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イーグント

「わぁ…」


街の前に着くとボクは思わず声が漏れた、門の奥に見える街を行き交う人々。露店のような物も見えて商品の説明らしき客引きの声がそこら中に飛び回っている。今にもそちらの方に歩きだしそうだがそれよりも先にやることがある。


「その子は?」

「実は…」


門番である人にリーダーであるセシリアさんがボクの事情を話している。ボクも起きてからの行動を門番さんに伝える、どうやら形式的なことだけなようでボクがテロリストの類とは思われていないようだ。今の名前とどこまで記憶があるか、それと恐らく人格診断らしい簡単な質問を受けた。門番のお兄さんもにこにこと怖がらなくても大丈夫だぞ~みたいな感じで声をかけてくれる。他の三人はカードを変な石で出来た何かの機械のようなものにタッチしていた。ボクは書類のような物に名前を書き母印を押した。結構書くこと多いな、毎回やるのは面倒かもしれない。

ちなみに文字を書けない場合は門番の人が書いてくれるようだ、でもボクが書けることに疑問を持っている様子もなかったしこの世界の識字率って結構高いのかな。記憶がなくても文字が書けることがある…? 文字の読み書きって勉強以外にも出るようになる方法とかあったりするのかな。


「おぉ…凄い人」

「そうでしょう、ここはいつもたくさんの人がいるんです」

「…なんでお前が胸張ってんだ」


キールさんが溜息を吐きながらそう呟くが本当に驚く、普通の人の他に獣耳や尻尾が生えた人や耳の長い物語で見るエルフのような人もいた。こういうのも見ると素直に興奮する、辺りに視線を向けているとふと気づく。そういえば全員武器や防具を身につけているな、剣やナイフや弓に杖などの武器を下げていていかにも冒険者って感じだ。


「あの…もしかしてこの街の人って…」

「おや、お気づきになりましたか。この街は冒険者が集まって出来た街と言われてまして住人のほとんどが引退した冒険者なんですよ。来る人も冒険者やその冒険者に物を売る商人で溢れているんですよ。ですからああいう風に武器を下げている方が多いんです」


なるほど…だから歩いているお爺さんとかもガタイがいいのか…と話を聞きながら歩いている人を見ていると近くを通った露店から声がかかる。


「そこの兄ちゃん達! いい果物が入ったんだ、一つどうだい?」


声をかけてくれたのはいかにも気前のよさそうなガタイのいいおばちゃんだった。その店員さんは林檎のような形をした黄色い果実を手に持ってギンリュウさんに売り込みをしている。よく見ると露店には氷がある、過ごしやすいとはいえ氷なんかあればすぐに溶けてしまうと思うのだがどうして氷が残っているのだろう。


「すまない、氷を貰ってもいいか?」

「あいよっ、『アイス』」


露店の人が変わった服を着た人に声をかけ硬貨を数枚投げる、その硬貨を受け取った青年は右手を向けると氷の塊が出現し。露店の人はその氷を受け取った。なるほど、氷を売る商売みたいなものもあるのか、氷の魔法が使えない人からすると助かる職業なのかもしれない。視線を元に戻すとギンリュウさんが林檎のような果実を買ったようで一つボクに渡してくれた、キールさんとセシリアさんは断ったらしい。


「よければどうぞ、よく冷えていて美味しいですよ」

「あ、ありがとうございます」


受けとった果実を恐る恐るかじってみると不思議な…というかオレンジみたいな柑橘系の味がする。見た目も触感も林檎なのに味はオレンジ、不思議だ。

口には合うけどこの世界の食べ物は他もこんな感じなのだろうか、食べれない味のものとかあったらどうしよう。でもこの林檎もどきは美味しいな、普通の物が食べられるというもの分かったしこれからの食事も楽しみになってきた。






…記憶はないが物を書くことや食べるということは知ってるし出来る。

だが林檎もどき(アリンジ)や街の名前はどうも知らない様子、おまけに獣人やエルフにも驚いているようだった。

記憶喪失にあの魔力。一体何者なんでしょうねぇ…彼女は、自分達の敵にならなければいいのですが…。

もしも彼女が私達の敵になる様なら……まぁ、なるようになりますかね。


ギンリュウは装飾の付いた剣を撫で、仲間たちと共にギルドへと歩を進めた。

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