第4話 ソーサリーガに受験を
ケイルが妖魔2人の絆を深める事が出来。そして改めて2人は妖導門で妖界に帰るのだった。
「では、いつ何時でも私達を呼んでください」
「と言っても、俺には俺の都合があるからな。それぐらいは分かってくれよ?」
「分かってるよ。志俱刃、紗田粋、じゃあね」
「「では、また」」
さっそく妖導門に潜って、妖界に帰る志俱刃と紗田粋。そして役目が終えた妖導門も消えたが、問題はまだ残っている。
「さてと、これからどうするの?」
「うん…そうだよね。なんで僕がサモンに?」
もちろん、魔力が全然ないケイルがいきなりサモンを使えた事だ。一体どういう条件でこんな魔法が出来て、もしこれが自分にどんな事が起きてしまうのか。そしてこの魔法を狙って、どんな敵が現れて襲われるかもしれない。
「僕これからどうしよう…」
「たしかに…このまま屋敷に籠って研究はちょっと…」
「あのアラフト…君一体何言って……」
「いや、良い方法ならあるが」
「「「良い方法?」」」
するとザグドナはなにか提案を思いついたようだ。
「ケイル、お前も一週間後のソーサリーガ入学試験に受けて入学するんだ」
「え?僕が…ソーサリーガに?!」
その提案というのは即ちソーサリーガに入学だった。
「じつは…万が一の為にと思って……お前の受験票も用意してたんだ」
普段からザグドナは準備の早い性格。なんだか少し照れ隠ししながらもザグドナは受験票をケイルに渡す。
「たしかに…ソーサリーガには色んな魔法の研究もしているから…サモンの事も調べることが出来るかも……」
受験票を見て自分がソーサリーガに入学すれば、自分の魔法をもっと知るかもしれないと考え出す。しかし田舎の下級貴族出身で本来魔力がないケイルに、フーデアルス国一の魔法学校に入学できるか心配。
「待ちなさいよケイル。そこに入学できるのは王都出身の貴族が殆どよ?イジメられるかもしれない?!」
「いやいや、そんな事ないって!もしイジメられたらアタシが助けるし!それに一緒に通えて一石二鳥!」
悩むケイルの後ろで、イジメられるか心配するヒハナと一緒に居る事が出来ると喜ぶアラフト。そんな騒ぐ2人の声がリビングに響き渡るので、ザグドナが2人を黙らせようとした瞬間。
「静かにして!!」
ケイルが大声をあげたので2人は喋るのを中断し、そしてザグドナも少し驚き。一時この場は静寂に包まれた。
だが、すでにケイルはこれからどうするのかの答えを見つける。
「僕……ソーサリーガに入りたい。そして、自分のこの魔法をもっと知りたい!」
ケイルはソーサリーガに合格して入学を決意する。
あれから一週間が経ち。
旅立の日に相応しい晴れ晴れとした朝にザグドナは、ケイルとアラフトを王都に送る為に馬車を用意する。この一週間の間に、盗賊達を15士隊に引き渡したり、合格の為のケイルとアラフトは勉強やら特訓などを過ごしてきた。
「ソーサリーガの入学試験は9時半だからな。7時から行けば十分間に合う」
懐中時計で時間を確認するザグドナ。それからヒハナがケイルとアラフトに忘れ物はないのか確認した。
「さてと、2人共。受験票は持ったか?」
「「はい!」」
「筆記用具とハンカチは?」
「「もちろん!」」
「良し、じゃあ後はお弁当を」
そう言って2人に弁当の入った包みを渡した。
「なんだか寂しくなるわね。2人が王都の学園に行くなんて」
「そうだね。ソーサリーガは全寮制だから夏休みとかにしか帰ってこられないし」
「でも、まずは試験で合格しなくちゃね」
「たしかにそうだね」
ヒハナは優しくケイルとアラフトを我が子のようにして抱きしめる。
「良い事。どんなに離れていても、私はいつまでも2人を見守っているからね」
「うん、それは本当に分かっているよ」
「大丈夫。アタシもケイルもがんばれるから!」
ヒハナに言葉を返す2人だったが、しばらくするとザグドナがもうすぐ時間なので2人を呼ぶ。
「ほら、早く行くぞ」
「「分かった!今行くね!」」
すぐにザグドナの元に向かうケイルとアラフトの2人を、ヒハナはただ彼らの背中を見つめるのだった。そして心の中で願い始める。
[義姉さん…どうか、2人を見守ってね。ついでにバカ兄も戻ってきなさいよ]
今、ヒハナが祈るのはそれだけである。
そうしている内に3人が馬車に乗ると、さっそくザグドナが手綱を持って2頭の馬を歩かせ王都に向かった。ラナトル村から2時間掛かってフーデアルス国の王都に到着。そして今、ケイルとアラフトの2人は目の前の城と同じぐらい大きく立派な建物の前に立つ。
ここが魔導戦士養成学園・ソーサリーガで、周りには自分達と同じ入学希望の受験者達がたくさんいる。それも大半が2人よりは貴族らしい雰囲気を漂わせて、この日の為に努力を重ねた受験者が多い様子。
「なんだか…僕ら浮いてない?」
「まぁ、田舎者だしね…」
「でも…アラフトにとっては里帰りみたいなものだね」
「言われてみればそうかも…」
じつは元々アラフトは小さい頃まで王都に住んでいた。それが両親の都合とかでラナトル村に引っ越してきので、つまりケイルの言葉通り里帰りに近い形でもある。
「だけど、とにかくアタシは!」
「ん?」
「アタシ、絶対に“鷹”に入りたいの!」
まず学年は1年から3年までであり。クラスのシンボルは“獅子”・“鷹”・“蟷螂”・“熊”・“蜂”・“梟”と動物と鳥と昆虫になってる。もっとも一番の成績と上級貴族の多いのが獅子で二番目が鷹であり、残りの4組はそれぞれ個人同士の成績や実力に合った形となっていた。
そしてアラフトの姉、リアトリがいるのは鷹。
「じゃあ、良いな?私は宿屋をチェックインしてくるが、くれぐれも他の受験者達に迷惑はかけないように」
「はい!」
「分かってるって」
「明後日には発表だからな。しっかりやれよ」
そう言うとザグドナはこの場を後にした。しかしながら受験者全員の目はかなり真剣なもの。
「うう…やっぱり、僕が来たのは間違いかな…うわっ!?」
周りをキョロキョロ見回したので、ケイルはうっかり人とぶつかってしまう。ぶつかった相手はボサボサな茶髪に、服の上からでも分かるような筋肉質な体格で両手に手袋をした少年。
「おい、大丈夫かよ?」
しかし少年は社交的にケイルの事を心配してくれた。
「はい、こっちこそよそ見してたので…」
ケイルもぶつかった事を謝ろうとしたその時
「ちょっと、早く列に戻りなさい!」
「へ~~~い」
係官が彼を20人程の列に戻れと指示したので戻ろうとする。
「ちょっと!」
「ん?今度は何だ?」
「ええっと…僕はケイル・サグバラムトで、彼女はアラフト・バリハッシュ。君は?」
「俺?ユハスム・セドだ」
少年はユハスム・セドと名乗り走って列に向かった。
「あの列って平民組の?」
「平民組?」
「知らないの?平民の入学試験者よ?」
この学園は平民からの入学希望者がいる場合には、今回の試験とは別に平民専用の仮試験を受けて貰う。それに合格者した平民には改めて試験を受けられる権利が得られる。
「そっか…平民にもここを入学したい人達がいるんだね?」
「そうみたいよ。卒業すれば、正式なギルドへの就職率が高くなるからね。しかも授業料も食費も寮の家賃もタダだし」
「たしかに…あの列って僕達以上に必死そう」
平民組の列を改めて見てみると、ユハスムを含めた全員が顔も目も尋常じゃない程。とても真剣な表情となっているのが分かる。
「おいコラ」
「「え?」」
いきなり声をかけられたので振り向く。そこらは頬に傷があって赤髪に白のメッシュを染めた見た目は不良な特徴の少年と、金髪でなんだか苦労人という単語が似合いそうな少年が立ってた。
赤髪白メッシュがメンチを切るので、2人は少しヤバいと感じてしまう程。
「平民組の心配とは、こりゃまた随分と余裕じゃねぇかよ?」
「ちょっと、いきなりイチャモンを着けるのは止そうって言った筈でしょ?」
「うるせぇな!何事も初めが肝心なんだよ!」
なにやらこの2人が話し合っていたが、なんだか大丈夫そうな気がしてきたケイルとアラフト。
「それじゃあ改めて聞くけどよ。テメェら…どこから来た?」
「え~~~と…ラナトル村から来ました。ケイル・サグバラムトです」
「同じくラナトル村で、アタシはケイルの幼馴染のアラフト・バリハッシュ」
「ほ~~~田舎から来たんだな?俺様はジンバ・カタラッゲだ。覚えてろよな?」
「それで俺はラギ・シクトロフ。コイツの幼馴染ね」
赤髪白メッシュはジンバ・カタラッゲ、それから金髪はラギ・シクトロフと自己紹介する。そしてケイルとアラフトは、ジンバとラギの2人とは仲良くなりそうと確信が生まれた。
「ねぇ、ねぇ」
すると黄緑色のアホ毛付きロングヘアーで、胸にパンジーのバッジを付けて剣を装備。少しのんびりした感じの少女が近づく。
「私はメティール・レン・フラトタル。受験生同士よろしくね」
メティール・レン・フラトタルと名乗る少女はケイル達に握手を求める。
「僕はケイル・サグバラムトです」
「アタシ、アラフト・バリハッシュ」
「ジンバ・カタラッゲだ」
「ラギ・シクトロフね。ところで、フラトタルって…たしか5大守護族の?」
「うん。そうだよ」
この国には王と王族を守る5つの最上級騎士貴族が存在し、それは5大守護族と呼ばれる。一族はそれぞれ花の紋章となっていて、家の者はその花が刻まれたバッジを着けなければならない。
そしてメティールの実家であるフラトタル家の紋章はパンジー。
「それでね…私って少し緊張しやすいタイプなの。だから、友達でも作って気を紛らわそうと思ったけど、さすがにダメだよね?」
恥ずかしそうに照れ笑いするメティール。
「そんな事ないと思いますよ」
「え?」
だけど、そんなメティールにケイルが励ますかのように発言する。それに続いてアラフトも口を開いた。
「そうだよ。アタシもケイルも田舎から上京して来たから色々と不安でいっぱいだから、その気持ちわかるよ」
「たしかに、コイツだって緊張のあまり2人に絡んだからね」
「そんな事を言うんじゃねぇよ!」
笑いながら言うラギにジンバは顔を赤くた。どうやらジンバはちゃんと合格できるか緊張のあまり、先程のケイルとアラフトにメンチ切るという行動を執ったと判明する。
その様子にメティールは緊張が解いたのか少し笑い出す。
「たしかに、みんな緊張しているのも分かるし。アナタ達と一緒ならがんばれそうな気がするね」
「そういう事だね。とりかく僕達はやるべき事は1つだけだよね?」
「もちろん!」
「おうよ!」
「分かってるって」
5人はこれから目指すの為に手を重ねて全員の決意を固め合った。
それは当然ソーサリーガの合格。
ケイルもソーサリーガに受験を決めると、そこに4人の新キャラと出会うようにしました。
そしてここで貴族と平民の区別を教えます。
まず貴族・領主と王族は姓=ラストネームが5文字以上で、平民の場合は2文字までとなっています。