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第3話 妖魔との絆を深めよう

「てか、流れでやったけど…ここどこぉぉぉぉ!!?」


しばらくすると紗田粋は1人でこの状況に混乱する。最初は志俱刃にナンパしていた時。四角い魔法陣が現れて、潜ってみるとこの訳の分からない世界にやって来てしまい。とりあえず腹ペコだったので、目の前のイノシクマという獣を一飲みにしたけども、未だに把握しきれてなかった。


「あの…なんか色々とすみません…」


紗田粋の混乱する様子に心配して一応ケイルは2人に謝罪する。


「気にするな。私も正直混乱しているが慌てても何も起きない。それよりも」


そう言って志俱刃が得物である剣でアラフトの鎖をスパッと切って手を差し伸べる。


「さぁ、立てるか?」

「うん…ありがとう」


手を引っ張って貰ってなんとか立ち上がると、ケイルが着ていた上着を脱いでアラフトに羽織らせた。


「本当に見つかって良かった。この魔法具のおかげで」

「でも、アタシのせいでこんな傷だらけに」

「大丈夫だよ。叔母さんの回復魔法でね」


全身ボロボロなケイルを心配するアラフトに、心配させないようにとなんとか笑顔で返事する。それから紗田粋はいつまでも、グリフォンの姿じゃダメだと感じて人間の姿になった。


「んで、これからどうすんだよ?」

「そうだよね…君達をどうするかだけど?まずは…家に戻るしか」


しかしいきなり自分たちの前に現れた妖魔という異形の存在。どうやってザグドナとヒハナに話すかと考える。だがその時、また森の中で不気味な音と一緒になにかが近づいてきた。


「これは…まさかさっきの猛獣か?」

「もしかして、盗賊が戻って来たの?」

「なんにせよ…斬る!」


剣を構える志俱刃に紗田粋も翼を広げて戦闘態勢に入る。それからアラフトもさっきのお返ししようと、素早く魔法の準備に入る。ただしケイルはただ突っ立ってるしか出来なかった。

ついに林から何者かが姿を現す。


「来た!って、兄さん!?」


なんと林から現れたのはザグドナだった。おまけに何故か鎖を持っている。


「アラフト!それからケイルも」

「ザグドナさん!来てくれたのですね」

「当たり前だ。それよりも、2人共その姿…」


ザグドナは全身傷だらけのケイルと、今は彼の服を羽織っているが上が下着だけのアラフトを見る。


「お前達…奴らに?」

「奴らって、ザグドナさんなにか知っているのですか?」

「ああ、つまりこれに襲われたのだろう」


手に持っていた鎖を引っ張るザグドナ。鎖の先には先程逃げ出した盗賊4人が、ボロボロになって拘束されていた。


「ああっ!コイツらだよ、コイツら!アタシを誘拐して服を破って、さらにケイルを袋叩きにした!」

「やっぱりな。ケイルを追って森を進んだら、奴らと出くわした。しかも私が6士隊に入ってた頃に討伐した盗賊の残党で、すぐに私への復讐の為にとアラフトを誘拐したと分かってな。この通り半殺しにしてここまで案内させた」


ここまでの経緯を2人に説明する。


「さてと…では私からも質問だが」

「はい、どんな?」

「この2人はなんだ?」

「「あ…」」


すぐ目線を別の方へ向けて2人に尋ねる。それは角の生えた鬼の女と、背中に翼があるグリフォンの男。ようするに志俱刃に紗田粋の2人についてだった。

当然、この2人をどう説明すればいいのか思いつかない。


「え…と…彼らは…」

「おいおい、いきなり出てきてなんだとはなんだ?」

「わぁぁぁぁぁぁ!ちょっと落ち着いて!?」

「待ってよ!この人、アタシのお兄ちゃん!!」


紗田粋が喧嘩腰になってザグドナにいちゃもんをつき始める。このままじゃあもっとややこしくなるので、すぐに必死で紗田粋とザグドナの喧嘩を止めさせようとするケイルとアラフト。


「え?お前の兄なのか…」

「うん、そうだよ…」

「そうだったのか…悪いな」


納得したのか紗田粋は突っ掛かったことに素直に謝る。


「ああ、いやこちらこそ。だが、彼らは何なんだ?」


それでも異形の存在には変わらないので再び尋ねる。もう隠すことが出来ないので、ついにケイルも正直に本当の事を全て話した。


「じつは、僕が…召喚しちゃったみたいで…」

「召喚?」

「うん、きっとサモンだと思う」

「サモンだと…あの禁断で究極のか?!」


これには唖然という事しか出来ない。妖界と呼ばれる異世界から、妖魔という生物を召喚する禁断魔法サモンが、本当にケイルが使ったというのであれば猶更だ。しかし今ここにいる妖魔の鬼とグリフォンが何よりも証拠になる。


[まさか…本当に……サモンをな]


ただ目の前にある現実を、受け入れるしかないのであった。

それからケイルは志俱刃と紗田粋を連れて自分の屋敷に戻った。アラフトは一度屋敷に戻って、破かれた服の代わりに別の服に着替えをして、その間にザグドナは盗賊達を地下牢に入れる。


「ここが、僕の家」

「へ~~~随分とデカい家だな?もしかして金持ちか?」

「僕の家はこの村を地主なんだけど…今は領主の父が行方不明だから、今はアラフトの兄さんが代理をしているの」

「そうか…“マスター”は苦労しているのだな?」

「まぁねって、“マスター”!?」


志俱刃の口から出た“マスター”という単語にケイルは少し驚く。


「だって、我々を呼び出したのだからマスターと呼ぶのが常識の筈?」

「言ってることは分かるけど…ちょっと慣れないなぁ」

「コイツって本当に硬いっていうか、堅物だからな。まぁ、慣れるのが一番だぜ、ケイル」

「お前は馴れ馴れしいんだぞ!」

「痛て!」


2人のお笑いのような喧嘩の仕方に思わず苦笑いをするのだった。


「あははは、じゃあ中に入れけど…その後が心配だな」


なにやらケイルは屋敷に入る事に抵抗し始める。


「ん?それはどういう意味ですか?」

「いや、言わなくても分かるな?」

「まぁね…でも、仕方ない」


背に腹は代えられず。さっそくケイルが玄関の前で呼び鈴を鳴らすと、大きな音と一緒に扉が開いてヒハナが出てきた。


「ケイル!心配し…」

「た、ただいま」

「どうも、私は鬼の志俱刃です」

「ウッス!」


扉を開けたヒハナは少し固まってしまう。何故なら、そこには全身ボロボロなケイルと妖魔の志俱刃と紗田粋を目にしたから。そしてヒハナは気絶しかけたがなんとか意識を保った。


「ええっと…色々と話したいことがあるけど、一番言いたい事は分かってる?」

「はい、勝手に行ってこんな傷だらけでごめんなさい」

「全くほら、まずは手当てしなくちゃね」


さっそく屋敷に入ってリビングに行き。すぐにケイルが上を脱いで打撲や痣だらけになった体をヒハナに見せる。


「あらあら、随分と…」

「本当にごめんなさい」

「全く…無茶しちゃって」


呆れながらも懐から杖を取り出すヒハナ。


「では、それ!」


ヒハナは杖を一振りすると見る見るうちにケイルの顔と体の傷が消えて行った。これがヒハナの得意とする回復魔法。


「はい、終わり」

「ありがとう。叔母さん」

「スゲェ…傷が消えたな。これが人間の使う魔法なんだな?」


紗田粋は魔法に興味を持ち始めてジロジロとヒハナと杖を見つめる。


「コラ、あんまり見るものではない!」

「痛っ!あんまりバシバシ叩くなよ!」

「お前が遠慮というものを知らないからだ!」

「まぁまぁ、2人共落ち着いてよ!」


また喧嘩を始める2人をなんとか止めるケイルの姿を見る。いつのまにか違う意味だけど、早い時間に成長したなと思うヒハナであった。

しばらくすると新しい服のアラフトがザグドナと一緒に屋敷に来てリビングに集まる。


「はい、服をありがとう」

「いや…そんな別に…」

「あっ!このお茶いけますね」

「あら、ありがとう」


アラフトが貸してくれたケイルの上着を返して、ヒハナの入れたお茶を志俱刃が飲んで気に入ったりする。

なんとも、ほのぼのと平和な光景であった。


「いや、それよりも…俺達どうやって妖界に帰れるのぉぉぉぉぉ!!?」


だが、それをぶち壊すかのように紗田粋は大声を上げ始める。


「紗田粋、本当に遠慮がなく空気も読めんな?」

「そりゃそうだろ!俺達は訳も分からず人間のいる世界に来ちゃったんだから!?」

「言われてみればそうだよね…たしかあの時は、ケイルが宙に四角を描いてたような?」

「うん、たしかこんな風に」


あの時と同じようにケイルが指で四角を描くとそれがあの四角い魔法陣となって出現した。


「ウソ…こんなあっさりと?」

「おいおい、マジかよ」


簡単に魔法陣が出現した事に驚きのあまり唖然となってしまう。しかしすぐに気持ちを切り換えたザグドナは四角の魔法陣を観察し始める。色んな角度から観察して、ケイルから貸してもらった本を読み直した。


「間違いなく、“妖導門(ゲート・ヘルバ)”だな?」

「“妖導門(ゲート・ヘルバ)”…これが」


その言葉に納得するケイルだったが他の4人には理解されていない。


「ねぇ、ケイルに兄さん…妖導門ってこの魔法陣の名前なの?」

「そうなんだ。サモンを発動する時に使用する魔法陣の門。それが妖導門なんだ」


本からサモンに関するページを開いて見せると、たしかに今出している妖導門と同じ魔法陣が描かれている。その他にも、召喚された妖魔はその直後にサマナーと契約完了の説明文もキチンと描かれていた。


「へ~~~これが」


興味を持ったアラフトが妖導門に近づいた。


「バカ、不用意に触れるな!人間にどんな影響があるか分からないんだぞ!!」

「そうなんだ。ゴメン」


でも触ろうとするアラフトをすぐにザグドナが止める。


「なぁ、これで俺達は帰れるのか?」

「うむ…じゃあ、私が行って確かめてみる」

「あっ、ちょっと!」


妖界と繋がってるかどうか確かめる為、最初に志俱刃が潜ってみる。何分か時間が経って顔だけ出てきた。


「やっぱり私達が最初にいた場所と繋がっていた!」

「なにっ!じゃあ、帰れるって事か!?そんじゃあ、さっそく」

「待った!!」

「ええ?」


喜んだ紗田粋はさっそく妖導門に飛び込もうとしたが、突入をストップさせて妖導門からちゃんと出る。


「なんで止めるんだよ?」

「その前に、やる事があるだろ?マスターに忠誠を示すものだ」

「示すって…なんでそんな固っ苦しいことを?」

「当然だ!我々がこの地に召喚されたのは、縁という事になる!

「う……確かになんかの縁って奴だな」


何事も義理に強い志俱刃の押しに負けた紗田粋。そして2人はケイルの前に立つと跪いた。


「ええっ!ちょっと、2人共!」


突然そんな構えをする2人にケイルは戸惑った。


「我ら2名。今宵よりマスターの下僕として、命を懸けて如何なる忠義を尽くすつもりです」

「という訳なんだけど…で、ございます」


忠誠の誓いを大きく立てる、とても真剣な志俱刃とあまり乗り気じゃない紗田粋の2人。

しかしケイルはあんまり忠誠とか命を懸けるのは好きじゃなかった。なのでケイルは2人にお願いする。


「あの、悪いけど…そういうのは無しでいいかな?」

「「え?」」

「せめてその…僕と友達になってよね」

「友…達?」

「うん、つまり仲間かな?」

「仲間か?」

「だから、マスターじゃなくてケイルって呼んでよ」


ケイルは両手を出してになろうと聞いてきた。2人は顔を見合わせながら、自分たちがこれからする事を改めて決める。


「分かりました。改めて、これから私のケイルの友達となります」

「俺も紗田粋って気軽に呼んでくれよな、ケイル♪」

「もちろんだよ。志俱刃!紗田粋!」


今ここで魔力のない少年ケイルと、妖界から来た妖魔の志俱刃と紗田粋と握手をした。その様子にアラフトもザグドナもヒハナも、安心するかのように笑ったりする。

晴れてこの3人は親友として仲間としてこれから強く絆を深まるのだった。

改めてケイルと志俱刃と紗田粋はトリオとして絆が生まれました。

でもまだまだケイルに召喚される妖魔は増えていきます。

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