第12話 初めての授業
良く晴れた朝。
「う~~~ん」
目を覚ましたケイルが最初に目にしたのは見慣れない天井。
「……そっか、昨日入学したんだ!」
ベッドから降りて部屋を見回す。昨日、入学してしばらくは寮で過ごすことなったが、普段とは違う生活になるので少し抵抗や戸惑いを見せる。でも何事も慣れが必要だと誓いながら時計を見て時間を確認。
「さてと…まだ4時半か…」
少し早く起きたようだが、とりあえずカーテンと窓を開けた。丁度朝日が昇って部屋に太陽の光が入って来る。それから裏庭を見てみるとメティールが1人で剣の特訓をしていた。
[あっ、メティールさんだ!]
気付いたケイルはさっそく部屋を出て裏庭に向かった。裏庭ではメティールがレオタードに運動用シャツ姿で剣の素振りをし続けている。
「ふんっ!良し、素振り終わり」
剣を何回も振り回したらしく顔はもちろん、全身も汗まみれで置いてあるタオルで汗を拭きとる。
「お疲れ様と、おはよう…かな?」
すると裏庭に来たケイルが挨拶をしながらメティールに近づく。だけど、レオタードとシャツが汗で濡れて肌が透けていた。ケイルは少し顔を赤くして目を逸らすがメティールは気づいてなかった。
「ケイルくん、随分と起きるの早いね?」
「ええ…なんか緊張のせいだと思うけど…ところで、メティールさんもこの時間に?」
「まぁね。朝起きたらすぐトレーニングって決めてたから♪」
無邪気な笑顔で返事するメティール。
「さてと、シャワーを浴びて来よう♪」
そう言うとメティールが一足先に寮に戻って、1人残ったケイルは思いっきり深呼吸する。さらに地べたに座って朝の光をしばらく浴びながら村とは違う風を感じた。しばらく時間が経つと立ち上がり。
「僕も戻ろう。色々と準備しなくちゃ」
ケイルも部屋に戻って顔を洗って制服に着替えたりして、食堂で梟クラスのみんなと朝食を取り。それからカバンに教科書や筆記用具を詰めて梟校舎に向かう。
「それにしても…ここの授業ってどんなのかな~~~」
欠伸しながらも校舎に歩くジンバだが、ケイルは彼の服装を気になる。なぜなら
「ねぇ、ジンバ…」
「なんだ?」
「今日のTシャツも…ダサいよ?」
今、ジンバが着ているTシャツは大きなトラの顔が入って昨日の鮫と同じくらい趣味が悪いデザイン。
「なんだよ?昨日よりマシだろ!」
「マシって……」
「コイツはな、こんな趣味の悪いTシャツを集めるのが趣味なんだよ」
「おいっ!俺のTシャツのどこが趣味悪いって!?」
ラギの発言が気に入らなかったのか怒鳴りつけるジンバだけど、無視しながらも1年の教室に到着。担任のセリシアが来るまでの間に、ケイル達1年は会話や談話したりする。
「お前ら、静かに」
セリシアが教室に入ると全員はすぐに会話を辞めて静かになる。
「いきなり言っておくが、この学園は学費と家賃と寮の食費はタダだ。しかし購買部の買い物と大食堂は有料…つまり金が必要だ。分かってるな?」
「「「「「はい」」」」」
「一応、昨日のうちにお前達に大金貨2枚と大銀貨5枚を渡した。後はお前達が持っている金と合わせて考えて使え」
じつはソーサリーガでは学費と寮の家賃と食費は無料だけど、購買と大食堂の食事にはお金がかかる。
「しばらくは定期的に小遣いが支給されるが、4ヶ月には外からの依頼を受けて報酬の半分がもらえるからね」
「じゃあ、それまでは僕達にお小遣いを?」
これからの金銭についての説明を続けるとケイルがここで質問。
「そういう事になるわ。だから、無駄遣いしないように」
「「「「「はい」」」」」
「良し、じゃあ日直。ホームルームを始めて」
「分かりました」
説明が終了して初めてのホームルームが行って授業も始まる。
一時間目は魔法と魔力について。
セリシアがさっそく魔力の話をしながら黒板にも書く。
「魔力とは、マナと呼ばれる空気中の魔法元素と、私達の肉体の精神エネルギーを組み合わされたもの。それぐらい知ってる?」
「はい、魔力の量もマナを取り込む限度と精神エネルギーの質が関係しています」
すぐさまメティールが質問に答えると授業を続けた。
「しかしマナを取り込むことが出来なかったり、さらには精神エネルギーがどうにもマナと組み合わされない者もいる。それが魔力のない人間の特徴だが、このクラスで一番注目すべきなのが…」
セリシアはケイルに目を向けると他の生徒も見始める。当然、本人は分かっていながらも質問をした。
「ええっと…な、なにか言いたい事でも?」
「全員が試験で知ったかもしれないが、ケイルが魔力無しだという事を。そして彼の場合は生まれながらタイプらしい」
「生まれた時からって奴ですか?」
「そうだ。他にも特殊な病気や毒の治療での副作用や、なにかしらの大きく精神的なトラウマによるもの。さらには強力な呪術を受けた場合も魔力無しの原因になる」
じつは魔力無しには4種類も特徴があるらしく。治療による副作用型に心的外傷のトラウマ型と呪い型に、そしてケイルのような生まれついての生来型の4つ。
「とくに40年前までは副作用型とトラウマ型による魔力無しが多くいた。それはなぜだか、分かる人は手を挙げて」
副作用型とトラウマ型の魔力無しが多い理由について質問されたので、すぐにケイルが手を挙げて質問を受けた。
「良し、答えて見なさい」
「はい!たしか…40年前はフーデアルス国が他国と戦争が起きていました。その為に、戦闘で精神的ショックを受けて、または猛毒の魔法攻撃での治療の結果。2つの魔力無しが多くなった理由になります」
「正解だ」
ケイルの答えに正解したのかセリシアは少し微笑みながらサムズアップした。全員はセリシアって案外ノリのいいところがあると驚く。それからセリシアの授業が再開。
「さて、話が変わるが…大昔の前から人々は魔力を知らなかった。リンのいた国じゃあ、魔法と魔力を知ったのはつい最近の筈?」
「はい…そのとおりです」
「だけど、魔力を発見し魔法という技術を編み出した者がいた。その者は魔法を使う女だから魔女と呼ばれた」
セリシアの説明では数百年前も遠い昔。世界はまだ魔力という概念が発見されずにいた。しかし森に住む女性が体に魔力という力があると発見し、魔力を利用して万物を操る技術。つまり魔法を作り出す。後に女性は魔力と魔法の始祖で生みの親、最初の魔女の誕生。
その最初の魔女が他の女性に魔法を教え仲間の魔女を増やし、ついに村を作って細々と暮らした。だが、一部の魔女が村の外で男性に魔力と魔法を伝え始め。時が流れた結果、フーデアルス国も含む世界中で魔法文明が発展した。ただしリンの住む東方などの一部の国は遅れている様子。
「という訳で、現在私達が使っている魔法は魔女が発明の産物という訳。他に質問は」
「はい、たしか魔女は箒と絨毯に乗って空を飛ぶと言われてますが…実際はどうなのですか?」
「残念ながら何も言えない。だが、今はより高度な飛行系魔法の研究が進んでいるのは確かだ」
魔女が空を飛んで移動するのに箒や絨毯を使うとされている。ただし、それは魔女の秘術の1つとされ飛行系の魔法自体も難しく。少しだけ浮いたり吹っ飛んだりと成功したものは未だに存在しないらしい。すると丁度チャイムが鳴り響く。
「さて、一時間目は終了。続けて二時間目も私だから、日直!」
「はい!起立、礼」
「「「「「ありがとうございました」」」」」」
これにて一時間目の授業は無事終了。
今回はケイル達のソーサリーガの授業で、その授業の光景を書くのは大変ですがどうでしたか。
この世界観の通貨は、銅貨と銀貨と金貨になっています。さらに小銅貨は5円で中銅貨は10円で大銅貨は50円。銀貨の場合は小銀貨が100円で中銀貨は500円で大銀貨は千円。そして金貨は小金貨が5000円で中金貨が1万円で大金貨は5万円分になります。




