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第1話 魔力ゼロな少年

本編をどうぞ。

フーデアルス国。

この国も魔法至上主義が根強くなっている。王都からかなり離れた所に、ラナトスと呼ばれる小さな村。そして草原に寂しそうに座る少年がいた。

少年の名はケイル・サグバラムト。

じつはラナトス村領主の息子。

その容姿は、綺麗な薄黒いポニーテールの髪に、はっきり言って童顔の女顔で背も低い。おかげで、色んな人から女の子だと勘違いされ続けた。だが、彼が本当に苦労しているのはそれではなく。


「は~~~」


ため息を吐きながらも立ち上がって、1本の木の前に立つと手をかざす。そこから頭に色々思い浮かべながらも口を開いた。


「風を鳴いて、全てを吹き飛べよ!」


なにかの呪文を叫んだが何も起こらない。


「やっぱり…ダメか」


落ち込んで体育座りをするケイル。

じつはケイルには生まれながら魔力が存在しない。この世界ではほとんどの人間が魔力を有し、生まれや育ちに関係なく魔力の量は人それぞれだが、高いレベルの魔力は大抵が貴族か王族が多い。

しかしケイルのような、たまに魔力を持たない人間は数える程しかいない。そんな自分にいつも嫌気を指してた。


「ちょっと、ちょっと!また落ち込んで」


すると青髪のボブカットが特徴のボーイッシュな少女が、大声を出しながらケイルに近づいて来る。


「アラフト…」


彼女はケイルの幼馴染で中級貴族のアラフト・バリハッシュ。


「全く…ケイルはすぐに落ち込むんだから。それがケイルの悪い所よ?」

「だって…」

「やれやれ、知ってたけど」


呆れるアラフトはケイルの隣に座るとなにやら彼女も少し暗い顔になった。


「それにしても…寂しくなるな~~~」

「え?寂しくなる?」

「うん…」


なにかを言いたそうになったが、まるで言いたくないみたいに口を開かないアラフト。だが、ついに決心したのか語り出した。


「じつはアタシ、“ソーサリーガ”の入試を受けるんだ!」

「“ソーサリーガ”に!?」


“ソーサリーガ”とはフーデアルス国が誇る魔導戦士養成学園の別名。

それは魔法を使って戦う魔導戦士を、さまざまな魔法の授業や訓練育成している全寮制の学校。なかにはチームに分かれて、学園側から提出された課題を外で活動したり。冒険者系ギルドのように学園の外からの村や町や、さらには貴族と王族から依頼を受けたりする事もある。ちなみに学費などは、国からの立て替えと外から来た依頼による報酬の2つ。結果的に学費はタダという形。


「リアトイ姉さんが、一緒の学校に来た方が色々と安心するって…ザグドナ兄さんもそうした方が良いって」

「たしかに、リアトリさんと一緒の方がザグドナさんも安心するかもね」

「まぁね。それに」


立ち上がったアラフトは上に向けて掌を出して声を上げた。


「ヒォン!」


すると掌から火が出てきて自由自在に動き回った。

さっきアラフトが叫んだのが、火属性の魔法呪文。今のような単語2文字から、ケイルが言った長い詠唱とさまざまな方法で魔法が発動される。


「アタシって兄さんと姉さんと同じぐらい、魔法の腕があるからね♪」

「それって嫌味か何か?」

「う~~~ん、半分?」

「じゃあ、半分は自慢って事!?」


ショックのあまりもっと落ち込んでしまったケイルだった。


「2人共…」

「ん?」

「兄さん!」


2人の後ろに青髪をしてメガネをかけた青年が立ってた。彼こそが、アラフトの兄でバリハッシュ家当主のザグドナ・バリハッシュ。ついでにザグドナの妹でアラフトの姉、リアトリはソーサリーガの学生だ。


「もうすぐ夕方だ。最近、この付近で盗賊が現れると聞く。それに森の獣も活発になって村に来てるらしい…」


ザグドナは2人に最近村の近くが、盗賊や獣で物騒になったから向かいに来てくれた。


「うん、その話なら聞いてるから」

「でも兄さんがいるから、この村は安心だよ!なんたってソーサリーガの卒業生で、元魔導6士隊の部隊長だから!」

「茶化すな」

「イタッ!…ゴメン」


笑い出すアラフトにゲンコツをするザグドナ。

魔導6士隊はフーデアルス国を守る魔導戦士の部隊で、かつてザグドナも配属していた。ちなみにソーサリーガ卒業生の殆どが魔導6士隊に就職する者が多い。しかも引退した部隊長や隊員はソーサリーガの講師に再就職したり、さらにはソーサリーガの外から来た受け取った依頼の指示などもする。さらには現役で時間が空いた時に、たまに講師として来てくれることも多い。


「じゃあ、僕もう帰るからね」

「あっ、待って。その前にこれを」


アラフトは懐から黒い石が付いた手作り感のあるブレスレットを取り出しケイルの右手首に着けた。


「これって…魔法具?」


魔法具はその名の通り魔力を与えて作られた便利アイテム。道具屋で造られているものもれば、このブレスレットのように自作のもあった。そしてアラフトが左手首の青い石以外、同じ形をしたブレスレット魔法具をケイルに見せる。


「うん、これは兄さんと一緒に作ったの。アタシのとお揃いで、もしもアタシとケイルのどちらかがピンチの時はこの石が点滅してくれるし。それに近くに来れば大きな光で知らせてくれるの!」

「暫しの別れになるからな。我が妹のアラフトがお前の為に作ったんだぞ。当然、私も手を加えたからな…」


少しシスコン気味のザグドナだが、じつはケイルに対してかなり信頼をしていた。


「ありがとう。大切にするから!」


お礼を言うケイルは先に家に帰ると、アラフトもザグドナと一緒に帰宅した。そして自分の屋敷に到着して扉を開ける。


「あら、お帰りなさい」


優しそうでふくよかなケイルと同じ黒髪の女性が出迎えてくれる。


「ただいま…ヒハナ叔母さん」


この女性はケイルの叔母のヒハナ・リンドムス。ヒレルはさっそくケイルをリビングに連れてくると、椅子に座らせてパンとシチューとサラダをテーブルに置いた。


「じゃあ、食べましょう」

「うん、いただきます」


ケイルはヒハナの作った料理を食べる。食べ終わるとヒレルがお茶を出しながら尋ねてきた。


「ところでケイル。さっきザグドナさんが教えに来てくれたけど、アラフトちゃんがソーサリーガの入学試験を受けるから村を出るって知ってた?」

「うん、本人から聞いたから」

「あらそう、本当に寂しくなるわね…」


ヒハナは寂しそうにして窓から少し離れた先にあるアラフトの屋敷を見つめる。


「でも、仕方ないよ…アラフトの父さんも母さんも…ついでに僕の……」

「全くバカ兄は!きっと今も、自分の妻と親友が死んだことに気づかずにブラブラしている筈よ!」


ケイルの父親とアラフトの父親は親友同士。

だが、ある日。ケイルの父は突然屋敷と村を飛び出し、何処かに消えて行方不明になってしまう。しかも数日後、ケイルの母が突然自室で何者かに殺され、アラフトの両親も同じように殺されていた。犯人は不明のままで幼いケイルとアラフトはとてもショックを受ける。

しかしそれによってザグドナは魔導15士隊を辞めて家を継ぎ領主代理を務める。さらに隣の村に住んでいた父の妹のヒハナもケイルの世話の為に、たまにラナトス村にやって来ていた。


「まぁ、でも夏休みとかには帰ってくるかもしれないからね」

「そうだよね…お守りも貰ったし」


アラフトお手製の魔法具ブレスレットをヒハナに見せるケイル。それから食事を終えたケイルは2階にある、自分の部屋に入った。部屋の殆どが本棚になっていて大量の本が置いてある。本当は書斎にあった本だけども、ケイルが気に入ったものを全て自分の部屋に移した。

そしてベッドに腰を掛けて、改めてブレスレットの黒い石を見つめる。


[しばらくお別れか…]


ケイルは小さい頃を思い出し始める。自分が領主の息子でありながらも、魔力がないという理由で近所の子供からイジメられてきた。でも何度もアラフトが助けてくれる。今までもアラフトが助けたり守ってくれたが、自分はなんだか劣等感というのに襲われていた。


[アラフトを守りたいけど…こんな僕じゃあ]


またケイルは涙をこぼしながらも深く落ち込んでいた。

主人公は魔力のない少年のケイルで幼馴染のアラフトに守られる毎日に嫌気になっていましたが、次回からついに彼にも知らなかった能力=魔法が発動します。

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