表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/34

第7話 合格発表前の1日

試験が終了してケイルとアラフトが校門前に行くと、すでにザグドナが待っていた。


「兄さん!」

「2人共、どうだった?」

「バッチリ♪」

「僕も、なんとか」


2人は精一杯がんばっていたと話した。だが、ザグドナは試験よりも別の問題について聞いてくる。


「ところで…ケイル、お前まさかだと思うが」

「うん…サモン使っちゃった。ゴメンなさい…」


試験に受かる為にサモンを使ってしまった事に、申し訳ない感じの表情になって謝るケイル。これにはザグドナは大きくため息をする。


「でも、兄さん。これも魔力ゼロなケイルがソーサリーガに合格する為に必要だし、それに隠しても隠しきれない事だから!」


アラフトがなんとか許して貰おうと、色々と言い訳してケイルをフォローする。だけど、なんだかケイル本人は惨めに感じてしまう。しかしこれはザグドナが既に予想していたので、とりあえずがんばった2人の頭を撫でた。


「まっ、2人がよくがんばったって事には変わりないな?」

「ザグドナさん」

「えへへへ」


撫でられて恥ずかしくなったりするが、嬉しく感じてしまう2人であった。


「さぁ、宿屋に行こうか」

「はい」

「もちろん♪」

「とりあえず、がんばった褒美にご馳走だ」

「「ヤッターーー!!」」


さっそく馬車に乗ってザグドナが用意した宿屋に向かう。

一方その頃、ソーサリーガの会議室では、スバルシュとゼロスも含む試験官の教師と講師達が大きく盛り上がっていた。


「サモン…伝説で究極の禁断魔法を、あのような魔力の全くない少年が…」

「しかし、たしか魔力の有無は関係ないと言われている」


何故なら魔力のないケイルがサモンを使えたからだ。サモンは過去に数人しか使えないと言われた伝説の禁断魔法が、今回の試験で目にしたのだから無理もない。これからケイルをどうするかで話題が持ち切りとなる。


「ところで話を変えますが、平民組のユハスムくんはどうしますか?」


すると1人の女性講師がユハスムの試験記録を見て質問してきた。この質問には全員、顔を見合わせて話を切り替える。


「たしかに、平民ながらも高い魔力に二重属性と魔法の腕…どれもこれも素晴らしいが」

「しかし…筆記試験の点数はギリギリだな?」

「まずはっきり言って、蟷螂と蜂は除外して」

「魔力と魔法だけならば…獅子か鷹になるけど…」

「だけど、この成績じゃあ熊か梟だね?」


獅子にするか鷹にするか、もしくは熊か梟のどちらにするかと悩んでしまう。実技では高点数でも、筆記はギリギリの点数というので難しいらしい。


「おまけに、同じようなのもいるしな?」

「ああ、たしか平民組で実技は高いが筆記はギリギリの」


どうやらユハスムの他に、平民組で同じ魔法成績の人が存在する。この2人をどのクラスに入れるかもっと悩み続けた。


「その前に、まだこれが残ってますから」


スバルシュが試験の昼休みでメティールから渡された手紙を取り出し、まだまだ会議が続く様子。










次の日。

明日が合格発表日だけど、せっかくなのでケイルとアラフトは王都観光をしていた。

ザグドナからお小遣いを渡されると同時に、色々と言い聞かされながらも観光を楽しんでいた。何故なら王都の街並みはかなり賑やかで、魔法具店や食べ物屋に洋服店が立ち並び。田舎暮らしの2人にとって全てが新鮮で珍しいの一言。


「へ~~~なんだか凄い賑わいだね。村とは大違い」

「小さかったからよく覚えてないけど、なんだか久しぶりな感じ♪」


2人が途中パン店で菓子パンを買い食いして街を進んで行く。だけど、途中で一か所の薄暗い路地裏から人が出たり入ったりしているのに気づく。


「なんだろう?あそこ…」

「人が通っているみたいだけど?」

「……ちょっと行ってみる?」

「えっ!」


普段から好奇心が強いアラフトにとって興味が沸いて仕方がない様子。


「待ってよ。危なそうだから止めた方が良いよ…この前の盗賊の事を忘れたの?」


ケイルが一週間前の誘拐事件を忘れていのかとアラフトに聞いてみる。あの時はケイルが駆け付けて、サモンで志俱刃と紗田粋を召喚できたからよかったものの。一歩間違えたら盗賊に殺されて、もしくはイノシクマに襲われたりしていたからだ。


「心配ないわよ。だって、ケイルには凄い友達兼用心棒が居るから」

「用心棒って…」


しかしその誘拐された本人は、全く気にしていない。おまけに何かあった時には志俱刃と紗田粋にお願いするなど、少しアラフトが図々しく感じてしまうケイルだった。


「とにかく行こうよ。じゃなきゃ、アタシ1人で行くからね」

「ああっ!待って」


仕方なくケイルはアラフトと一緒に路地裏に入ってみた。ケイルが持っている時計には、まだ1時10分しか経っていないけど、辺りはかなり薄暗くおまけにゴミも散乱してる。とにかく迷路みたいな道を進んで行く。そしてやっと出口が見えてきたので一度立ち止まって少し覗く。そこで目にしたのは、見るからにヤバそうで怖そうな人がたくさんいて、おまけに喧嘩したり怪しいものも売っている様子も見えた。

これぞまさしくスラム街という言葉が合いそうな場所。


「やっぱりここって危険だよ!」

「うん…早く逃げよう」


ケイルとアラフトは気づかれないようにと、ゆっくり静かに後ろに下がっていく。だけど、何者かが2人の肩を掴んだ。


「「うひゃ!?」」


ドキっとして2人揃って声を上げてしまう。そして大量の冷や汗を出しながらも、ゆっくりと後ろを見てみる。


「お前ら、何やってんの?」


なんとそれは昨日の試験で知り合ったジンバとラギの2人だった。


「ジンバさん、それにラギさん」

「そんな事よりも、早くここから出るぞ」

「いつ気づかれるか分からないしね」


こうしてジンバとラギの案内でなんとかスラム街から、無事に脱出できて元の路地裏から出てきた。


「さっきお前らが入った路地裏は、あのスラム街に入る出入り口の1つ。お前らのような田舎者はあっという間に餌食にされるぞ」


ジュースを奢ってもらいながらも、不用意にその辺の路地には気を付けた方が良いと2人に注意してくれた。


「あれ?でも君達は平気なの?」

「じつは俺の家って、スラム街の近くなんでな。よく出入りしているから、あの辺は俺の庭みたいなものだよ」

「それに俺もよくコイツに連れられているんだよね」


話によればジンバの家は下級貴族だけども、両親はスラム街近くにあるアパートの大家。しかも両親揃ってかなりの人情らしく、スラム街の住人からの相談をよく聞いている。そしてジンバ本人はよくスラム街を歩き回ったり、さらには喧嘩したりとかなり危ない橋を渡りながら過ごしてきた。ちなみにラギは中級貴族でジンバの住んでいるアパートの隣に住んでいた。おまけに礼儀作法やら貴族としての英才教育でストレスが溜まっていったが、ジンバに無理やり誘われてスラム街に行っては喧嘩に巻き込まれてしまう。


「なるほど…つまり、ラギさんは相当苦労してたのですね?」

「そうだよ。おまけに幼馴染がこんな暑苦しくて喧嘩早い奴だし…どうせならアラフトちゃんのようなカワイイ女の子が良かったのに」

「んだと!俺だって男よりも女の子の幼馴染がいい!」


なんだか喧嘩をし始めるジンバとラギ。両方とも幼馴染がカワイイ女の子の方が良いらしい。しかしなんともバカバカしい喧嘩に、かなり呆れてしまうケイルとアラフト。

それからしばらく経って、2人がお互いボロボロになりながらも喧嘩を終了する。


「とにかく、昨日のお前…あんな秘策があったなんてな」

「一応調べたけど、あれってサモンっていう禁断魔法だよね?いつから使えるようになったんだい?」


2人が昨日見たサモンに興味を持ったのでケイルに話を聞いてきた。


「じつは…一週間前にね」

「アタシが盗賊にさらわれた時、ケイルが命を張ってたの」

「なんだよそれ?俺がスラムのならず者に人質にされた時あったけど、コイツは俺を無視して暴れるだけ暴れてたんだぜ?」

「おいコラ!助けに来てやっただけでも、ありがたく思えよな!」


またもや喧嘩するジンバとラギに、つい笑ってしまうケイルとアラフト。


「あれ?お前ら何してんの?」

「この声は…」


するとまたもや気覚えのある声が聞こえて、振り向くと大きな木材を運んでいたユハスムがいた。


「ユハスムさん!なんでここに?!」

「いや、この先は俺の仕事場だから」

「なんだ、あの野郎は?」

「いやいや、昨日話題になった平民組の」

「ユハスムさんだよ…」


ここでユハスムと出会えるなんて、思わなかったケイルは駆け寄った。しかしジンバはどうやらユハスムの事を、あんまり知らなかったというよりは興味がなかったらしい。なので仕方なくラギとアラフトが簡単に説明をする。


「てかお前、魔力ゼロって聞いてたけど…昨日のあれは何!?」

「ああ……話せば長いけど」


ユハスムもまたケイルのサモンに興味を持っていたので話すことにした。


「へ~~~サモンっていう伝説の魔法か…スゲェな?」

「でも、君の方も凄いと思うよ?魔力が高くて二重属性で」

「いやいや、それ程でも♪」


照れながらも調子になるユハスム。なんだかこのノリの良さに、ケイル達は少し笑ったりする。


「ところで、君さっきから何してたの?」

「何って仕事だよ。これをあっちの建築現場にな?」


指を刺して建築中の建物で働いていると教えた。


「そういえば、君の両親は?」

「俺の親父もお袋も病気で死んでな。んで、大工をやっている祖父さんの処に厄介になってんだけどもよ…ソーサリーガを卒業したら、そのまま冒険者ギルドに就職しようかと考えているんだよ」


さっきのお気楽なムードから一変しかなり暗いムードに変わってしまう。


[ユハスムさんって…僕とアラフトと同じなんだね…]


同じように両親が亡くなったり行方不明になる点から、ケイルは改めてユハスムに同情しようとした。


「コラァァァァ!!」

「げっ!?」


その時、建築現場から誰かが大声でユハスムを怒鳴る声が響く。


「この声は?」

「さっきも言ったけど、俺の祖父さんだよ…人使いが荒くてな」

「早く持ってこんかい!明日入学が決まったら、その分今日はビシビシ働いてもらうからな!!」

「うるせぇぇぇぇな!分かってんよジジイ!!」


お返しするかのように怒鳴り返したユハスムはすぐに木材を担いで仕事場に向う。それからケイルとアラフトも明日の発表日の為にジンバとラギと別れた。


「じゃあ、また明日!」

「おおよ!合格できるのを楽しみにしてるぜ!」


それぞれ手を振りながも別れて、ケイルとアラフトは急いで宿屋に戻る。

今回は王都観光とジンバとラギとユハスムの簡単な過去話をしました。次回は合格発表となりますが、ケイルがちゃんと受かっているのかはお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ