表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/34

第17話 禁断の理由

野外訓練場から離れた先の森の入り口で、志俱刃は妖魔の生態調査としてゼロスと模擬戦をすることになる。ちなみに離れた先でケイルと紗田粋は見学。

さっそく志俱刃は愛用の剣を構えると、ゼロスが両手に魔法陣が描かれた手甲を装備して、自身に強化魔法をかけた。


「今から俺の肉体は鋼並みの強度で、筋力もアップした。どっからでも来い」

「なら、先に行かせてもらう!」


いち早く志俱刃が動いて剣を大きく横に振るが、ゼロスは全身強化魔法で硬質化した右手で強く掴む。その時、ゼロスの手から火花と金属音が響き渡る。


「これが魔法の力か?」

「アンタも随分と素早いな」

「なるほど、これはやりがいがあるな!」


にやりと笑いながら志俱刃は少し距離を離れた後に、剣を大きく振りかざして斬りかかる。しかしゼロスは軽く志俱刃の剣を避けた。

それから硬化した拳でパンチやキックと攻撃をするが素早く避けて反撃。その結果、お互いの剣と拳から火花と金属音が鳴り響く。

そして模擬戦とは程遠いバトルを遠くから見守る2人。


「ちょっと、やり過ぎじゃないのかな?」


などと心配しながらものんびりと横になる紗田粋に尋ねるケイル。


「でも、アイツら案外盛り上がってるし。今ここで止めたら何言われるか分かんないぜ」

「はぁ…だけど、本当に良いのかな…」


のん気に紗田粋は返事を返した。

そうしている内に志俱刃とゼロスのバトルは益々ヒートアップする。


[…ん?まさか、この男…少し確かめてみるか]


すると志俱刃は何かに気づいたのか、さっきよりも素早くゼロスの周りを動き回った。


「早い!?」

[コイツ、俺の強化魔法の弱点に気づいたな?!]


肉体強化系の魔法には弱点があった。それは肉体に対する負荷がかかる事で、肉体を硬化すればスピードが少し低下する。さらに筋力を上げれば体力の消耗が激しくなる。その証拠にゼロスは体中汗をかいて少し息切れしてきた。

だから、弱点に気づいた志俱刃はもっと素早く動いてゼロスのスタミナを下げようとした。


「お前は魔法を発動している時、スピードがダウンしているみたいだからな。とりあえず、これで決めさせてもらうぞ!」


そのまま志俱刃は目にも止まらない速さで剣を大きく振り下ろした。


「なっ!?」

「ええっ!」

「おいおい」


しかしゼロスはなんと志俱刃のスピードについて行けたかのようにして、彼女の剣を再び掴んだ。


「残念だな。強化できるのは肉体だけじゃなくて、視覚も直観も可能なんだよ」


じつは強化魔法は肉体だけでなく感覚や精神の強化も可能。つまり視覚と直観をアップさせて、志俱刃の動きを見切った上にどんな攻撃をするのか予想できた。


「くっ!」

「さぁ、喰らいな!」


そしてゼロスは右手で志俱刃の腹部にボティーブローを決めた。


「うぐっ!」


効いたのか思わず腹部を抑えながらもむせてしまう。しかしむせながらも志俱刃は少し笑ってゼロスを睨んだ。


「たく、女にパンチを決め込むとは…」

「何言ってんだい?これしき平気なんだろ?」

「まぁな。だったら私も本気でやるか!」

「ああ、そう来なくっちゃな!」


模擬戦であることをすっかりの忘れ、お互い笑いながらも再び2人が剣と拳を構えた瞬間。


「おいっ!どうしたんだよ?!」

「「え?」」


突然、紗田粋が慌てるように声を上げだした。

2人が振り向いた先で見たのは、苦しそうに腹部を抑えて倒れそうになるケイルと慌てながら抱きかかえる紗田粋。2人は非常事態だと感じてバトルを中断しケイルの所に駆け寄った。


「ケイル!大丈夫か!?」

「うう…ちょっとお腹が…痛く」

「…だったら見せてみろ」


ゼロスはすぐにケイルのジャージを捲ってみると、腹部には青く痛々しい大きな痣が出来ていた。


「この辺りは、私が貴様に殴られたのと同じ」


しかもこの痣が出来てるのは、さっきのバトルでゼロスが志俱刃を殴ったところと同じ場所。しかしなぜケイルにこんな痣が出来て苦しんでいるのか妖魔2人は理解できなかった。だが、ゼロスはこの痣を見てあることに気づく。


「なるほどな…これがなぜサモンが禁断とされる3つ目の理由。妖魔の受けたダメージがサマナーにもフィードバックされるのか」

「「フィードバック?」」


つまりサマナーと妖魔は一心同体のようなもの。妖魔の受けたダメージがサマナーにもフィードバックされ返ってしまう。今、ケイルの身に起きている現象が何よりの証拠。


「じゃあ、もしも俺達のどちらかが致命傷を負ったら?」

「間違いなくサモナーのサグバラムトには受けてしまうな」


改めてゼロスはサモンが危険な禁断魔法に入ると認めた。異世界から妖魔という高い身体能力と、妖術という魔法とは異なる力を持つ生物兵器を召喚。そして妖魔のダメージがサモナーに受け取る。

かなりのリスクを持った魔法がサモンだった。


「せ…先生…」


なんとか腹部の痛みをガマンしながらもケイルは口を開く。


「サグバラムト、大丈夫か?」

「はい…僕って……案外丈夫な方だから」

「本当にすまない。まさかこんなリスクがある事を知らずに」


頭を下げてケイルに謝罪する。

今は教師だけど、前は国民を守る魔導6士隊の隊長だったので、深く反省するゼロスだった。


「まぁ、とにかくこれでサモンのリスクが分かったからな。みんなの所に戻るが、調子は?」

「え……少し楽になりましたけど…」

「じゃあ、早く戻るぞ。一応、みんな待ってるからな」


だが、かなり切り替えが早く。簡単に大丈夫そうと確認して、ケイルに訓練場に戻ろうと言ってきた。


「なんなんだ。コイツは?」

「いや……俺に聞くなよ?」


当然、妖魔2人はゼロスの性格に混乱してしまう。

そして4人が訓練場に戻ってみると各クラスの1年全員は、まだ自主練し続けている人や休んでいるのもいた。


「ケイル!終わったの?」


アラフトとなぜかメティールは戻ってきたケイル達に駆け寄った。


「うん…まぁね」

「あれ?なんかお腹押さえてるけど…もしかして腹痛?」

「いやっ、別に大丈夫だよ!」


サモンのリスクで心配させないようにと誤魔化す。そんなケイルとアラフトのやり取りに、メティールと志俱刃と紗田粋はというと。


「なんだかね~~~随分と過保護だね?」

「まぁ、幼馴染だからな?」

「というか、明らかにベタな小説やマンガって感じだな…」

「「…たしかに」」


紗田粋のたとえに2人は少し納得。

しばらくするとゼロスが訓練場の1年全員を集めた。


「さてと、勝手に自習にしてすまなかったな。だが、もうすぐ時間だし…これにて授業終了!」

「「「「「はい!!」」」」」

「じゃあ、適当に水分補給でもして着替えをしろよな」


適当に言いながらも先に校舎に向かったので生徒達も戻ろうとした。


「んで、次はなにすんだ?」


戻る途中に紗田粋がケイルに質問。


「そうだね…まだ五時間目と六時間目もあるからね」

「じゃあ、今日はとことんまでお前に付き合おうか?」

「…ありがとう」


志俱刃と紗田粋がうっすらと笑い出したので、ケイルも釣られて笑顔で返事をした。

今年最後の投稿です。来年もよろしくお願いしますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ