勇者、怒る
そうして、ジーク達がエステル達と共に宿屋にたどり着いた時には3人の話は、だいぶこんがらがっていた。
「それで、どういう事なんですか?」
「私が勇者を辞めるっていう事よ」
「勇者を辞めるって正気ですか?」
「そうだけど」
「なんでですか?」
「だから、結婚するからって言ってるじゃない」
「そんな仕事を辞める女の子みたいな感じで勇者が辞められる訳ないじゃないですか!」
「でも、私は辞めるの」
エステルはそう言って譲らない。しかし、そもそも、ジークは結婚するとは言ってない。
「そもそも、あとちょっとじゃないですか?あと、四天王一人と魔王だけ。なんで、あとちょっとを頑張れないんですか?」
「だから、私はやっとジークを見つけたの」
「意味がわからないです!」
「とにかく、私は辞めるって言っているの!」
すると、それまでどうにか説得しようとしていたアルミナと言われた背の高い女性はエステルにはっきりと言った。
「私は・・・勇者様のお目付役です。だから、勇者様がそれ以上勇者の任務を放棄するようなら私にも考えがあります。」
「どうするつもりなのよ?」
「力づくで、勇者様を止めます」
「へえ、やってみなさいよ」
急に雰囲気が悪くなった、二人を止めようとジークが仲介に入ろうとする。しかし、
「おい、二人とも落ち着けって!」
「どいて、ジーク」
「勇者様。これは業務上の仕方ない行為になりますので、怪我を負っても知りませんから」
二人に止まる気配はなかった。