか、嬉しいって気持ちは本当だから。嫌いになるとか、ありえないから!」


 ダメだ。

 こんな言葉じゃ伝わらない。

 どうすれば、どんな言葉をかければ良いんだ。


 そうだ、俺には神様から貰った力がある。


 俺の想いを込めて、このペンで、文房具を使って、想いを綴れば、きっと伝わる筈だ。


 それが、文具使いの力だから。




「『俺もカンナの事が好きです。ずっと一緒に居たいと思っています。こんな俺でも良ければ、付き合ってください』か……わざわざラブレター書くなんてね」


「その渾身のラブレターを目の前で読み上げるのもどうかと思うけどな!?」


 どうしてこうなった。

 何これ、どう言う状況なんだ。


「まぁ、ブンドゥクがあたしの事好きすぎるってのは伝わったから問題無し! これで両想いだね?」


 うん、両想いなのは良かった。

 だけどな、カンナ。


「ブンドゥクなんてふざけたあだ名、やめてくれないか!?」

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