白銀の風
何とか書けた
「シェリーちゃん!?」
森の入り口にギンリュウが血に染まったシェリーを連れて行くと案の定セシリアが悲鳴を上げながらこちらへと駆け寄ってきた。声には出さないがキールも目を見開きこちらへと寄る。
ギンリュウはゆっくりと木の幹にシェリーを下ろすと大丈夫ですよと二人に言う。
「安心してください。これはすべて返り血です、彼女は怪我をしていません。実は先ほどグレーウルフに襲われまして…」
とギンリュウは呪術師などのことは伏せ、先ほど起こったことをかいつまんで話す。
セシリアは魔法でシェリーの服から返り血を取り除き、怪我がないか確認し。怪我がないことが分かるとホッとした顔をしてこちらへと向く。
「怪我はないみたいですね…よかった」
「ん…ぅ…」
シェリーは身じろぎしながら目を覚ます。セシリアは安心したように息を吐いてシェリーの元へと駆け寄る。
「シェリーちゃん、気分はどうですか…?」
「え…えっと…大丈夫です…特に…問題は…」
シェリーはナイフを持っていた右手を見た、その手は震えており大丈夫と言ってはいるが顔は青白い。息も少しずつ荒くなっておりこのままではまたパニックになってしまいそうだ。
「…」
キールはその様子を見ているとシェリーの両肩に勢い良く手を置き、シェリーと視線を交わらせる。シェリーは手を置かれた瞬間にびくっと体を弾ませ、キールに視線を合わせた。
「それが生き物を殺すってことだ、その感覚を忘れるな。冒険者として生きるなら必ず経験する。早めに慣れることだな」
そういうとキールはシェリーから離れてギンリュウと薬草の数を確認しはじめる。
ふとシェリーが手を見ると何故か震えは止まっていた。すると隣にセシリアがちょこんと座り話しかける。
「キール君はああ言ってますけど、シェリーちゃんが無事で安心していると思いますよ。口調はぶっきらぼうですがああ見えて心配性なので」
「そう…なんですか」
「キール君が言った通り、魔物を倒すことは冒険者をやるなら必ず通る道です。今すぐ慣れろとは言いませんが…」
「ありがとうございます。ボクも冒険者になったんですからがんばりますよ」
シェリーはそういうと立ち上がり、服の汚れを払うとギンリュウとキールが薬草の数が依頼の分揃ったことを伝えに来た。
「そういえばシェリーさんは変わった魔法の使い方をしますね」
「え? 変わった使い方?」
ギルドへと戻る最中、ギンリュウさんからそのようなことを言われた。
変わった魔法の使い方? 何かおかしいのだろうか?
「えぇ、呪文を使わないで魔法を使う方は初めて見ましたので」
「え?」
そういえば呪文というのがあった気がする。
あの時は混乱してイメージで魔法を放ったけどやっぱり呪文を詠唱した方がいいんだろうか。
そう思ってるとセシリアさんが驚いたように言葉を続ける。
どうやら魔力とは粘土のようなものらしく、それを呪文という型に入れて形を作るというが一般的なようで。ボクがやっているのは手で似たような形を作り投げているようなもので魔力の消費が激しいとか。ボクはレベル1だし魔力は普通よりは多いだろうけどこれからはちゃんと呪文を使った方がいいのかもしれない。みんなの役に立てるように頑張らないと。
「はっ...はっ...はっ...」
黒と緑が混じった迷彩のようなローブを着た人物が一人森の中を駆けていた。額には汗が流れており移動しているというよりは逃げているといった方が適切だろう。
その人物は後ろを確認すると足を止め。大きく息を吐いた。
「…はぁ、追ってはこなかったか」
そういうとその人物はフードを外す、少し長めの茶髪をした十代後半の少女だった。
目元は暗くよく見えないが鋭いギザ歯が特徴的だ。
「はぁ~、マジで無理だってオレ本来呪術とかこういう絡め手苦手なんだよ」
その場に座り込み、大きくため息を吐いて力を抜く。
「大体なんだよあの女襲え、でも殺すなって。意味わかんねーよ近くにいた護衛みたいなやつは本当にDランク冒険者か? というか侍な時点でまともな奴じゃねぇし」
「ノゾムさん」
するとすぐそばに白いシャツに茶色いベストを着た青年が現れた。年の頃はノゾムと言われた少女と同じほど、白に近い薄金茶の髪でモノクルを付けており知的な雰囲気が伺える。
「あ、教授じゃん。今までどこにいたんだよ、というか手伝えよ」
「私は戦闘を不得手としているので、あなたも適当に仕事を受けないでくださいよ」
「だって金がないんだよー」
「はぁ…とりあえず別の街に行きますよ」
教授と呼ばれた青年はそういうとノゾムに手を差し出す。ノゾムはその手を掴み立ち上がりながら教授に問う。
「あ? 依頼はどうすんだ。一応やれることはやったが」
「前金だけで十分でしょう、それに調べたところ依頼主の背後にいる相手は『スケアリード』でした」
「げっ、マジで?」
「あなたに依頼した相手が消されるのも時間の問題でしょう。こちらに矛先が向く前にとっとと逃げますよ」
教授とノゾムはシェリーとは反対方向に向かって歩き出す。教授の言う通り別の街へと向かうようだ。ノゾムは頭の後ろで腕を組み歩きながらぶつぶつと愚痴を教授へと投げかける。
「教授~、腹減った~。飯~」
「少し前に食べたばかりでしょうに…」




