剣士、合流する
とりあえず、さっきエステルが一緒にいた女の人アルミナをジークのことを案内するということで、エステルの先導の元、ジークはエステルに腕をガッチリとホールドされたまま歩いていた。
「ねえ、ちゃんと聞いてる?」
「聞いてるって」
「でも、さっきから反応薄いじゃない!私がドラゴンを倒した話をしても、四天王を倒した話をしても」
「あのな」
「なんで?私、結構、話は上手なのよ。みんなにも「勇者様面白い」ってよく言われるし」
「あのな」
「なのに、なんで、さっきから「へえ、そうなんだ」とかしか言わないのよ!」
エステルは不満げな表情を浮かべるが、
「分かるわけねえだろ!俺はただの農民だぞ!魔力がどうとか魔法がどうとか言われても分かるわけねえし、そもそもドラゴンってなんだよ!」
「だったら、最初からそう言ってよ!」
「だから、言っただろ。さっき、優しく「なあ、エステル。俺は野菜の事しかわからん。それしか育てた事がないからな」って。何が「分かったわ。」だよ!全然、分かってねえじゃねえか!」
「だから、言ったじゃない、私。ドラゴンはレタスで、魔力は土。土壌の事よ」
「意味わかんねえよ!」
しかし、ふざけながらもエステルの足は確実にこの街「アルスナ」の中心街へと向かっていた。
やっぱり、さすがは勇者だ。一度通っただけの道でも、完璧にこの街の地理程度であれば頭に入っているらしい。
そう感心しながら、顔を上げると、後方からジークとエステルを引き裂く様な声が聞こえた。
「勇者さまああ?」
ジークとエステルが振り返ると、向こう側に背の高いフードをかぶっている人型が見えた。しかし、ジークに見えたのはそこまで。ジークの視線が次にその人型を捉えた時はその人はいつの間にか、エステルの隣にいた。
瞬間移動にしか見えない移動にジークは腰を抜かすが、彼らはそんなジークに気づくこともなく話し始めた。
「勇者様!!」
「うん?ああ、アルミナじゃない?どこ行ってたのよ?心配したのよ」
「それは私のセリフなんですが!本当にどこ行ってたんですか?ずっと探してたんですよ?」
顔に汗を浮かべて、長い溜息を吐きながら、小言の様に注意する。
「だから、あなたには言ったでしょ。幼馴染を見つけたって」
「それは聞きましたけど」
「見つけたから追いかけたのよ」
「あなたは動物かなんなんですか?なんで見た瞬間に、脊髄反射で追いかけるんですか?それに、なんで私に一言言わないんですか?一言言ってくれれば」
「・・・・・・・・忘れてた」
「絶対嘘ですよね?勇者様って、そんな忘れたりする人じゃないでしょ!私、この7年で勇者様がミスしたの見た事ありませんけど!可愛い顔してたら全部許される訳じゃないんですよ!」
「仕方ないじゃない。可愛いんだもん。私。」
「そうですか・・・ってそうなる訳ないですよね」
一気に喋りすぎたせいで疲れたのか、そのアルミナと言われた女性は膝に手を当てて、ぜえぜえと息を切らしている。
「あなた、大丈夫なの?」
「疲れただけなので、大丈夫ですけど、私の事心配してくれるなら勝手にどっかに行かないで下さい」
「大丈夫よ。私の事を倒せる生き物なんてこの世界にはいないから」
「危険なんてないわ!」と言いながら、ふんすと腕を組む。
「そういう問題じゃないんですが!」と、アルミナと言われたフードの女性。
「そういえば、あれ、本気だったんですか?」
「何が?」
「結婚するとか、なんとか?」
「本気も何も、私は本当の事しか言わないわ」
「え?じゃあ、本気で結婚するんですか?」
「そうね!てか、もう結婚したみたいなものだわ」
特に否定する気も無く、エステルは言い切る。だけど、意見が白熱する前にジークは二人にそっと提案した。
「あのさ、とりあえず、移動しない。夜だし、街も暗いしな」
「まあ、そうね。」
「あと、夜だぞ!全力で喋るとな」
「言いたいことも沢山あるしな」
「違いないですね、勇者様。言いたいことが沢山あります」
「な、何よ?急に、私、なんもしてないわよ?」
というわけで、ジーク達3人は迅速に宿屋まで移動した。
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