不思議な人だった
運命の女神のティニーさんは驚くほどの美人だった。
でも今、目の前にいる人はそれを遥かに凌ぐほどの美人だ。
何というか・・・うん、これぞ女神!って感じ。
白に近い銀色の髪、肌も色白、ついでに着ている服も白。眼の色だけが金色。
普通に考えればちょっと怖いのかもしれない。
でも、目の前にいる女神はただただ神々しい。でも威圧感はない。
程々に主張している胸もまたいい。男がみんな大きいのが好きってワケじゃないのだよ。
個人的にはちっぱいが好きだ。ただし、ロリコンではない。
大事な事なのでもう一度言うがロリコンではない。年上が好きだしね!
「あらあら、それはまた・・・」
「へ?」
「いえ、お気になさらずに。お飲み物は何がお好みですか?」
「あ、えっと、コーヒーってあります?」
「コーヒー・・・ですか。 あぁ、お誘いしておきながら申し訳ありません。貴方が住んでいた世界と違ってここにはコーヒーがないようです」
コーヒーと言われた時、完全に「?」マークが頭の上に浮かんでたね。
天界にはコーヒーがないのかな。それともこの女神様が知らないだけか?
「あ、なければ何でもいいですよ。とにかく飲みたい!今すぐ飲みたい!ってワケじゃないし」
「あら、そうですか?下界との関わりが強い子にでもお願いしようと思ったのですが・・・でしたら、私が一番好きなものをお出ししますね。ちょうど今年のものが届いたとろこですので」
おいおい女神様、下界に関わりが強い子?下界ってつまり俺が生きてた世界だよね?
飲みたいって言われただけで他の子に取りに行かせようとしたの?
そんな理由でパシリにされる子が不憫だよ!
そんな理由でパシリを使おうとする貴女が怖いよ!
「これは天界でも一部の地域でしか採れない珍しいお茶なんです。貴方の世界でいうお茶・・・日本茶・紅茶などと同じようなものとお考えください」
出されたお茶は淡い黄色のような見た目だ。何ていうか、お茶なのに神々しい。
とりあえず飲んでみる。
旨い。日本茶のようでもあり紅茶のようでもあり・・・うん、何に近いのかは分からんけど旨い。
「これは美味しいですね。もっと上手く言えればいいんですが・・・美味しいとしか言えません。表現が乏しくてすみません」
「いえいえ、美味しいと言ってくださるだけで十分です。お口に合ったようで嬉しいです」
ニコニコと微笑む女神様。どんな話にもニコニコ。
人があまり来なくて寂しいなんて言ってた事もあってか、さっきからニコニコ。
ちょっと突飛な発想も出たけど、基本的に性格は悪くなさそうだ。
一緒にいて疲れるどころか、何だか癒されてる感じなんですけど。なのにボッチで寂しがり。
俺が今置かれてる状況がこんなじゃなければ是非お友達になりたい。
仲良くなって、上手いことやって・・・出来たら彼女になってもらいたいね。
まぁ無理だよなぁ。俺ってば現在逃走中の身だし、そもそもこの人は女神様だし。
もっとゆっくりしたいけど、そろそろ場所変えないと見つかりそう。
名残惜しいが血の涙を心で流しながらここを立ち去る事にしよう。
「あの~・・・凄く楽しいんですが、そろそろお暇しようかと。美味しいお茶をありがとうございました。あ、順番が逆になってしまいましたが俺は天地わ・・・」
「天地渡さんですよね」
「へっ!?知ってたんですか?」
「えぇ、ここは静かですがティニー達は大騒ぎしてますから。先ほど天界放送でも貴方のことを探すように言ってましたよ」
「て、天界放送ですか・・・やっぱり大騒ぎになってますよねぇ・・・」
放送なんて聞こえなかったけど、たぶん女神様達にだけ聞こえるテレパシーみたいなもんか。
大騒ぎになるのは分かってたけど、この分だと何処に行っても捕まりそうだなぁ。
参った。俺の抵抗もここまでか。
とんでもない美人な女神様と、とんでもなく美味しいお茶を飲んで話をして・・・
上手いこと逃げて天界で生活ってのもしてみたかったけど、それは無理そうだしなぁ。
おし、戻るか。適当に歩いていれば誰かが見つけてくれるだろうし。
目の前にいる超絶美人な女神様に迷惑は掛けたくないしね。あ、名前だけは聞いて帰ろうっと。
「私は他の女神達からはフェアーと呼ばれています」
「!? あ、フェアーさんですね。俺の名前は・・・もう知ってますもんね」
「はい、天地渡さん」
「ワタルでいいですよ。友人や家族からはそう呼ばれてましたし」
「はい、分かりました。ワタルさん」
くっそ!そんなにニコニコしながら名前呼ばれたら惚れてまうやろっ!
もう一回、もう一回名前を呼んでくれ~!!
「はい、ワタルさん」
「!?!?」
何となく感じてた。
絶対人の心が読めるだろこの人。
「はい。読めます。それと私の事もちゃんと名前で呼んでくださいね。この人とか、ボッチとか、寂しがり屋とかじゃなくて、フェアーでお願いしますね」
「わ、分かりましたフェアーさん。それと出来れば心は読まないでください。泣きたくなります」
天地渡享年27歳。天界で逃走中。
もの凄い美人な女神様に心を読まれて泣きそうです。